『酒とつまみの科学』


 酒とつまみについて情報タップリの本。作者の成瀬宇平は医学博士で、食に関する本をたくさん書いている。きっと酒好きな先生のだろうと推察する。登場するお酒は日本酒、焼酎、ビール、ウイスキー、ワインを中心に、ブランデー、ウォッカ、老酒やテキーラにも触れている。一方のつまみについても、肉、魚介、野菜、乳製品やお菓子、鍋料理などがたくさんの写真とともに紹介されており、一見すると「おつまみレシピ集」と間違えてしまいそうだ。しかしこの本の特徴はあくまでも「科学」であるところ。たとえば焼酎について。「通常、焼酎10g中のエチルアルコールは35度で29g、25度で20.4g、20度で16.3gが含まれる。アルコールのほかの揮発性成分としては、プロピルアルコールやイソブチルアルコール、イソアミルアルコール、フェネチルアルコールなどが含まれている・・・・」こんな具合だ。

 それほど分厚い本ではないのだが、情報量は多い。中でもお酒の種類別の相性の良いつまみが紹介されているところはが面白くありがたい。日本酒のつまみにはまず魚。それがなぜなのか、科学的に説明してある。同様に、焼酎、ワイン、ビール、ウイスキーとブランデー、リキュールとスピリッツに合うつまみがそれぞれ紹介される。それに続く部分では、逆につまみの側からのアプローチがある。つまみとしての食肉類、魚介類、野菜類といった具合だ。たとえばソーセージといえばビール、と思うのが普通だが、ソーセージの香りを楽しみたいのなら焼酎やアクアビットウォッカなど香りの淡いお酒がオススメなのだそうだ。

 お酒を飲ませる店をやってる人は一読の価値有りだ。新メニューを考える際のヒントが科学的裏づけとともに書かれている。「コレが意外と日本酒に合うんですよ、この中に含まれてる・・・という成分が・・・・・」軽いウンチクでお客さんもきっと喜ぶだろう。また、それ以外の人も「黒糖焼酎もらったけど、ツマミは何があうのかな?」なんて時に辞書的に引くことも可能。「そうか、今度あの店にいったら芋焼酎で試してみよう!」こんな発見が数知れず。文章が少々くどいのと、校正が不十分と思えるのがたまにキズだが、まぁご愛嬌。

酒とつまみの科学 天ぷら・寿司には白ワイン?チーズやキャビアに日本酒が合う? (サイエンス・アイ新書)
作者: 成瀬宇平
メーカー/出版社: ソフトバンククリエイティブ
発売日: 2009/12/17
ジャンル: 和書