No.19

哲学の議論は、思想を持つものどうしの通常の討論とは逆に、自分では気付かない自説の難点や弱点を相手に指摘してもらうことだけを目指して行われる。ぼくの経験した範囲では、大森荘蔵さんと議論したとき、彼が完全に哲学的であると感じた。大森さんは現在の自説が有効に論駁されることにしか興味を持っておられないようであった。
    (永井均・『<こども>のための哲学』・ISBN:4061493019)

どうやらぼくの好きな議論は、こっちよりのもののようです。遊びやおしゃべり、お巫山戯に近かったり、ちっとも建設的、生産的じゃないのです。でも、こっちの方が面白いでしょ?

『のための哲学』(永井均・ISBN:4061493019)

<子ども>のための哲学 講談社現代新書―ジュネス

日本の哲学界では結構有名な、永井均さんの著で、哲学するための入門書という趣の本です。哲学書って大体難解なものが多いですけど(たとえ入門書であっても!)、これは結構わかりやすいかなーと思いました。とは言っても、哲学書の難解さというものは、書いてあることが自分の中の哲学に近いか、自分の中のコトバの意味と合致しているかーみたいなものに大きく左右される(と思う)ので、一概には言えなかったりするのですが。

主な内容は、「私」はなんで「私」なのか、という問題と、何故悪いことをしてはいけないのかについて、永井先生の感じ、考えたことを書いたものです。文中にも書いてありますけど、専門用語がわからない人は、飛ばし読んでも全然オーケーだと思います。内容を理解するより、「哲学するということはどういうことをすることか」を感じるための本です。

「私」についての問題は、例えば「もし完全なコピーマシンがあって、まったく中身の変わらない自分が二つできたら、どっちが自分か」や、「世界は自分ひとりの舞台なんじゃないか、そうだとしても何も不都合はないのではないか」みたいなことから出発して、「私」を構成するものについて考えているもので、正直「私」問題が苦手なぼくにとっては、はーぅーみたいな感じでした。不思議なことは不思議ですけど、あんまり興味が出ないのです。

二つ目の善悪についての問題は、「何故悪いことをするべきではないか」や「道徳って何?」といった問題で、こっちはかつて同じような疑問を持ったことがあったので、結構面白かったです。身近な例では「信号が赤でも、車が近くに走ってないのなら、横断歩道渡るのか、渡るとしたらそれは悪いことなのか?」から始まるような問題かなぁ。

ぼくは若いがゆえに、反社会的で、ニヒリスティックなので、基本的なスタンスは道徳やルールを疑ってみるという風にできています。そういう人はたぶん考えたコトがあると思いますけれど、結局「道徳」などというものは、自分が生きてく上で、自分の利益になるように誰かが作ったモノであり、絶対的な存在でなく、利用されるモノ、利用するモノなんじゃないのか、というコトを追求したものでした。実は「道徳」って恐怖政治に似てるなーとか、〜しなければならない!などという人にはロクな人がいナイ!とか、本当に道徳的な人にとって、道徳は害、ないほうがいいものなのでは?と、いろいろな考えが浮かびました。無償の行為を尊いと感じるのは、それが道徳的に善いコトだからではなく、そういう人がいれば自分がタダで得ができるから、それを人にやらせるために、それを道徳的で、よいことと偽装したんじゃないか、とか。

と、「道徳」についての議論も楽しめたのですが、一番いいなーと思ったのは、「問いの後に」ある「哲学とは?」というところでした。上にも書いたように、哲学はどういうことかについて、永井先生なりの答えについて、真摯に語られています。哲学的と哲学はどう違うのかーみたいな。さらっと試しに読んでみたい哲学入門者の方は、はじめの方とここを読んでみて、気に入ったら全部読んでみるのがいいかもしれません。ぼくはこういう考え好きです。といってもそんなに哲学者知ってる訳じゃないですけど。

それにしても、哲学書って、やっぱり気合入れないと読めないですよ。読み流すとホントに何も残らないのです。たいへんたいへん。


    評価:★★★

今日のさわお。

SSTVのStudio Grownという番組で、the pillowsというバンドのvocal&guitarの山中さわおさんが出てました。30分の短い番組ですけど、テレビでピロウズ見たの初めてなので、ちょっと感動。でもさわおはなんか、どっかから出てきた地下生物みたいな感じで、正直ダイジョブなのか?でした。

ピロウズってなんじゃって人は公式サイト(→ここ) にいってみると、確か試聴ができたと思います。是非に。ギターロックで、でもそんな激しくなくて、やさしーとかせつない感じです。でもちょっと違うかなぁ。むなしい?うーん、上手くあらわせません。いい意味でポップな感じ。なんか訳わからないですね……。有名どころで似ているの挙げるとしたら、ミスチルスピッツバンプが近いかなー。音も好きですけど、歌詞がとってもいいのです。しみる。

いいなーと思った方は、最近出たアルバム「TURN BACK」がオススメです。2000円と安いですし、聞きやすいですよー。宣伝宣伝、と。