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FULL MOON PRAYER このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

16/02/11

天賀井さんは案外ふつう 1 / 城平京・水野英多

この作品、帯にもあらすじにもジャンルが謳われていなくて、読んでみるとたしかにこれは何なのだろう……? となる不思議な一冊です。設定的には最近城平京らしい伝奇もので、あとがきには「日常系伝奇コメディ」と語られているのですが、なにせあまりに色々な要素が雑多に放り込まれた闇鍋のようになっていて、じゃあ表立って何に見えるかと言ったら斜め上を狙い続けるシュールギャグなんじゃないかと。

そんな感じで二匹の化物の伝説が語り継がれる街にある目的で転校してきた天賀井さんと、彼女出会少年物語、ではあります、一応。そしてそこから一気に動き出す物語は表面上はコメディ。そしてすごい勢いで斜め上に吹っ飛んでいく設定。城平京作品キャラ同士の掛け合いや、真面目な顔で投げ込まれるシュールな設定が好きならおすすめですと言ったところですが、城平京作品なのだからそれだけじゃないでしょうと。

シリーズも後半になると伏せカードオープンして見えていた図面がどんどん書き換えられていくというのはこの人のいつものパターンなのですが、今回はそれがやたらと早いように思います。読み進むごとにそれは本気で言っているのか……? みたいな設定がバンバン明かされて、一冊終わった頃には既に読みだした時に見えていたものは遥か彼方へ。一応この辺りが仕掛けなんじゃないか、怪しいんじゃないかと思った部分が、次の瞬間には予想のはるか上空に存在していたギャグのような設定で明かされていくこの斬新な感覚

この表向きは緊張感の欠片もない物語が、シリアスに振れずに日常系の表情を保ちつつ、刻一刻と状況を変えながら伏線収束させて見事に最後の盤面を描き出すなら、それはすごい作品だったと言えるようなものになるのではないかと思います。そして「雨の日も神様相撲を」を読んだ後だと、城平京ならそれをやってくれるのではないかと期待してしまうのです。

16/02/06

宮野真守 LIVE TOUR 2015-2016 〜GENERATING!〜 1/31@武道館

アニサマとかではこれまでもちょくちょく見てきたこの人を、ちょっと凄いんじゃないの? と思ったのはまとまった曲数のパフォーマンスをしていた去年のロデオフェスで、その時に感じたのはステージ上でのパフォーマンスの素晴らしさだったのですが、もちろんそれは踏まえた上でやっぱり単独ライブになると違う景色が見えてくるのだなと思った初マモライでした。

FRONTIER』というアルバム宮野真守最前線として制作されたのと同時に、アーティストとしての男性声優最前線もここにあるはずで、それが一度見てみたかったというのもライブに足を運んだ理由でした。そして確かに、役者としての声優ライブをするということの一つの答えを見たなあと。

スタイルが良くて声が甘くて動きも見栄えがして、かっこいいのだけどどこか隙がある人懐っこさもあって、それはもちろんこの人の魅力だと思います。歌もダンスもそのパフォーマンスももちろん。ただ、何が凄かったと言えば、あのステージ上には最高の宮野真守表現されていたことだと思いました。本人の歌もダンスもチームマモの演奏ダンスも、照明含めた演出も全てはそのために。あのステージの上に最高の「宮野真守」を表現するために。

ライブを見ていて、感極まる姿も、素の言葉漏れるところも、正直どんなに本音宮野真守ステージ上にあっても、どこまでが本当なのだかわからなくなる瞬間がありました。でも、きっとどこまでが本当でどこまでが演出されたものかなんて関係ないのです。あの夜、あの場所表現されたものは、完成されたパフォーマンスも滲むような弱音も全てひっくるめて宮野真守という一つの作品だった。だからあれは、歌手としてのステージであると同時に、役者としてのステージなのだなと。宮野真守役の宮野真守さん完璧だったなと。

ライブって歌と演奏勝負するものという考えはもちろんあって、それは同じ週に本当にシンプルにそこで勝負するUNISON SQUARE GARDENを見てきたから余計にコントラストが際立ったようにも感じたのです。ただ、観終えてしばらく考えてみると、なんというか、同じ時間場所表現者と観客が共有するという意味において、それって違いですら無いんだなあと思います。

その時に、その場所に何を表現できるのか、武器は歌だって踊りだっていい。演劇ミュージカルお笑いライブも、なんだったらフィギュアスケートだってプロレスだって同じ。私が好きで追いかけているのはそういうものなのだろうと思い至った、それくらいステージ上の宮野真守にはインパクトがあったライブでした。

ちなみにこの人、俺についてこい的な格好良さじゃなくて、格好いいところも見せつつかまってあげたくなるタイプの人たらし系なのだなあと。いやこれは女性人気出るわと思いました。というか男でもキャーキャー言うわ。凄かった。

16/01/29

雨の日も神様と相撲を / 城平京

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

少年少女青春伝奇

物語に入る前、一番初めに掲げられるこの言葉。そうなんです。読み終えてみればまさにその通りなんです。しかしまあ、読んでいる最中は一体これは何の小説なのかさっぱりわからなくなるというか、飄々とした語りで緩和されてはいるものの、よく考えればとんでもないことが起こり続け、そしてそこにはそれぞれ全然混じり合わなそうな要素が混在しているのです。

カエル様を神様と崇め、独自に伝わる相撲神事とし、豊作を保証された不思議な村。小さな体ながら相撲取りを目指せと両親に言われて続けてきた少年と、大きな体と怪力を持ちカエル様の花嫁になることを運命づけられたかんなぎの娘の出会い神話にまで遡る相撲薀蓄に取り組みにおける技術的な解説。そして少年少女に頼まれ、外来種に脅かされるカエル神様相撲を教えることになって。両親を失った少年を引き取った刑事存在物語殺人事件要素を持込み、少年カエル形態に合った相撲の取り口を嫌々ながら考え、そして物語神様と村のあり方を巡っていく……ってこれなんの話だ、という。

ただ、最後まで読めば一周して少年少女青春伝奇に戻ってくるのです。しかもここまでの混沌と言ってもいいような要素は綺麗にまとまり、よくよく考えると大ネタの連発でかき回された盤面は極めてしっくりとあるべきところに収まります

これは神様相撲を教える物語であり、神様と化かしあう物語であり、それ以上にもっと多くのものを化かしながら形を変えていく物語。どうしてこんなものが成立しているのかわからないけれど、読み終わってみれば確かに成立している、そんな作品でした。皆これを読んで、爽やかな読後感の後しばらくしてじわじわ侵食してくる、もしやこれはもの凄いものだったのではないかというこの感覚を味わえばいいと思います


まりにもどうしてこうなっているのかわからなかったので、以下ネタバレ含めた考察

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16/01/25

THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3 / バンダイナムコエンターテインメント・門司雪

これを読んで伊吹翼というのがどういうキャラクターなのか、ようやく分かった気がします。

ミリオンゲームをやっていない身としては、ドラマCDなんかでしか触れる機会のない翼は過剰なほどの才能とそれ以上の自分勝手さをもった、トラブルメイカーというよりも単純に困った子という印象。だから、この話の中でコーラスなのに合わせる気が欠片もない彼女に対してジュリアが怒ったのは割とそのまんま翼に対して私が感じていたことで、でもそこで翼が態度を改めるならこれはそれだけの話になっていたはずのもの。ただ、これはそうじゃなかった。

翼が見ている夢。感じていること。自分に正直に、夢に夢見るように憧れて。プロという立場で描かれる以上どうしても大人としての分別を求めてしまうけれど、この子は大きな可能性を秘めた、まだ14歳純粋すぎるくらいに純粋な一人の少女なんだなと。そしてそれが、歌に対して真摯であるが故に、ある意味自分にできる範囲を決めてしまっていたジュリアを巻き込んで、夢に向かって突き抜けていくライブシーンに繋がる。

もちろん今の翼ではコーラスは失敗するし、憧れの美希のバックダンサーにはなれないし、そこは大人にならなければいけないと言われてしまう(あの美希に言われるところに成長と黄色系譜を感じて感慨深いのですが)のですが、今まさに成長していくアイドル物語として、ギリギリのバランスを走っていく素晴らしいものを見せてくれたと思います。ジュリアと翼を繋いだ瑞希の存在も良かった。まだ迷いを残したジュリア即断新曲でいけると推した姿は、ちょっと3人で一番かっこよかったんじゃないかと。

そしてこのライブシーンで披露される新曲の「アイル」がCDでついてくる、しかも本当の完全新曲としてというのがアイマスの強さだなあと。だって作詞作曲nano.RIPEということは、これはあくまでもジュリアの曲で、それを翼が歌っているのだということで、そこにこの歌詞を重ねられたらもう。これは翼の歌であると同時に、圧倒的な才能で突き抜けていく翼に彼女が何を託したのか、音に、言葉に、そこまで想像が膨らむような一曲だったと思います。

16/01/23

りゅうおうのおしごと! 2 / 白鳥士郎

1巻を読んだ時に早くアニメ化しないかな、いやドラマ化でも行けるんじゃと思っていたのですが、2巻を読んで考えが変わりました。もう小説があればいいんじゃないかと。生半可な映像化じゃとてもじゃないけれど追いつけないと思うくらい、これ、面白いです。素晴らしかった1巻にさらに輪をかけて良かった。

あい内弟子に取って将棋を指して暮らす生活幸せで、どこか安寧としていたのがいけなかったのか、八一は姉弟子からあいが弱くなっていると告げられる。折しもその時、八一は連盟会長から一人の少女将棋を教えることを依頼されていて。

強くなるにはライバル必要、ということであいライバル、もう一人のあい夜叉神天衣登場の一冊。この天衣と八一を繋ぐ縁の物語も、相変わらずロリっ子大プッシュなところも、将棋バカ過ぎる八一と銀子の進まない関係も、どれも作品として面白いところではあるのですが、それは枝葉の部分。この作品の幹は、今まさに将棋に打ち込むキャラクターたちの姿、そこに込められた想い、師弟を繋ぐものの強さなのだと思います。

天衣という大きな才能に触れて、彼女を育てたい、そしてあいライバルになってほしいと考えるようになる八一。高飛車生意気で口が悪くて、ただ将棋には真摯に向き合う天衣。天衣に師匠をとられるんじゃないかと不安になりながら、その天衣との対局で足りない自分の力と向き合って涙するあい。ここにあるのは将棋に全部をかけた青年少女たちの、本気に熱い、努力と才能と人情物語。そしてそれを陳腐にさせないだけの、将棋界の雰囲気や仕組みの描写があるというなら、そんなもの面白くないわけがないでしょうと。

将棋は駒の動かし方くらいしかからない私で、もちろん一手一手がどんな意味を持ったものかも分からない。それぞれがとっている戦略も作中で解説されている以上のことはわからない。それでも、対局シーンは思わずのめり込んでしまい、端々にぞわっとするような一文がくる。そこに込められた熱でこれは凄いものなのだと感じさせる。本当に素晴らしい作品だと思います。

しかし才能があっても対人戦の経験が不足しているという女子小学生を、付き添いありとはいえ迷わず新世界の賭け将棋に放り込む八一は将棋馬鹿というか、なかなか狂気じみた勝負師としての価値観垣間見えていたかなと思ったり。

そんなこんなありつつも兄弟弟子になった二人のあいがこれからどう成長していき、それが八一をどう変えていくか。作者が先が一番書きたかったことがテーマになるという三巻、いったいどこまで面白くなってしまうのか、とても楽しみです。