days of cinema, music and food

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Sanctum


ママ友BBQ後の夜、『サンクタム』の3D字幕版を鑑賞しました。
3連休中日の土曜夜21時20分からの回、240席の劇場は3割の入りでした。


南太平洋に浮かぶ島にある熱帯雨林の奥地にある、前人未到の巨大な洞窟。
大富豪カール(ヨアン・グリフィズ)の資金によって、大ヴェテランのリーダー、フランク(リチャード・ロクスバーグ)を隊長とする探検隊が挑んでいました。
ダイビングによる調査を進める彼らでしたたが、島を巨大サイクロンが直撃し、出口を塞がれてしまいます。
浸水という危機的状況の中、海に流れ出ている口がある筈と奥に進むしかなくなった彼らは、数々の危機に遭いながら必死にサバイバルを繰り広げます。


映画開始直後に「この映画は事実に基づいている」と字幕が出ますが、実際の事故では死者は誰も出ていないし、皆脱出出来たとの事。
脚本&製作を担当したアンドリュー・ライトの体験談を基にしたそうです。


アバター』『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』と同じ、ジェームズ・キャメロン印の3D撮影システムを使った作品です。
キャメロン自身も製作総指揮として関わっていますが、技術的指導も多かったのでしょう。
さすが本物3D。
立体感・奥行き感が素晴らしい。
3D映像を生かした立体感が緊張感と圧迫感となり、閉所恐怖症的な状況を描いたこの映画には非常に効果的でした。
新たな3Dの使い方という感じで、目から鱗が落ちた思いです。
逆に言えば2Dでは閉塞感の効果が薄れてしまう可能性が大きそうです。
音響効果も繊細且つ迫力があり、こちらも効果的だったと言い添えておきましょう。


映画の内容は、水没する巨大洞窟からのサバイバル物で夢が無いし、キャメロン印なのにVFXが貧弱だったりでしたが、無駄の無い話運びと、意外にも緩急付けた展開なので退屈しませんでした。
ポセイドン・アドベンチャー』を彷彿とさせる水難ものなので、各人の死に様は愉快ではありません。
それでも死に様も意外にバリエーションがあって単調になっていませんでした。


キャメロン印と言ってもキャメロンが書いた脚本との決定的な違いは、男性原理で貫かれている事でしょう。
女性も2人ばかり登場しますが、主役ではありません。
ドラマの主役は厳格な父フランクと、その息子ジョシュ(リース・ウェイクフィールド)なのです。
世界的成功を収める大探検家のフランクは家庭を顧みず、また息子には厳しい。
そんな父に当然ながら反発するハイティーンの息子は、父を理解出来ないでいる。
父と子のドラマは定番ですが、がっちり描かれていました。
彼らの反目と和解が主軸なので、女性陣の入る隙間は全くありません。
むしろ足手まといとさえ受け取れるような描き方になっています。
この世界に違和感や反感を抱く女性観客がもし居ても、当然でしょう。
いや、女性陣だけではなく、脇役含めた人物描写に特に深みがある訳でもないので、映画がコンパクトに仕上がった、とも言えます。


その探検家役リチャード・ロクスバーグは中々良かったです。
配役を聞いて何で彼が?と思いましたが、ドンピシャ。
ムーラン・ルージュ』や『M:I-2』といった悪役が記憶に残る役者で、『ヴァン・ヘルシング』のドラキュラは全く魅力を感じませんでしたが、今回はとても魅力的でした。
生死を分ける状況でも生き抜いてきたという感じがし、またリーダーとしての統率力も感じられます。


デヴィッド・ハーシュフェルダーの音楽も『ガフールの伝説』に続いての力作。
時々、『アビス』のアラン・シルヴェストリが顔を出すのはご愛嬌、と思いました。