『ビールを飲んで痛風を治す!』


 痛風の発作というのはとてつもなく痛いらしい。幸いなことに今のところ痛風ではないし、尿酸値も正常だ。しかし身近に痛風持ちが何人かいて話はよく聞いてきた。痛風に関してはいわゆる耳年増なのだ。「風が吹いただけで痛いから痛風っていうんだぞ」焼酎のお湯割りを飲みながら経験者はしみじみ語ってくれる。「いやぁ、おっかないですねぇ」こちらの手にはビールのジョッキ。「ビールは痛風(患者)の敵」というのは常識だ。

 痛風は体内に尿酸が過剰に蓄積されて起こる病気だが、尿酸の原料となるのがプリン体という物質だ。細胞の中にあるDNAやRNAといった核酸を構成する成分の一つで、体にとって必要な物質なのだが、分解されて尿酸になり、痛風の原因となる。ちなみに「プリン」はpure(基)urine(尿)が合わさった言葉で「尿の中の基本物質」という意味でpuddingとは関係ない。プリン体は食物にも含まれるのだが、数あるアルコール飲料の中で、プリン体を一番多く含んでいるのがビール。だから「ビールは痛風の敵」となるわけだ。

 さてこの本、常識とは真っ向から反対の奇抜なタイトルに惹かれて思わず手に取った。本当であれガセであれこれは読んでおかねばなるまいと思ったのだ。著者の田代眞一は1947年生まれの医学博士。昭和薬科大教授でありWHO糖尿病協力センターの顧問でもある。著書も多く、中国から招かれ漢方について講演をするほどの先生だ。そんな田代先生が痛風の発作に襲われたのは20年以上昔、出張先の岐阜県下呂温泉でのこと。靴がはけないので裸足で高山線、新幹線と乗り継ぎ帰京したという。著者はその後毎日3Lのビールを飲みながら痛風と付き合ってきたそうだ。本書では痛風および高尿酸血症について医学的見地から詳しく書かれているが、20年以上にわたる壮大な人体実験(大好きなビールを毎日飲み続ける)の結果でもある。タラコはプリン体を多く含む食品なので避けるべきだが、イクラはその1/30程度、鶏卵(無精卵)にいたってはプリン体はゼロだという。これは知らなかった。周りの痛風持ちにぜひ教えてあげよう。

ビールを飲んで痛風を治す! (角川Oneテーマ21)
作者: 田代眞一
出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
発売日: 2008/05/10
メディア: 新書