日本と諸外国におけるバイオ燃料の現状


 「バイオマス・ニッポン総合戦略」が2007年2月に報告した「国産バイオ燃料の大幅な生産拡大」では「我が国及び諸外国におけるバイオ燃料の現状」を下記のようにまとめている。(原文は文末に掲載)



バイオエタノール:ガソリン代替


 下記2種類が存在


 1.ガソリンとバイオエタノールを直接混合する方式

 2.バイオエタノールから添加剤を製造しこれをガソリンに添加する方式
   添加剤:エチル・ターシャリー・ブチル・エーテルETBE



バイオディーゼル燃料:軽油代替


 原料:菜種油、廃食用油等の油脂

 加工:メチルエステル化等の化学処理により
    脂肪酸メチルエステルなどの軽油に近い物性に変換



□世界情勢:生産量:2005年末時点


 バイオエタノール  :約3,650万キロリットル

 バイオディーゼル燃料:約400万キロリットル


 バイオエタノールについては、アメリカ、ブラジルの2カ国の生産量が突出。EU、中国、インド等で生産量は拡大している。生産されたバイオエタノールはガソリンとの直接混合で利用。アメリカの一部の州やブラジルでは、混合割合の義務化。


 ETBEは、スペイン、フランス等、EUを中心に利用されている。


 バイオ燃料の利用がみられる諸外国では、その利用を促進するために、政府による導入目標の提示、税制、補助等の支援策がとられている。



□世界情勢:今後


 米国では「2005年エネルギー政策法」が成立、2012年には約2,800万キロリットル)の自動車燃料としての供給が定められている。さらに、2007年1月のブッシュ大統領の一般教書では、この義務量をさらに拡大し、2017年までに(約1.3億キロリットル)とすることに言及している。他方、最近、バイオ燃料の急激な需要拡大に伴い、トウモロコシ等のバイオ燃料の原料となる農作物の価格が高騰するといった問題等を懸念する声もある。




■まとめ


 産油国アメリカ、EUなどは、原油価格の高騰に対応するためエネルギー源の分散化を図っている。一方で日本は原子力に注力するあまり、バイオマスなどへの対応が遅れている。「バイオマス・ニッポン総合戦略」でどれだけ巻き返せるかが注目される。






農林水産省国産バイオ燃料の大幅な生産拡大

3 我が国及び諸外国におけるバイオ燃料の現状

(1)バイオ燃料の概要

バイオ燃料は、ガソリン代替で利用されるバイオエタノール軽油代替で利用されるバイオディーゼル燃料等がある。

(1) バイオエタノールについて

バイオエタノールは、さとうきび等の糖質原料、とうもろこし等のでん粉質原料、稲わらや木材等のセルロース系原料から製造することが可能であり、糖化、発酵等の過程を経て製造される。輸送用燃料の利用方法としては、ガソリンとバイオエタノールを直接混合する方式と、バイオエタノールから添加剤(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテルETBE))を製造しこれをガソリンに添加する方式の2通りが存在する。

エタノールは、水分との親和性が高いという性質を有するため、エタノール混合ガソリンに一定比率以上の水分が混入すると相分離が発生し、燃料品質に影響を与える。経済産業省では、E3について、製造・輸送から給油所における貯蔵・給油に至るまでの品質上及び安全上の課題の検証を目的とした実証研究をすでに実施しており、水分管理対策を行った上であれば、実使用上問題となるE3の品質変化及び設備部材への影響変化は認められなかったことについて取りまとめている。また、総務省消防庁では、これまでの検討を踏まえ、漏えい対策等の安全対策についてガイドラインを取りまとめている。

ETBEについては、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年法律第117号。以下「化審法」という。)において、第二種監視化学物質(生物の体内には蓄積し難いが、環境中で容易に分解せず、継続的に摂取される場合に人の健康を損なうおそれの疑いがある、との性質を有する化学物質)との判定がなされている。経済産業省では2006年度より、長期毒性試験や環境に暴露した場合の影響調査等を実施し、リスク
評価を行っている。

(2) バイオディーゼル燃料について

バイオディーゼル燃料については、菜種油、廃食用油等の油脂を原料に、メチルエステル化等の化学処理により、主に脂肪酸メチルエステルなどの軽油に近い物性に変換したものが利用されている。脂肪酸メチルエステルについては、軽油に比べて、ゴム・樹脂を膨張・劣化させる、熱の影響により酸やスラッジ(固まり)を発生し品質が劣化しやすい、原料によっては寒冷地で固まってしまうなどの特性があることに留意する必要がある。

(2)我が国におけるバイオ燃料の現状

バイオエタノールについては、現在、全国6ヶ所で、原料作物の生産、バイオエタノールの製造、E3ガソリンの走行等の実証試験を行っているところであるが、生産量は、2005年度末時点で合計30キロリットル/年程度にすぎない。このうち、岡山県真庭市沖縄県伊江村沖縄県宮古島市の3ヶ所において、生産したバイオエタノールを自動車の燃料として利用する一貫した実証試験を行っている。

バイオディーゼル燃料については、京都市いわき市富山市等の自治体ぐるみの取組のほか、地域のNPO等による小規模な取組が行われている。生産量は、合計4,000〜5,000キロリットル/年と推計される。

(3)諸外国におけるバイオ燃料の現状

世界のバイオ燃料の生産量は、2005年末時点で、バイオエタノールで約3,650万キロリットル、バイオディーゼル燃料で約400万キロリットルと推計される。

バイオエタノールについては、アメリカ、ブラジルの2カ国の生産量が突出しており、世界の生産量の約7割を占めている。このほか、EU、中国、インド等でも生産されており、生産量は年々拡大している。生産されたバイオエタノールの大半は、ガソリンとの直接混合で利用されており、アメリカの一部の州やブラジルでは、混合割合の義務化もなされている。一方、ETBEは、スペイン、フランス等、EUを中心に利用されている。

バイオ燃料の利用がみられる諸外国では、その利用を促進するために、政府による導入目標の提示、税制、補助等の支援策がとられている。

EUでは、2003年に「輸送用のバイオマス由来燃料、再生可能燃料の利用促進に係る指令」が発効し、加盟各国にバイオマス由来燃料、再生可能燃料の導入目標の設定が義務づけられているほか、エネルギー作物栽培に対する補助や税制面での優遇が行われている。米国では「2005年エネルギー政策法」が成立し、2012年には75億ガロン(約2,800万キロリットル)の自動車燃料としての供給が定められている。2007年1 月のブッシュ大統領の一般教書では、この義務量をさらに拡大し、2017年までに350億ガロン(約1.3億キロリットル)とすることに言及している。

また、バイオエタノール混合ガソリンの物品税の控除や小規模事業者に対する支援策も講じられている。

他方、最近、バイオ燃料の急激な需要拡大に伴い、トウモロコシ等のバイオ燃料の原料となる農作物の価格が高騰するといった問題等を懸念する声もある。