大日本絵画「第二次世界大戦のF4Uコルセアエース」

F4Uコルセアと言えばP-51マスタングとならんで第二次世界大戦1、2を争う高性能戦闘機、こと海軍機に限れば疑うことなくナンバーワンの機体であり、古くからキットにも解説書籍にも恵まれています。本書は特にコルセアを使う側、パイロットのからの証言内容を中心に構成された一冊。

正規の戦争行為が短期間で決着する現代ではなかなか考えられないことですが、戦争期間中に主力戦闘機が世代交代する事例は第二次世界大戦下ではさほど珍しいことではありません。海兵隊航空部隊の更新器材としてガダルカナルへ緊急配備された新型戦闘機F4Uコルセアは、導入当初こそ機体不足で部隊間での機体の融通が行われたり野戦飛行場での荒い使用にスペアパーツが不足するなど新型機特有の悩みを抱えこそすれ、ソロモン諸島での戦況が米軍優勢に変わり兵站が安定すると、その高性能を存分に発揮していくこととなります。


補給が不足していた時期の証言は「物量に物を言わせる」米軍としては貴重なものかも知れません。もっとも「Kレーションばかり食べていたら胃がおかしくなってステーキが食えない」とか、やっぱり日本軍のソレとは雲泥の差があります。機体に関しても同様で、速度・出力・武装どれをとっても日本機は及びもつかず、1943年初頭を過ぎれば日本軍パイロットの技量も急速に低下していったとエースたちは語ります。



タミヤのキットになったF4U-1A「白の122」、ボックスアートそのままの実機写真やなぜこの機体が秀でているのかといった解説もあり、模型作製資料としての価値も十分にあります。コルセアは主要模型メーカー製品のみならずデカールメーカーにも多く製品があるので、組み立て前に該当する機体を調べるには向いています。



F-14トムキャット時代に派手なマーキングで一躍有名になるVF-17「ジョリーロジャース」も、この時代は小さな海賊旗をカウリングに描いた地味なマーキング。しかし搭乗員たちは如何にも歴戦の強者じみた面持ちで、濃いなあ…


本来艦載機として開発されたコルセアが、アメリカ海軍で空母運用されるまでにはいくつかの改修とそれに伴う時間が過ぎました。しかしながらイギリス海軍ではアメリカより1年も前からコルセアを空母で運用していたのです。あんな飛行甲板の狭い空母でよく運用できたなと不思議に思う方、脚の短いシーハリケーンや何かの冗談のようなフェアリー・フルマーに比べれば、海賊を雇うことも厭わないのはむしろ英国海軍の伝統と言えましょう。


ソロモン諸島を制圧し中部太平洋・沖縄へと、アメリカ軍の進出と共にコルセアの活動領域は広がり、当初の開発目的通りに空母運用される多目的戦闘機としてF6Fヘルキャット以上の活躍を見せて行きます。制空戦闘のみならず地上部隊への近接航空支援も十分にこなせる世界初の艦載型マルチロール・ファイターとして、F4Uコルセアの地位は揺るがぬものでしょう。ガダルカナル失陥以降のラバウルソロモン諸島での戦闘、初の米海軍空母運用コルセア部隊となった第75夜間戦闘飛行隊、1945年5月11日に神風攻撃を受けた空母フランクリン艦内の状況など、日本側の視点ではなかなか取り上げられないような記述も、本書では目を惹きます。

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