原発事故対策に関連した世論調査について

 17日から、18日にかけて、asahi.com(朝日新聞)と、毎日jp(毎日新聞)が、前後して、菅内閣の支持率、東日本大震災からの復興政策、福島原発事故の政府対応、などについての世論調査を発表しました。
 18日にNHKで放送してた世論調査の結果とあわせて、書いてみたいです。

朝日(asahi.com):
 福島第一原発の事故についてうかがいます。今回の事故について、どの程度、不安を感じていますか。(択一)

  • 大いに感じている=56%
  • ある程度感じている=33%
  • あまり感じていない=9%
  • まったく感じていない=2%

 福島第一原発以外の原子力発電所でも、大きな事故が起きる不安を、どの程度感じますか。(択一)

  • 大いに感じる=50%
  • ある程度感じる=38%
  • あまり感じない=10%
  • まったく感じない=1%

 福島第一原発の事故について、政府の情報提供は適切だと思いますか。適切ではないと思いますか。

  • 適切だ=16%
  • 適切ではない=73%

 原子力発電を利用することに賛成ですか。反対ですか。

  • 賛成=50%
  • 反対=32%

 日本の原子力発電は、今後、どうしたらよいと思いますか。(択一)

  • 増やすほうがよい=5%
  • 現状程度にとどめる=51%
  • 減らすほうがよい=30%
  • やめるべきだ=11%

毎日(毎日jp):
 福島第1原発に対する政府の取り組みは?

  • 大いに評価する=4%
  • ある程度評価する=24%
  • あまり評価しない=45%
  • まったく評価しない=23%

 原子力発電に頼る日本のエネルギー政策は?

  • やむを得ない=40%
  • 原発は減らすべきだ=41%
  • 原発はすべて廃止すべきだ=13%

NHK


 NHK世論調査結果が放送された後にも、書いたことですけど
 こーゆー世論調査をするのは結構ですけど。
 調査結果を「原発賛成派対反対派」みたいな区分けにはめ込んで評価するのって、現実的に意味無いですよね。
 むしろ弊害の方が大きいんだわ。

 もし「原子力施設の安全基準は、より厳しく改めるべきでしょうか?」みたいな質問をしたら。
 圧倒的多数が「改めるべき」って答えるはず。
 だって、石原都知事みたいな、バリバリの原発推進派ですら「安全基準の見直しも必要」みたいに言ってるくらいだもん。
 福島の原発事故の後でも「過去の原発政策が正しかった」なんて言ってるの自民党の一部政治家くらいなもんです。


 で、「原子力施設の安全基準を、より厳しく改める」ことをすれば、当然、廃炉になる原子炉、出るはずなんですよね。出ないとウソ。
 つまり、多かれ少なかれ「原子炉の数は減らざるを得ない」はずなんです。
 きちんと「安全基準を、より厳しく改める」ことをして、ちゃんと適用してったら。

 だから「原子炉の数は減らすべきですか?」なんて質問を、今、世論調査でする意味もほとんど無いわけ。
 「安全基準を、より厳しく改める」ことが実行された後にするならともかくね。


 アタシの個人的意見としては、建造年代の古い旧型タイプの原子炉から廃炉にしていくべきと思いますし、例えば、旧型原子炉を3つ廃炉にしたら、1つか2つ、より厳しい安全基準をクリアして、発電性能も高い新型原子炉に立て替えていけるといいかなって思ってます。

 アタシは、そういう意味では原発容認派(推進派ではない)で。
 計画的に、原子炉の総数は減らしていくべきだし、総発電量に占める原子力発電の依存率も計画的に減らしていくべきだ、と考えてます。

 そんなふうに考える立場からすると、「原発賛成派対反対派」みたいな区分け意識は、弊害の方が大きくて、現実的な意味はない、と思えます。
(ちなみに、アタシは、朝日の質問でいくと「福島第一原発の事故についての不安」はある程度感じてる、だし、「福島第一原発以外の原子力発電所でも、大きな事故が起きる不安」は、大いに感じてる、です)


 「安全基準をどう改めるか」が、今とても重要で現実的な議論のはず。
 過去の安全基準のように、「建設費が高くなりすぎるから、大津波の可能性は無視する」みたいな、その手の経済性を重視した安全基準は改めてほしいですし。
 「全電源長期喪失はあり得ない」前提の安全基準も改めてもらわないと。

 むしろ、「全電源長期喪失が起きても、放射性物質が漏れづらい」とか、「万一漏れても、点検修理がし易い」とか、「万一漏れても汚染水ためとける施設が大きい」とか。そうした設計思想の転換をしてもらう必要あるんじゃぁないでしょうか??
 この辺になると、専門家の人によーく議論してもらわないといけないですけど。


 例えば、福島原発とか、原子炉とタービンをつなぐ配管類、狭い地下溝みたいなとこも通してるせいで、漏出点の確認がたいへんみたいじゃぁないですか。
 もちろん、現状だと放射線量が高いってこともあるんでしょうけど。

 素人の勘違いかもしれないけど、配管類のかなりを地下に通すのって、やっぱり放射線遮蔽の観点もあったのかな? って思うんですよね。
 素人考えですけど、むしろ配管の周りを建屋みたいな構造物で囲いながら、地上や空中を通したほうが、万一の時の修繕しやすいんじゃぁないですか?
 地中を通しといたって、地震で壊れるときは壊れちゃうんでしょうし。


 何より、原発施設のハード・スペックだけで完璧な安全性を追求するような思想は考え直してほしいですね。
 「施設が安全基準を満たしてる」って“神話”を盲信して、運用面の安全対策を怠ってたのが、福島原発事故の人災性ですから。
 電源車を近くの高台に配備しておかなかったとか、そーゆーことを言ってるんですけど。


 つまり、「原子力施設の安全基準」は白紙から根本的に見直して、より厳しいものに改めてもらわないといけないですし。それだけでなくて「安全運用のための基準」も、これまでよりも厳しいものに改めてもらわないといけない。
 何より、施設の査察権限の強い第三者機関を設置してもらわないと。
 いつも書くけど、原子力安全・保安院はとっととリストラしちゃってください。