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FULL MOON PRAYER このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

16/07/17

高海千歌は高坂穂乃果にはなれない -ラブライブ!サンシャイン!! 3話感想-

アニメが始まって、無印の時に一つのポイントになっていた3話まで来たラブライブサンシャイン。μ'sに転んで人生方向性が30度くらい曲がった反省を糧に、適切な距離感でのお付き合いをと思ってあまり情報も仕入れずにここまで来ていたのですが、アニメ始まったらめっちゃラブライブしか言えない何かで面白いし、ここに来て方向性みたいなものが見えてきたところもあって危険が危ないです。

そんなこんなでちょっと3話まで見たところでの印象を。

まず、サンシャイン世界ではμ'sは伝説です。観客ゼロのスタートからトップを取ってスクールアイドルというものをおそらく全国レベルの存在まで押し上げて解散したグループがμ'sであって、主人公である千歌はそれに憧れてスクールアイドル活動地方都市で始める、たぶんあの世界に掃いて捨てるほどいるだろうμ'sフォロワーの一人です。

ラブライブという作品物語現実リンクしながら一つの大きな流れを作っていくのが特徴でしたが、μ'sの物語としてのラブライブは作中で社会現象を起こして解散からドームライブ示唆した映画版伝説となり、声優ユニットとしてのμ'sもまた社会現象を起こして紅白出場からの解散ドームライブと力技で伝説まで持って行ってしまった。これがサンシャインにとっては前提になっています。

で、その後継プロジェクトAqoursが問われるのはその伝説のμ'sと比べてどうなのか。彼女たちは端から前代未聞の道を飛んでいってしまった伝説と比べられる宿命と、その伝説が築いてきた自分たちとしての活動とは無関係に得られる人気を背負ってスタートした訳です。CDデビューシングルからガンガン売れるけれど、スクフェスアイコンAqoursに変わった時にも出ていたような「μ'sの方が良かった」の声を「AqoursAqoursで良いじゃないか」にひっくり返さないと、二番煎じレッテルからは向け出せない。

そしてこれはラブライブなので、現実に起こっているその状況はもちろん作中とリンクする。

ダイヤが実はμ'sのファンで、スクールアイドルを始めようとする千歌にμ'sと比べてどうのだとか、スクールアイドルのこともよく知らずにどうのと突っかかるのは、まさにこういう声の代弁だし、Aqoursはこの先それを内包した上でグループとして成立しなければいけないということです。

そしてμ'sが観客ゼロからのスタートを切った3話で、Aqours体育館いっぱいのファンを集めて成功のスタートを切ります。でもそれは、ダイヤがやっぱり突っかかるように、μ'sが築いてきたスクールアイドルというものの人気と身内の優しさであって彼女たち自身評価された訳ではない。だって、実際のAqoursがμ's人気の延長で最初から売れているのだから物語だってそうとしかならない。


ただ、その3話でμ'sを追いかけ、ストーリー構成キャラクター配置もμ'sの物語をなぞるように進んできたこの作品で、明確な差異があったように思うのです。

それは、高海千歌高坂穂乃果にはなれないということ。

ひいては、Aqoursはμ'sにはなれないということ。

最初の公演で逆境にあたって追いつめられた時に、それでも自分気持ちで跳ね返した高坂穂乃果と、周りの助けがなければ折れてしまいそうだった高海千歌。そしてその助け自体がμ'sの築いた人気によって生まれたものであること。普通星人と言われている時にお前のような普通いるかと思った千歌ですが、そういう意味普通の子でした。今のところ叫んだだけで雨をやませられそうにはない。

伝説にまでなった穂乃果はカリスマだったし、超人だった。現状、千歌はそれに憧れる凡人でしかない。だから、それに憧れて追いかけたって、どこまで行ってもμ'sフォロワーしかないし、たくさんあるコピーの一つにしかなれない。μ'sに憧れ、μ'sの歩んだ道を追いかけるように進むこの物語の中で、μ's以上の成功を収めたファーストライブの裏に、その方向性での限界が早々に見えてしまったというのが3話時点でのこの物語ポイントなのかなと。

まだしばらくAqours物語はμ'sを焼き直すように進んでいくと思うのですが、それがそのままデッドコピーで終わってしまうのか、あるいはどこかでμ'sではないAqoursとしての個性確立していくことができるのか。だとすればそれは仲間の力なのか、はたまた別の条件なのか。あるいは違う個性ではなくて、同じ道の果てにμ's超えを果たしてしまうような限界突破の成長が見られるのか。


個人的には、願わくばこれは偉大すぎる開拓者だった先人に憧れた凡人が、その背中を、歩んだ道を追いかける中で、それとは違う何者になれるのかの物語であって欲しいと思います。

そしてそれはまた、声優ユニットとしてのAqoursが、声優ユニットとして規格外成功を収めたμ'sと比較される中で何者になっていけるかという現実リンクしていく物語であればと。


ひとまず3話まで見たところでの感想というか、希望はそんなところで。

もし本当にAqoursというプロジェクトがそういうアングルで描かれていってくれれば、ちょっとそれは追いかけなくちゃいけないし、1stライブ彼女たちが何を見せて何を語るのかが気になちゃうBD積まなきゃいけないのかなあ、みたいな、ね。

16/07/10

読み進める途中、頭の中で「こきゅうをーとめていちびょうー」と歌い出した人はきっと私だけじゃないと思う。

ストライクフォール / 長谷敏司

ストライクフォール (ガガガ文庫)

ストライクフォール (ガガガ文庫)

長谷敏司ライトノベルストレートエンターテインメント作品をという割に、宇宙ロボット同士が戦うチームスポーツものという今のライトノベル流行からアウトコース低めに外していくような一冊。ですが、もうこれはひたすらに作者からのこういうの好きだよね? にページをめくるたびに大好きです! と返していくような、真っ直ぐで熱い少年漫画チックな物語でした。

宇宙からもたらされた人類超えた技術で作られた人型のストライクシェルで、宇宙舞台にチームごとに闘うストライクフォールという競技軍事技術開発をスタートとして代理戦争の側面も持ったそのスポーツ選手に、かつて両親を失った事故の際に救われた雄星と英俊の双子兄弟は、やがてストライクフォールの選手を目指す。そして才能を示しめきめきと頭角を表した弟がトップリーグの一軍へまさに上がろうという時に、その兄である雄星はまだ地上でくすぶっていて。

地球重力兄弟を育てまた縛る家という重力、「落ちている」という表現宇宙を翔けるストライクシェル、向こう側に手を伸ばすチル・ウェポン。重ねるような表現の使い方は長谷敏司らしく、ただ長谷敏司作品の中では一番シンプルエンタメをしている作品だと思います。個人的には、長谷敏司作品の色々なものがぎゅっと詰め込まれた濃さみたいなものが好きなので若干物足りなさはありつつも、ただやっぱりこれは素直に面白いなと。

才能に勝る弟へのコンプレックスを抱える兄と、凄いと認めているが故に自分のいるところにさっさとあがってこない兄に不満をぶつける弟。そして彼らを引き取り育てた家の娘である環にそれぞれがもった恋心。その気持がぶつかり合う練習場での模擬戦は、まさにそれぞれの理由を背負って殴りあうから格闘技は熱いんだよというもの。そしてそこからの急展開と、全ての想いと覚悟を背負って宇宙に出る雄星の一度きりの闘いはまさに王道を行く展開で、メーターを振り切るような熱さと恐怖の向こう側の爽快感がありました。

あとは地球にやってきた時に雄星に特訓をつけた、英俊のチームメイトにして二軍女子得点王自由奔放な性格のアデーレが、わかりやすくツボで自分チョロいなと思いました。でも、前向きで強気で考えなしのようで気遣いはできて色々と雄星アドバイスをくれて、金髪で赤いストライクシェルに乗っていてなんかこの子満点なんじゃないかと。

そして、走って、飛んで、全てを振りきって遠くまで行こうとする双子の姿と対比される、地球の家の重力象徴のように描かれる環の姿。危険世界に飛び込んで行こうとする二人を見て、どうやっても変わってしま関係の中で彼女が願うことが、それも間違いでもないと思うだけに、切なく重たく感じるものがありました。

雄星に向けた

「……ダメになってもいいのに」

ちょっとゾクッとくる一言だったなあと。

雄星の取った行動も含めて、今回の事件の結果は彼らの未来に激動をもたらすだろうもの。このスタートから一体どんな物語が生まれるのか続きを楽しみにしたいと思います。

16/06/28

Unbalance by me -Kanon Wakeshima Live Tour 2016-@Zepp DiverCity TOKYO

前回のTUKINAMICツアー東京がSHIBUYA CLUB QUATTROという大きくはない箱で、発表された時正直「え、DiverCity埋まるの?」と心配だったのですが、座席ありとはいえSold Outしていて、出てきてそうそう分島さんが「ほんとうに私のワンマン!?」とめちゃくちゃ驚いて嬉しそうにしてて、なんかそれだけでもう一つの物語というか満足感半端無かったというのは置いておいて。

バンドにホーン・セクションありで本人はチェロも弾くというリッチな編成で、ジャズからポップスロックまで幅広く分島花音音楽が楽しめる良いライブでした。とにかくステージ上の人たちが楽しそうで、それを受けてか客席もどんどん盛り上がっていって、落ち着きはあるのだけど皆で音を楽しんでいる感じが心地よい、音楽って楽しいなと心から思えるライブだったように思います。

そして、元気さとかフレッシュさとかそういう陽性さで押すのではなくて、ネガティブで内向きでちょっとこじれた感じのする人が、それでもどうしようもなくこの場で私を見てと表現することしかできない時に、あのすごくニュートラル分島花音だけの音楽が立ち上がってくる感じが好き。刺さるというか響くというか、なんだか救われる感じがするのです。『RIGHT LIGHT RISE』でよくわからないけど泣いてたし、『ツキナミ』でも泣いてたし、『Unbalance by Me』もめっちゃ泣いてた。

ライブってとにかくアガって騒いで楽しい! というものもあれば、エンタメショーとしての完成度でぶん殴られることもあり、はたまたこの人を応援して行先を一緒に見るんだと思うこともあり、色々な楽しみ方をできるものだと思います。ただその中でもこの人のライブは、すごく個人的に、これは私のための音楽だって思わせてくれるライブで、それは特別なんだと改めて感じました。

分島花音という人はシンガーソングライターチェロ弾きでイラストも描けて衣装デザインもして、本当に表現の才能に溢れた人だなあと思うのですが、そんな人でも経歴的にここまで紆余曲折あって、ここ数年アニソンを手がけ始めたというところ。それでこの人は、アニメ用に考えて生み出す「脳の音楽」と衝動で生まれる「心臓音楽」という言い方をするのですが、それが周りからはどうもとてもアンバランスものに見えているっぽくて、というところからの『Unbalance by Me』ということのようで。

確かにイメージ的にこれだけアーティスティック自己表現の強いタイプの人が、アニメタイアップだとあれだけきっちり作品世界観に合わせてアニソンらしいものを出してくるのが不思議といえば不思議ではあったのです。アニサマみたいなところでも、「アニソンシンガー分島花音」をきっちり作っている感じが少し無理しているようにも見えて、大きな舞台よりも小さいライブハウスのパーソナルな表現が似合う人なんじゃないかなと思うこともあったり。

ただ、今回のライブを見て、本人が言うようにやっぱりそこは全部ひっくるめて、分島花音表現するもの分島花音表現なのだと思いました。見ているこちらが勝手にこっちの方が、あっちの方がと思っていただけで、アニソンフェスで歌ったことも、ライブハウスでの表現も、脳の音楽も、心臓音楽も、そこに何一つ嘘はなく。

それでその『Unbalance by Me』という曲で

あなたを崩したいの/あなたを動かしたいの/あなたわたしのバランスの行方にさせて」

あなたが謳えるように/あなたと歌えるように/この光景世界の真ん中にしたいんだ」

と歌われたらそれはもう、ねえ。

16/06/19

砕け散るところを見せてあげる / 竹宮ゆゆこ

救いの手すら拒絶する、虐めても良い変わり者だとクラス空気の中でなっていた少女を、受験を控えた残り少ない学校生活の中でも、どうしても放っておけなかった少年彼女ヒーローになろうとした少年と、彼との出会いで諦めることをやめた少女が虐めに立ち向かう物語は、いつしか彼女を虐げていたもっと大きな事実に行き当たって。

アップテンポキャラクターの掛け合いと動き出したら止まらない物語はこれまでの作品でもあった竹宮ゆゆこらしさで、理屈を超えたその先のドライブ感が圧倒的。ですが、今回はそれが向かう方向がとにかく辛い向きになることが序盤から見えてしまうので、読み進めるのに苦しいものがありました。ああこれはダメだと思っても、振り落とされないようについていくのがやっとのような。

二人はまだ子供で、手の届かない敵がいて、それをUFOだと呼びます。それを撃ち落とそうと奮闘して、これ以上はというボーダーを分かっていても踏み越えて、それでもまたUFOはついてまわる。どうしようもないと分かっていても、計算妥協もなく立ち向かうのはなぜか。

まあ理由なんて、救いたいと彼が思ったからで、彼女笑顔を彼が見たかたからで、彼女がそれを信じて行き詰まっていたところから足を踏み出す勇気を出したから。だからやっぱりこれは、愛の話でしかない訳で。

帯でも少し匂わされているのですが、この作品には構造上に大きな仕掛けがあります。それは物語のものをひっくり返すようなものではなく、撃ち落とせたかどうかで終わらせないためのものだったのだと思います。どうしようもないはどうしようもなくても、それは単に失敗で終わるものではない。愚かであってもそれが愛であるならば、それは誰かの心に残ってずっと繋がって、その人が走りだすための力になるのだと、そういう物語だったのだと思いました。

16/06/14

一家に一人千尋くんの時代が望まれます

少年メイド1〜9 / 乙橘

少年メイド 1 (B's-LOG COMICS)

少年メイド 1 (B's-LOG COMICS)

かわいい、みんな良い子、やさしい世界。つまり尊い。

アニメを毎週尊い尊いと言いながら見ていたので、これは原作も読まねばとまとめ買いをしました。いやしかし原作も尊い。

本家から勘当されたシングルマザーの母と二人暮らし少年小宮千尋。貧乏ながらに幸せ生活を送っていたものの、無理な生活が祟ったのか母が急に倒れて、そのまま亡くなって……という重たい導入から始まる物語。幼くして天涯孤独の身となった千尋ですが、叔父である衣装デザイナー鷹取円に引き取られることになり、始めは嫌がっていたものの、脳天気な母の働かざるもの食うべからずの遺言に従って、家事一切を引き受けることで家に住まうことに。ということで少年メイド爆誕(メイド衣装は円作)。

設定が設定だけに千尋が立ち直るまでに暗くなったり、本家との確執で重くなったりしそうなのですが、そこは匂わせつつも持ち前の前向きさで明るく描いていくのが良いのです。偏執的に掃除大好き家事万能な千尋の周りの人々も個性的で、人見知りで家事ダメダメだけどデザイナーとしては天才な円に、しっかり者で円の秘書である桂一郎。元円許嫁で桂一郎のことが好きな美耶子、クラスメイト日野めっちゃ良い奴)とその家族たち。円が衣装を作っているアイドル有頂天ボーイズ。それぞれにアクが強い面々でありながら、とにかく徹底して悪人がいない。大人子供も老若男女問わずかわいいですし、特に政宗くんや花ちゃんと言った子どもたちの邪気の無さったらこれが天使か。

世間からちょっと外れていながらも、人の縁に恵まれて前を向いて何気ない日々を生きていく、この優しさ、温かさが、本当にこういうのに弱くてちょいちょい涙腺にくるものがありました。何でも自分でやろう、人に迷惑をかけてはいけないと思っていた千尋が少しずつ周りの人たちに頼っていく様子、排他的に生きてきた円が千尋を通じていろいろな人と関わりを持つ様子。そういう、家族ではなかった人たちに擬似家族的な絆が生まれて彼らが変わっていくという話にも本当に弱くて……。

祖母ちゃんと円の関係だったり、まだまだ火種もあるお話ではありますが、ただこの子であればきっと良い未来が待っているんじゃないかと、そんなふうに思える作品です。