ネットフリックス版実写『シティーハンター』佐藤祐市監督 鈴木亮平主演 このホワイト化していくポリコレ社会で、もっこりをどう描くのか?

評価:★★★★星4.0
(僕的主観:★★★★☆星4.2)


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🔳ネットフリックス・鈴木亮平版のシティーハンターの魅力とは?〜ホワイトなポリコレ時代に抗して新宿の猥雑さをもっこりを描くことによって包摂が描かれていること

ネットフリックスの実写版『シティーハンター』を観ました。冴羽獠役の鈴木亮平さんの演技が素晴らしく、なんというか新宿歌舞伎町の持つ猥雑さに限りない愛を感じる、良い作品。僕は、ドンピシャの世代なので、出来れば、最後のGet Wildは、オリジナルのTMネットワークの音源でやってほしかった。みたいな小さなもっとはあるんですが、やっぱりこのホワイト化していくポリコレ社会で、もっこりをどう描くのかって気になってたけど、下ネタ全開でしかもバランスが悪くないのは、ああ、これは、確かにシティーハンターだって思いました。凄い再現度ですね。さすが、世界一のマニアと呼ばれる、鈴木亮平さんですね。

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最初にメモで残っているのが上の文章なんですが、この作品を最初に見る時に気にしなければならない問いかけ、視点は、これだと思うんですよね。


このホワイト化していくポリコレ社会で、もっこりをどう描くのか?


これに尽きると思うんですよね。そして、この問いにきちっと答えきっているから、この作品は、非常に受け入れられて、世界中で人気を博しているんだと思います。まあ僕よりも、倉本圭造さんが、下記の記事でこのことは見事に解説しているんですが、この作品は、冴羽僚の本質である下ネタを十全に描くことによって、この新宿のわい雑さの中で出てくる、訳のわからないユーチューバーのコスプレの女の子とか、出てくる人々が真っ当な人がほとんどいない(笑)。でも、そもそも冴羽僚の生き方そのものが低俗(笑)なので、どんなにマジョリティからかなりズレているyねという人を出しても、その人たちを最底辺に見下さない、包摂する雰囲気が作品全体に漂うことになるんですよね。これ脚本が、ちゃんとXYZで依頼してくるコスプレのティックトッカーの女の子が依頼主の護衛対象になっているところは、脚本構造が練りに練られているなって感心しました。特に、漫画版シティーハンターは、このエンジェルダスト編と、全編を通して女性のボディガード屋さんのエピソードが、どっちが主軸なの?と感じる部分があって、ボディガードに話だけによってしまうと、日常のの涙頂戴モノになってしまうので、映画をするならば、エンジェルダスト編の圧縮をしたいというのは、よくわかるんですよね。しかし、シティハンターの魅力って、このボディガードの部分でもあるって、この「女へのセクハラしまくりのボディガード」みたいなあり方が、少年兵だった冴羽獠がやっと見出した新宿という場所での、ギリギリ人として生きていける日常だったわけで、「これ」を描かないと、シティーハンターは、深みが描けなくなるからです。

Netflixシティハンターは、冴羽獠が率先して下ネタを連発する「やばいやつ」をやってるんで、そこに出てくる色んな、「四角四面の価値観からすると変な人たち」の人生も一緒に肯定されている祝福感があるのかな、と思いました。

猫耳つけてコスプレやって、TikTokのフォロワー集めて、スポンサーつけて・・・って頑張ってる女の子の事も、その「ファン」としてイベントに集まるオタクさんたちも、まあ実際の社会ではなんかあまり「大手を振って褒められない」価値観の人も結構いる情勢にはなりつつあるわけですが、それらのすべての生き方がとりあえずちゃんと「肯定」されている優しさがあるっていうか。

そのへんが、冴羽獠と新宿という街の度量の広さであって、その本質がちゃんと実写映像として昇華している感じなのが、鈴木亮平さんとスタッフの「シティハンター愛」のなせる技だったと言うことなのかなと思いました。

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『バットゥータ先生のグルメアンナイト』 亀  ギリシア系の奴隷少女リタの世界から見る「世界」のグルメツアーの旅(笑)

バットゥータ先生のグルメアンナイト 1 (ボニータ・コミックス)

評価:完結していないので未評価
(僕的主観:★★★★★星5つ)  


「歯が丈夫」という理由で地理学者バットゥータ先生に買われた奴隷リタ。


って、これがキャッチコピー(苦笑)。表紙のデザインも、地球の歩き方風で、またよし。


めちゃくちゃ好きでハマっています。もちろん元ネタは、14世紀に30年以上かけて三大陸の周遊記を描いたイブン・バットゥータの『旅行記』から。


ギリシャ系の奴隷であるリタという少女の目から見える世界のセンスオブワンダー


・サウィーク(焦がし大麦)などご当地グルメを楽しむ日常グルメマンガの視点


この辺りが、軽くてとても読みやすい。1巻読んでいると、当時のアラブ世界の政治が驚くほど機能している様が見てとれる。こういうのって、奴隷の無力な女の子の利他の視点からだから、スッと入ってきやすくて、原本読んだときには読み解くのが苦労したやつも、「あっ、そういう空気感なんだ」と思えるので、すげぇ理解しやすい。


それにしても、リタの視点が、素晴らしくいい。ぐっとくる。


旅をしているし、巡礼などもあるので、マムルーク(白人奴隷)や様々な立場の人間と出会うのだが、、、、なんといえばいいのか、どの時代、どの世界に行っても、身分の上下、強いものと弱いもの、自分の意志で自由を求めるもの、意思を放棄するもの、、、いろいろいるんですよね。それを見ながら、リタは、何を思い、何を望むのかって、すごい胸にグッとくる。


全編に、強いものが弱いものを虐げる格差の構造の世界の中で、でも、それでも人間らしく生きようとする人々の思いが垣間見えるところが、美しい。騙されて安いお金で米を売り払ったことを反省していると、「間違えるってことこそ、、、自由なんじゃないかな」というシーンや、それで自分で判断するのをやめようとしたけど、商人が「難しいことわかんないけどよ、間違ったら誰かが助けてくれるんじゃねぇかな」とかいうシーンとか、人間の共同体は、長く続いているものは、ああそういうもんだよなぁってグッとくる。


このとき偶然一緒にいた孤児の女の子は、孤児なのに医者になりたいと思っていたんですが、、、、諦めきれないので、メッカの近くにいる医者のじじいに自分を奴隷として打って勉強するって決めたって、いうんですよね。いや、なんか、、、、あーどんな世界の過酷な構図でも、生き抜こうとする意思を持つ人はいて、世界はそうして回っているんだなぁって、グッとくる。


いや、このマンガ、いいですわ。


リタって、ご飯大好きな、天然少女なんですが、、、結構きついこと迫られてるんですよね。一緒に旅している王族のアラエディンに、紙で日記を書いていたら、そんな暇あったら愛嬌振り撒いて主人のバットゥータに抱かれた方がいいんじゃない?奴隷は人間じゃないんだから、そんなことしても無駄だよっていじめられるんですよね。文句を言ったら「そんなんじゃ女としての魅力ゼロだよ」とか切り捨てられる。


なんというか、バットゥータ先生が変な人なんで、話がややこしくなって、悪い方向に行かない(笑)んですが、リタの立場って、生きていくのにすごい覚悟がいるんですよね。その覚悟のなさをガンガン攻めったてられてる。でも、確かに生きるって、そういうこと。理想じゃ腹は膨れない。


みたいなことを悩みながら、やっていることは、確かにグルメツアーの旅(笑)。


素晴らしい。



Souffleで連載しているのかな、、、。僕は単行本派なので、あまりウェブサイトや雑誌でどこで何が連載しているかがいつもいまいち分かっていません。トマトスープの『天幕のジャードゥーガル』も連載しているし、秋田書店エレガンスイブ編集部が運営しているようですが、趣味が良すぎる。こういう歴史系の、それもあまりに、、、そこはマニアックすぎない!という分野を、しかしながらちゃんとエンタメにして物語作れるこれらの作品は、いつも最高です。

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こういう歴史もののマニアックなのを、エンターテイメントとして仕上げて、それなりに需要があるのが、日本のマーケットのマニアックさでいいなーと思う。

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souffle.life


ちなみにどうでもいいのですが、『歴史雑記ヒストリカ』をよく聞いていて、この中のとうもろこしとかビールとか紅茶とか、食べ物の歴史を何回も何回も聞いていると歴史の見方が、ガラって変わってくるんです。紅茶の歴史が典型的ですが、凄まじく深く世界がつながるグローバルヒストリーだからなんですよね。モノとお金のつながりが、アップデートされるので、それまでの世界の歴史がガラっと見え方が深まる。これって高校とかの地理の授業でやる内容なんですね。うちの子供たちのテストの暗記を手伝って、地理の宿題とかレポート見たら、こういう設問ばかりで感動しました。いまの子供達って、すごい授業受けているのね。もしくは、地理総合って、受験で無視してやらなかっただけで、こういう深い教養が30年前とかでもあったのかもしれないと思い、勉強足りなかったなー自分としみじみ思います。


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とにかくおすすめです。


バットゥータ先生のグルメアンナイト 2 (ボニータ・コミックス)

『その着せ替え人形は恋をする』13巻 天使ハ二エル編が素晴らしすぎて、声もでねぇ。

その着せ替え人形は恋をする 13巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)

新刊が出た。配信されて、その日に読む。素晴らしすぎて、声も出ねぇ。何回も何回も読み返す。『その着せ替え人形は恋をする』、本当に神ががってている面白さ。これだけ面白いし、アニメも人気だったと思うのですが、ペトロニウス的な批評の視点でも、最前線の中の最前線で、今まさに時代に必要とされていることの答えてるぅぅぅぅぅぅ!!!とか思っているんですが、そんなことでどうでもよくて、面白い。そんな作品。もう、★5つのマスターピースなのは、確定ですね。終わりまで待つまでもない。


このめんどくさそうなおっさん、、、、かわいいいぜ(笑)。

ラストに挿入されている、ときおと溝上のイチャイチャシーンが、もうたまらんぜ。この作者さんは、もちろん女性がすごい好きで可愛く描きたいってのが伝わってくるんだけど、それがあまりに凄いので、なかなかメインにこないけれども男の子とか、おじさん!の描きがめちゃくちゃ良いんですよねー。この性格悪い、ひねくれたクリエイターのおじさんの愛おしいこと、愛おしこと、、、たまらない。なんで愛おしいのかといえば、ときおと溝上の友愛の深さを感じるから「だけ」じゃないと思うんですよ。


ときおの作品がアニメ化されて、一般の視聴者にとってはかなり良い出来のものだと認知されている(そういうふうにアキラさんはコメントしてますよね)のに、このクソ親父が、性格ひねているから、うざいからダメだって世の中は思っている。でも、違いますよね。「彼が描こうとしているもの」に対して、全然理解が及んでいないことが問題で・・・それを親友の溝上は、よくよくわかっているんですよね。このシーンが尊くて、ぐっときた。何を言っているかといえば、この作品の本質に関わる、


モノを作り出す、クリエイター側が心の中で思っていること、世に問いたいことの思い、その伝わることの難しさ


このテーマに関わることだからんです。まりんちゃんも、五条くんも、明らかに「好き」という趣味を通って、クリエイター側へと踏み込みつつありますよね。これは、クリエイターの業を描く作品の系列・類型に数えられるべきで、だからこそ、「その想いが届く」ことの難しさが、何度も語られているんです。


ただ「好き」が度を超えてくると、こういうふうに表現者の方へ、足を踏み出していく。ああ、まさにまさに、時代の最先端の作品だ!!!!素晴らしすぎるぜ!。しかも、面白くて、ドキドキして、かっこいいんだもん。最高。だからこそ、「好き」だけではどうにもならない壁があり、しかし、その両者の視点を、バランスを持って愛を持って描かれているのが、たまらなく同時代的。これこそ、多様性ってやつだぜって思う。ときおって、消費者やビジネスサイドからすれば、本当にめんどくさい意味不明のこだわりの迷惑な捻くれ者。でも、クリエイターサイドからは、「その想いがなかなか理解してもれない孤高の苦しみ」を持って、それでも表現している人で、同じクリエイターの溝上は、それがすごくよくわかっている。クソみたいな売れれば中身なんかどうでもいいビジネス関係者や、理解も全くできていないパンピーファンが、イライライしてたまらんのでしょう。・・・そして、この「こだわりの半端ない高さ」に挑んでくる、五条くんとまりんちゃんがいるわけですよ。だからこそ、彼の挑戦して、それを超えてきた若きクリエイターに対して「見事だ」になるんですよ。くーーーーー熱い。熱すぎる。


ましてや表現も、素晴らしい。今の時代で、SNSTwitterとかで)話題になる、世に出るということの描きがまた素晴らしい。


Twitterでまりんちゃんの写真が拡散していくシーンですが、このシーンは、SNSを通して爆発して拡散していく様が、めちゃくちゃリアルに情感豊かに伝わってくる。これを、マンガで描けるなんて!!凄すぎるよ。これを描いた作品って、なかなか見たことなくて、媒体がSNSなので、そうでない媒体で描くのが難しいからんんだと思います。

俺にはこの暗がりが心地よかった ─絶望から始まる異世界生活、神の気まぐれで強制配信中─ (GAノベル)

これを描けた最高の作品のひとつは、僕は、星崎崑さんの『俺にはこの暗がりが心地よかった』だと思っていて、これが本当に素晴らしいです。おすすめです。


話がそれましたが、いやはや、本当に素晴らしい名作です。2020年代を代表する作品になるのは間違いないですね。



しかも、これ恋人編まで行きますね、、、、ここまで描くと。

桃色メロイック』読んでて、ああ、これ、なんというか「設定がもったいないなー」と凄い思ってたんですよね。これ、お兄ちゃんが、実の妹まじで好きっていうヤンキーマンガじゃないですか。そのまじぶりが、シリアスすぎてギャグになるという構造なんですけど、これって、ヤンキーだから、本気度合いが凄いんだよね(笑)。


でも、妹ちゃんの魅力って、「そういうこと」が全然わかっていない天然のところにあるから、関係性が前に進みようがない。案の定、何も進展しないで、10巻?くらい長く続いているのに終わってしまった。めちゃくちゃ絵柄も関係性も好きだったので、これ「前に進みようがない」というのが、ずっと残念で、、、。次の作品は、ちゃんと「恋愛が前に進む」やつにしてほしいなーと凄い思っていたんですよ。

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僕は、『桃色メロイック』の頃から好きなんですが、これって兄妹もの設定したので、恋愛やセクシャルなものに踏み込めなくなってしまって、構造が悪いんだだけれども、、、にも関わらず10巻も続いていくんですよね。どんだけリドビー(欲望)凄いねんって、みながら笑っていました。なので、「次」は、真っ当な、前に進む関係で行きたいよねと思っていたので、、、作者、踏み込みますね。素晴らしすぎる。はうー。楽しすぎる。リアルタイムで、ドキドキ終える凄い作品です。次が楽しみすぎる。『桃色メロイック』もめちゃいいですよ。これを読むと、この次のこの作品が、いかにものすごい進化を遂げているかが、わかります。本質は、全く同じだけど(笑)。福田さん、凄いクリエイターです。

桃色メロイック (5) (ヤングキングコミックス)