機動戦士ガンダム、モビルスーツバリエーションシリーズよりMS-06Vザクタンク、ザク+タンクのわかりやすいヤツです。
レストアパーツを集めてでっち上げた作業用MSという、地味ながらも個性的な機体でザクもタンクも好きなひとには昔から好かれた存在。かく言う自分もこのキット組むのは初めてではないのですが、今回組んで初めて恐ろしい事実に気がつきました。ま、それは追々本文で……
MSVというシリーズがガンプラの歴史の中で占める位置や製品の性格などについて、いまさらここでくだくだと書き連ねる必要もないでしょう。ザブングルやバイファムのシリーズとほぼ同時期の開発で、プロポーション・ディティールともに非常に優れた設計が成されたアイテムが多いことが特徴です。
3枚のランナーのほかに軟質素材のキャタピラとデカールが封入されています。ちなみにこのデカールは成形色を地球連邦軍仕様に変えたゼータガンダム版でもほぼ同一の版下が使用されていたり。
マゼラベース部分は1stシリーズ最末期に製品開発されたマゼラアタックの出来映えを引き継ぐ美しいディティールが入っています。製品グレードとしては同時代の一般スケールモデルに充分匹敵するものでしょう(なんて言ってると模型屋の店先で「冗談言っちゃ困るぜ そんなプラモは戦車じゃない」とか中学生に絡まれちゃうのが80年代クオリティだよな)
むかしから頭部の出来は1/144ザクの中でも最高と言われてきました。この時期はまだ設計データの統一規格化が図られてない時期なので、同じザクでも頭の形が違うなんてごく普通のことなんだな。
MSVのシリーズでも1/144フィギュアが付いてきたのはザクタンクぐらいでしょうか、今時分ならレーザー加工でもっと精密なパーツが出来ることでしょうけれど、このユルさがひとまわりしてなんだかひとのぬくもりを感じさせる「やわらか兵士」の二人組。
個々のパーツもさることながら、MSVの本質はやはりこの「解説書」にこそあるだろうと思うわけで、黒を基調にしたシックなトーンが大人びた雰囲気を伴って当時のプラモ少年たちの背伸び心を鷲掴みにしたものですよええまったく。
架空の機体にテキストと設定画稿を付随して存在感を高める、今にまで続くガンプラのスタンダードなフォーマットは実にこの時期に成立しています。以降様々な形でMSVに追従するような企画も多々在りましたが、やはりセンスの面ではオリジナルのMSVこそが原点かつ至高と言ってよいでしょう。思うにこのシリーズってどの機体も「ぼくが考えた最高にかっこいいナントカ」を目指してないのがいいんだろうな。やれ試験中に爆発したとかソーラレイで大抵焼かれたとかおよそ残念な設定が多くて「テレビに出ないには出ないなりの理由がある」をちゃんとやってるのがよいと思います。のちにマスターグレードの旧ザク機体解説読んだら強過ぎで吹いたのと対照的でねぇ。
で、ウワサの頭部です。06Rやマインレイヤーと比較した方が良いんですが単独で見ただけでも上方へ向けた微妙なすぼまり感とモノアイレール部分の幅取りとか、いい形をしています。プラモデルとしていい形をしているザクの頭部が、ではアニメのザクの設定資料に即した形をしているかといえばそうではないのがザク道(何)奥の深いところで、変にアニメ設定を意識するとあんまり格好良くはならないんだよなーうーむ。
いわゆるハの字切りされたマッシブなボディラインは当時の模型雑誌作例からフィードバックされたスタイルです。この辺もあくまで立体としての格好良さなのであって、アニメーターの作画資料として起こされた「描きやすさ」とはちょっと違うんでしょうね。なお流石に幾度となく再生産されてきている名作プラモですから、各部のパーティングラインやバリはキツめです。傷跡などはものともせずに鉄ヤスリでガシガシ削ってタミヤパテでズンズン埋めていくのが伝統の作法だ!
モビルスーツというよりはウォーカーマシン的なデザインが成されている作業用マニピュレーター。最近ガンダムUCに登場したのはこの部分を大型化したV-6型(グリーンマカクと言った方が通りが良い)でしたか。
車体部分の組み立てではパーツ52と53を接着する転輪を、あらかじめ14個組んでおくよう指示があります。しかしながらなんのガイドもピンもないイモヅケですのでここは車体底部のパーツ21に53を取り付け、その後52を合わせて行く……という流れが昭和からのテクです(w
ベルト式のキャタピラは焼き止めも接着もない差し込み式です。接合部分は上面に来るよう、位置を調整します。
車体上部を取り付けると転輪・キャタピラはほとんど見えなくなります。それが不満な方はスカートを短くしましょう、夏だし。
原型となったマゼラアタックと比べると車体上部パネルを広く取ってターレットリングも設置可能なので、しばしばマゼラベースをベースにした(シャレじゃないぞ)自走砲的なモノを作るための素体としても使われましたねこのキット。
背部ユニットは3種類を選択式。カセットタンクのほか、ジョイントの形状からキットではクレーンユニットとカーゴデッキが一体化されていますが本来はこれ別物です。
一応の完成を見ます。基本素組みですが機銃と排気管はカッターやドリルでカリカリしてます。
MSVのキットは個別のユニット形状が秀逸なので関節のタイミングを変えてポージングを自然にすれば今でも十分格好良いという、いわゆる岡プロ式の手法を経ずとも一種無機的な固めの立ち姿が却って様になってるのはザクタンクならではの長所でしょう。
などとここまで組んでみて、恐ろしいことに気が付いた。冒頭の前フリにも書いたことではありますが……
話を御理解し易くするためにビルダーズパーツシリーズの「MS パネル #01」を使ってコンテナをこさえてみました。
一辺の長さが合うのでこんなことも出来るんです。って最近どっかで見かけてそれのマネしただけなんだけどね(^^;
お手軽に作ったコンテナをザクタンクの前に置いて、お手軽な作業の開始。ところがどっこい何も出来ません。何故って、
腕が、届かない。
Σ(゚Д゚;)
いやさすがに…驚きましたよ……長年見慣れてきた形のものが、こんな構造的欠陥を抱えていたとわっ!
荷台にコンテナ乗せても手も足も出ないんである。足は最初から無いしなあ。
そもそもこの腕「作業用マニピュレーター」であって、それを説明する作業中のイラストが解説書にも載ってるんだけど
フツーのザクみたいにフツーに指が五本あった方が絶対作業効率高いと思います。てか溶接工のところに出掛けて「これからは親指と人差し指だけで全部作業やってね(・ω<) テヘペロ」なんて言うたらアンタ、その場で犬の死骸溶接されますぜ……
このことにむかしから気づいていた人もちゃんといたと思うのですよ。UCに出てきたのがV-6仕様だったのもわかるし「08小隊」の旧ザクベースザクタンクが鬼のように巨大なマニピュレーター振り回していたのもようやく納得が行きました。大部分のファン層ではこれまであまり指摘されることなく過ぎて来たようにも思いますが……
以前ザクタンク組んだ時は自分の中で近藤和久スキーが全開だった時期なんで、腕の短さにはさっぱり気が付きませんでしたなあ(画像はイメージです)
クレーンユニットもねえ、これで一体何を作業するんだかねえとあの頃の頃ぼくらが見ていた「リアル」って、いったい何だったんでしょう。濁ったオトナの目で見ると、もう選挙運動の宣伝カーにしか見えないよ……
「ご町内の皆様、敢えて言おう、カスであると」
以前作った時は「誰も使わネーヨ」とか思った中隊長マークは、頭部共々他のザクに流用してみて下さいという、設計者の方からの提案だったんだなあとそんなことにあらためて気づかされたのは今回の良い経験でした。
秋に始まる「ガンダムビルドファイターズ」のキットにも、こんなような遊びがあるといいんですがねー、どうなるんでしょうねえ。