days of cinema, music and food

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Taking of Pelham 123


サブウェイ123 激突』を観に行って来ました。
公開2日目の土曜10時5分からの回は、朝いちということもあってなのか4割程度の入り。
まぁでも、大ヒットしそうも無い映画だから、こんなものなのかな。


この映画、邦題が『サブウェイ・パニック』→『サブウェイ123』→『サブウェイ123 激突』とコロコロ変わった映画でもあります。
『ペラム発1時23分乗っ取り』を意味する原題そのままでは、中々邦題が難しかったのでしょう。
最初の邦題で「おっ」と思ったのですけれどもね。
「おっ」と思った理由は、この映画の元となった1970年代の名作犯罪スリラー『サブウェイ・パニック』と同じ邦題だから。
オリジナル版に敬意を表しているのかなぁ、と思ったのです。
残念ながらそちらは未見。
子供の時から観たくて観ていない映画の内の1本ですが、双葉十三郎『ぼくの採点表 1970年代』でも高評価となっています。
主演はウォルター・マッソーだし、悪役がロバート・ショウだ。
ユーモアも塗した小洒落た映画とのことなので、これはいつか観たいもの。


そちらに評価に比べると、本リメイク版は余り評判が宜しくありません。
監督トニー・スコット、脚本ブライアン・ヘルゲランド、主演デンゼル・ワシントンと言えば、力作『マイ・ボディガード』と同じ布陣ですが、こちらはもっと気軽に楽しめるアクション・スリラーに仕上がっていました。
地下鉄を乗っ取った犯人グループと、偶然当番だった為に犯人たちと交渉する羽目になる地下鉄管制官を描く本作は、始終落ち着き無いチャカチャカした映像も含めてトニー・スコットらしい。
ユーモアよりもスリル重視。
スピードアップした映像と物語展開は、確かに飽きさせません。
終幕の暴走する車両のくだりなども含め、手に汗握る展開もあちこちあります。


それに主演はデンゼル・ワシントンと、悪役リーダーを嬉々として演じるジョン・トラヴォルタ
ご贔屓が巨体揺らして(デンゼルは役の為にでっぷり太ったようですが)ぶつかり合う演技合戦は、目立とう精神ではなく映画を支えようとするもので心地よい。
久々に市井の人と演じるデンゼルは抜群に上手いし、冷酷非情でキレやすい悪党役トラもスターのオーラを発して魅力的です。
ヘアピース無しのトラは映画では初めてだと思いますが、それがまたこの映画の役に合っていました。
脇役では刑事役ジョン・タトゥーロ(『トランスフォーマー』シリーズに続いて、お小遣い稼ぎ?)、市長役ジェームズ・ガンドルフィーニと、味のある役者も宜しい。


と見所はあるのですが、どうにも脚本が粗い。
L.A.コンフィデンシャル』や『ミスティック・リバー』のヘルゲランドともあろう人が、と嘆きたくなるくらいの出来です。
相当にやっつけだったのでは、とさえ思いました。
次の段落はネタバレです。




オリジナル版にもあったらしい、何時何分までに現金を輸送しないと人質が殺されるという趣向があります。
しかしこのご時勢には電子送金があるのに。
カーチェイスを入れたいが為に無理やりこさえたのでしょう。
劇中でも登場人物の突っ込みが入りますが、ちょっと強引過ぎます。
悪役リーダーの真の狙いを途中でバラしてしまうのもマイナス。
これでは終盤の驚きが無くなってしまいます。
それにこれくらいの事件で、経済が大きく変わることがあるのだろうか、という疑問が拭えません。
その悪役リーダーの正体が、元○○○○となっていますが、服役した9年でああもガラが悪くなるものなのか。
地下鉄を包囲しているSWATが突入出来ない訳は?
恋人とライヴチャットしていた青年が、人質後もPCを起動しっぱなしにしたので、車内をネット中継出来てしまう。
伏線かと思いきや、まるで何も無し。
警察に包囲された犯行グループが、意味も無く反抗して殺されるのも説得力に欠けます。





以上、ネタバレ終了。


犯行メンバーの1人を演じたルイス・ガスマンの扱いが勿体無いのも含めて、随所の配慮の至らなさと強引さばかりが目に付きます。
観ている間はそれなりに楽しめるものの、アホらしいと思うのも確か。
非常に勿体無い映画でした。