ながおかドキドキ通信

[
    小説「光る砂漠」−夭折の詩人矢澤宰の生涯ー
三條結核病院の廊下
 車椅子で小児病棟の廊下を通って自分の病室に向かっている宰。そこに反対側から吉住先生が急ぎ足で宰に近づいてくる。「宰君、体調がいいからといってあまり無理しちゃだめだぞ」という吉住先生。「無理はしてません。もうオシッコをする時もいたみはないがあですから」と元気よく答える宰。「そうかいそれはいいね。ところで宰君、君にとってはいい知らせだと思って病室に行ったんだがちょうど君がいなくて・・・」という吉住先生。「そうですか。それはどうもすみませんでした。いい知らせてなんですか」と宰。「驚くなよ宰君、養護学校の遠間先生とも相談したんだが二学期から併設の養護学校にか通ってみてはどうかと思ってね」と吉住先生。「ええ!学校ですか。本当がです・・・」とうれしさと驚きで大きな声の宰。「ああ本当だよ。だけど毎日というわけには行かないよ」と吉住先生。「学校へ行けるんだ・・・。毎日じゃなくてもオレ学校へ行ければ・・・」と感激にひたる宰だった。「うれしいからといってあまりハシャいじゃだめだよ」という吉住先生。「わかってます」と車椅子に手をやって急いで病室にもどろうとする宰だった。「おい、おいうれしいからといってそんなに急ぎなさんな」とら微笑みながら宰を諭す吉住先生。うれしさが車椅子に乗った後姿全体に伝わる宰。その姿を温かい眼差しで見守る吉住先生だった。
http://www.h7.dion.ne.jp/~kousya/
http://www.ac-koshiji.com/