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FULL MOON PRAYER このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

16/09/27

恋は光 5 / 秋★枝

恋は光 5 (ヤングジャンプコミックス)

恋は光 5 (ヤングジャンプコミックス)

ずっと愛おしくも何だか面倒くさい人たちだなあとこの恋模様を見ていたのですけど、ここにきてぐっと踏み込んできたというか、核心に迫ってきたという感じ。なるほどあの迂遠さは、恋をテーマにずっと置きながら誰もその中心に触れようとしなかったからなんだろうなあと。

それがこの巻では、宿木さんの恋愛テクニックだとか、北代さんの処世術だとか、東雲さんの理屈が先行するところとか、そういうそれぞれが作っていた壁が破れたり破ったりして、そこに触れようとしているという感じがありました。そうなってくるとやっぱり一気に感情が流れていく訳でそれが凄い。宿木さんの西条に本気であるが故に手練手管でどうにもできなくなっていく行き詰まり方とか、いやなんかもう秋★枝作品やっぱり良いなあと思いました。あと北代さんが相変わらず切ない。「私じゃダメかい?」ってどれだけの覚悟があったのかと! それなのに!

そして、もうひとりの光が見える人として登場した女子高生の方はなんだか別の百合マンガが始まっていてこちらも目が離せない展開に。母から一方的で過剰な愛情が嫌になっていた彼女は、人気があるけど好きになられても他人に興味ないという先輩に余計に惹かれていきという話なのですが、そんな彼女が先輩に向ける愛がまさに無償の悪意ない重い愛情で、それって母親に向けられてるのと同種だよ……! っていう。

そんなこんなでクライマックスが近づいてきている感じの杜が上がり方をしてきた巻。それぞれの恋模様に、どうも無償の愛っぽいものの感じのしてきた光の謎も含め、続きが楽しみです。

16/09/23

りゅうおうのおしごと! 4 / 白鳥士郎

そうだ。みんな見てくれ。

寒気がするほど愛しい俺の弟子を。

魂が震えるほど熱い、俺の弟子を!!

いや本当にゾクゾクする熱さでした。

将棋が分かればもっと面白いだろうとは思うのですが、将棋の中身がわからなくてもやっぱり面白いこのシリーズ。それはやっぱりこの作品が、勝負世界とそこに生きる人たちの物語であり、師弟愛の物語からだと思います。

マイナビ女子オープンというプロアマ混合の最大の女流棋戦で、あいが天衣が、そして桂香がどう闘うのか。それぞれの物語がそれぞれに熱く、中でもやっぱりあいvs祭神の一戦が凄かったです。初めての大きな大会で存分に見せつけられてきた、この幼い才能がどれほどのものか。破格の才能を持つ異端者と対等に張り合う姿の凄み。いやなんというか、このシリーズを読んでいて初めてあいが怖いと思いました。そして明らかになる、彼女が何のためにそこまで勝負に徹して頑張ってきたのか。本当に勝負に熱く、人の繋がりで泣かせる物語だなあと思います。

それからそんな若く大きな才能とは対極にある、前の巻から続く桂香さんの最後のあがき。自分より実力のある人に当たり続けてボロボロで、この先の見通しなんかなくて、それでも降りる訳にはいかない。厳しい勝負世界土俵際で、かつての仲間の振り落としながらももがく姿もまた苦しくも熱いものがありました。

そして対戦相手になる他のキャラクターたちも、濃いけれどその生き様が印象的な人たちばかりで。特に解説などでアイドル的な人気を誇る女流棋士である鹿路庭さんが、どうして研究会クラッシャーとまで言われるようになったのか、読んでいての想像を鮮やかに裏切られる天衣戦も良かったです。ああ、この人も才能と実力というもの残酷存在する世界の中で、将棋に魅入られた勝負師なんだなあと。

そして、あいたちの物語を描くのであれば、その舞台となる女流棋士世界に触れないわけにはいかず。それを語る女流名跡の『晒し者』という言葉が、女性への将棋普及のために設けられ、奨励会員やアマチュア強豪よりも弱いことがある女流棋士立ち位置を示しながら、だからこそ持つべきプライドが語られ、それと相反する存在としての祭神にこれから羽ばたこうとしているあいが対局するというこのドラマがまた。

話が広がって主役級が増える分少し散らかった印象があったり、相変わらずコメディパートロリコン竜王JSネタに偏り過ぎじゃないかと思ったりもするのですが、そんなことはどうでも良くなるような熱い闘いを見せてくれた一冊。次の巻はついに八一の正念場。愛弟子のこんな姿を見せられて、無様な姿は見せられないだろうと期待しています。

それから、もちろん将棋弟子が最優先なのはわかりつつも、八一はもう少し姉弟子に気を向けてあげた方が……。だんだん読んでいて可哀想になってきたんですが。

16/09/13

アイドルマスターシンデレラガールズ WILD WIND GIRL 1 / バンダイナムコエンターテインメント・迫ミサキ

アイドルマスター月刊少年チャンピオンという異文化大陸暴走族アイドル向井拓海が橋渡しした鬼子みたいな作品なのですが、これがどうしてド王道を行く物語になっていて面白いです。ヤンキーアイドルってもしかして非常に親和性が高いのでは。というか大体似たようなものなのでは。

時代錯誤暴走族特攻隊長をやっていた拓海が子猫絡みというまたベタなあれでひょんなことから関わることになったアイドル世界最初アイドル世界をヒラヒラチャラチャラした格好をして、変なことして笑いものになるような仕事だとバカにしていた拓海ですが、穴埋めで参加した最初仕事ステージサイドから見たライブ熱量が忘れられず、プロデューサー挑発にも血の気の多い性格からまんまとのっかり、そのままずるずると仕事をするような形に。ただ、それもどこか中途半端というか、同僚アイドル仕事潰した分のケツ持ちだとかなんやかんや理由をつけていつでも手を抜けるような姿勢で。

けれど、同僚の藤本里奈の前向きな姿勢だったり、一緒に仕事した年少アイドル組のプロ仕事だったり、そういうものを見たところに、プロデューサーから逃げるのかと煽られ、走ることは楽しいけれどその先にやりたいことがあるわけでなかった拓海がアイドルとして天下とったると腹を決めるところまでがこの巻。まさに王道というか何というか。

どう見てもチンピラクズなんだけど割とやるときゃやるっぽいPと、喧嘩っ早く血の気が多いアイドルの組み合わせは、顔を合わせば怒鳴りあうわ拓海の方がすぐに手を出すわでアイドルとはみたいな気分にもなりますが、これがまた中々いいコンビでそういう面でもこれからに期待。あと土方系ギャルアイドルというデレマス本当になんでもありだなの実例の1人な藤本里奈がこんなに良いキャラしていたのかとびっくりしました。もはやギャル言葉ですら無いあの口調でゆるゆるそうに見えて自分は頭悪いと言いながらも、自分のやりたいこと、そのために必要なこと、やられたくないことに対してしっかり芯があって裏表なく前向きっていうのはなかなか格好いいなと思いました。

そんな感じに、塩梅良くオラついた感じがとても読んでいて気持ち良いものがあるマンガでした。意外というか必然というか、なんやかんや生まれるべくして生まれた、みたいな感じ。これは次巻も楽しみです。

16/09/10

東京レイヴンズ EX4 / あざの耕平

ブルーレイ特典だった大友鈴鹿の話に、十二神将たちそれぞれの掌編を加えた短編集。

鈴鹿の話であるlost-girl with cat」は本当に好きで鈴鹿の魅力がよく出た話だったと思うので、こうやって短編集に収録されて良かったです。そして大友の話も片足を失った黒子時代最後最初芦屋道満戦というまた美味しい話を特典につけていたのだなあと。

他の十二神将たちの物語も掌編ながらそれぞれの個性や魅力がきっちり出ていて、本編ではメインどころには来ない彼ら彼女らですが、それぞれに主役級のポテンシャルを持っているのだなと思いました。本編だけでも今大変なことになっているところではありますが、こんなものを読まされたら、十二神将スピンオフもっと書いてくれないかな、でも本編の続きも早く読みたいなと贅沢な希望を抱きたくなるゆな一冊でした。良いものだった。

16/09/08

スペース金融道 / 宮内悠介

スペース金融道

スペース金融道

人類最初移住成功した惑星である二番街を舞台に、審査は緩いが金利は高いヤミ金業者の二人組が主にアンドロイド債権者を「宇宙だろうと深海だろうと核融合炉内だろうと零下190度の惑星だろうと」取り立てるSFコメディ連作短編

量子経済学なんや経済理論アンドロイドや人あらぬものたちと人類共生といった何だか難しげなSF要素もありつつ、ぶっ飛んだアイデアと斜め上の展開とぼくと上司であるユーセフの関係面白さがコメディしていて楽しい一冊でした。まあ、小難しいところは賢い人の考えることはようわからんと思って読んでいれば、主人公であるぼくもさっぱりわからんと反応してくれるので問題ない……はず。まあ、たいていその後にユーセフに馬鹿にされ扱き下ろされるわけですが。

取り立てのためならその無闇に高いスペックを使ってなんだってするユーセフが、命の危険迷惑ごともガンガンぼくに投げつけつつ前に進んでいくのですが、たまに優しさを見せるような、見せないような、抱えた過去の傷を見せるような、見せないようなその絶妙なバランスと。罵倒されひどい目にあい文句を言いながら、なんだかんだでユーセフを信頼してるような気がしなくもないぼくの関係も良かったです。意外とちゃっかりしていたり、その割に面倒事にあっていたり、自己評価高くないけどなんだかんだとんでもない能力持ってるよねというところだったり、破茶目茶なのに嫌な感じがなくて良い感じ。

投げ込まれる経済アンドロイドとなんかそれ以外のアイデアの数々は、斜め上へと展開を持っていくのですが、ただとにかく勢いでというよりはしっかり計算された上で斜め上へ伸びているといった印象。それにしたってコンピュータ内の人工生命への金の貸付からその世界ダイブした上で最後地獄に向かったり、アンドロイドたちのカジノ船で紙切れ(保証がないほど金融商品としては良い……らしい)で作った新通貨経済的狂乱を巻き起こしたり、寄生虫脳内で話しかけられてたらナノマシン世界危機だったりとなかなかぶっ飛んだ話ばかりだったと思います。でもこの作者が書くと何か凄く頭のいい、高尚っぽい雰囲気を受けるのは単に私が馬鹿なのか。

あとは、アンドロイド関連の話に感じる、人間に対する信頼というか愛着というか、なにか断ち切れない感傷みたいなものが印象的でした。合理性に偏らないための経験主義原則アンドロイド無意識として位置づけられた、人間ネットワーク。そこに接続を許されないアンドロイドたちの暗黒網。突き詰めて突き詰めていくことへのブレーキと、突き詰めきった先に何があるのかは、ユーセフの金融への考え方もアンドロイド理想オーバーラップする部分があって。最後の「スペース決算期」でのゲベイェフの辿った結末は、その辺りも相まって良い悪いではなくて、なにかすごくセンチメンタルものを感じました。

その一編は特に顕著ではありましたが、作品全体としても荒唐無稽やことをやる中で、そういう質感というか手触りがちょくちょくと顔を出す、そういうところが特徴的な一冊だったと思います。