13-1-13

去年の12月頃にhontoで1万円に届かせるためにおすすめマンガをTwitterで聞いたら沢山帰ってきて買ったはいいけど積んでいたものがあったのですが、それがようやく読み終わったので感想を一気更新。新春1巻祭り。おすすめされたのがほとんどだけあってどれも面白かったのですが、どれも面白いと今度は2巻積読祭りが始まる可能性……が……。

スピリットサークル 1 / 水上悟志

スピリットサークル 01―魂環 (ヤングキングコミックス)

スピリットサークル 01―魂環 (ヤングキングコミックス)

転校生の少女に突然「生まれ変わりって信じる?」と聞かれて殴られた、中学二年生の風太。そこから始まる、7回の生まれ変わりを巡る物語。極普通の中学生である風太にとって理不尽でしか無い鉱子の言葉と行動。けれど見てしまった最初の生、見えてしまった謎の存在。憎まれる云われがないと思っていたところから、どうしてそんなにも憎まれるのかを解き明かすかのように追体験する前世の記憶。それ自体も物語として面白いのですが、繰り返し姿を変え登場する人物たちの間で、ゆっくりと確実に因果が束ねられて太くなっていく様子が面白いです。まだ触りだけでも、どうしようもなく繰り返す何か、でることは凄く伝わってくるかのようで。たぶんそれが、現世での二人の間の認識の圧倒的な溝を作る何かでもあって。
どうしようもない繰り返しの果てに出口があるのか、この生もまた死を持って次の生に続くだけなのか、そして語らないイーストとルンは何者なのか、たくさんの謎を抱えたまま、まずは物語は動き出したという感じ。そのトリッキーな語り口に非常に惹きつけられる、続きが非常に楽しみな作品です。面白かった!

月刊少女野崎くん 1 / 椿いづみ

月刊少女野崎くん(1) (ガンガンコミックスONLINE)

月刊少女野崎くん(1) (ガンガンコミックスONLINE)

これはめちゃくちゃ面白かった!
野崎くんに告白したはずが、実は野崎くんが人気少女漫画家の夢野咲子で勘違いからサインを貰って気がつけばアシスタントになってたという、思わずあのAAを貼りたくなる程度には何を言ってるかわからない経緯をたどった佐倉さんをツッコミ役とした4コマギャグ。どこまでいっても決してヒロインではなくてツッコミ役な辺りが悲しいですが、そんな佐倉さんの妙に適応力の高い現実的な感じが作品に安定感を与えているのだと思います、たぶん。そしてそんな野崎くんを中心に濃いキャラクターが大量投入され、そして何より思わず声を上げて笑ってしまうギャグのキレの良さが素晴らしい高値安定な4コママンガでした。女子たちの男らしさと男子、というかみこりんの乙女らしさにも笑います。

ぼくらのへんたい 1 / ふみふみこ

ぼくらのへんたい(1) (リュウコミックス)

ぼくらのへんたい(1) (リュウコミックス)

SNSのオフ会で出会った3人の少年。3者3様の理由で女装をする思春期の彼らの、理由。性同一性障害も愛情によるものも求められた役割もあって、そんな彼らの背負ったものは小さくても重たくて、だからマイノリティな彼らがここで出会ったことにきっと意味がある。そんな、危うくて、触れれば壊れそうで、きっと触れなくても壊れてしまうそんな瞬間を切り取ったような一冊でした。作品としては言葉少なで、もっと踏み込んでもいいんじゃないかとも思ったのですが、語らないからこその何かがこの先もっと読めればいいなとも。並んだ3人の美しさには、ぞくっとするものがありました。

魔法少女まどか☆マギカ ~The different story~ 上 / ハノカゲ

魔法少女まどか☆マギカ ~The different story~ (上) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

魔法少女まどか☆マギカ ~The different story~ (上) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

何回目のループなのか、マミさんと杏子が早い段階で友だちになるという公式スピンオフ作品。原作では描かれなかった、魔法少女としての杏子の活躍と原作では語られるだけだった杏子の家族の破綻がきちんとフォローされているので、杏子好きにはたまらない一冊でした。魔法少女としての杏子の願いと絶望自体が、きちんと描かれているのが良い感じです。この願いでこの性格で、それがこうなってしまえばさやかのことを見てられないのも当然だよなあと。そして原作ではなかった杏子とマミの関係もなんだか新しくて良かったです。二人が出会っていたらなるほどこうなるのかと思える良いスピンオフでした。早く続きも買って読まないと。あと、作者の人が前回のコミカライズと比べて見せ方や動きが凄く上手くなっていてちょっとびっくり。

ひみつの悪魔ちゃん 新装版 1 / ゑむ

恐るべしわぁい!コミックス……な男の娘マンガ。淫魔を召喚しようとした男子高校生の総の元に現れたのは、淫魔は淫魔でも男の娘だったのです! というお話。テンション高めの押しかけ系ドタバタ微エロコメなのですが、どう見ても可愛い女の子のようで男という淫魔小紅の設定で何か別のものになっているというか、ちゃんと男なんだけど絵的には非常に可愛いので色々幻惑されて危ないです。そして確実に小紅に篭絡されつつある総の明日はどっちだ、いやでも可愛ければ問題ないんじゃないか的な何か。小紅の普通の女の子……ではなくて男の娘なところと悪魔的な顔の二面性とか幼馴染のシスターとか、話を面白くする要素もあってひとまず楽しく読めるので、続きも買ってこようかなと思います。「プラナス・ガール」が好きな人がさらに一歩魔境に踏み入れるのにもおすすめな感じ。

パンクかあさんとロリータ娘 1 / 阿部川キネコ

パンクかあさんとロリータむすめ。(1) (アクションコミックス)

パンクかあさんとロリータむすめ。(1) (アクションコミックス)

パンクをこよなく愛して生きてきた母親の娘は、その反動からかある日ロリータを着たいと言い出したのでした、な4コママンガ。水と油に相容れない趣味趣向な二人なのに、何だかんだでちゃんと母娘していて、実のところ仲はいいみたいな日常が面白かったです。好きではないし理解はできないけれど、それで相手を否定することはなくて共存している感じが凄く良いなと。そして脇役も大阪センスバリバリの父に、乙女チックだけどやっぱり男子なマコちゃんだったり、圧倒的パンク魂と謎の経歴と技能を持って圧倒するマコママと個性豊か。特に、マコママのこの人何者なんだ……感が好きです。いつでも自分を貫き通す人に圧倒的な能力が伴った結果、みたいな。

俺物語!! 1 / 河原和音・アルコ

俺物語!! 1 (マーガレットコミックス)

俺物語!! 1 (マーガレットコミックス)

バリバリの少女マンガちっくな素敵な恋の物語に、圧倒的異物を混入したら何故か凄く面白いものが出来上がったような何か。表紙からその存在感を主張し過ぎな両津勘吉に似ている主人公猛男を主役に繰り広げられる少女マンガ時空がなんとも言えない笑いを提供してくれる出オチ系作品のようでいて、読み進めるごとにこの猛男がいい男過ぎて好きになっていくという魔法の一冊でした。ちょっと鈍感でズレてるけれど好きになった人のためにこれだけ行動ができる猛男は本気で良い男、というか漢。そして猛男が好きになった子は皆惚れたという友人砂川も、これがまた友情に厚い良いイケメンで、猛男と運命の出会いを果たすヒロインの大和も非常に良い子で、なんだかこの3人を中心にドタバタする恋模様は読んでいて清々しく明るい気分になれる、とても良いマンガでした。面白かった!

四月は君の嘘 1 / 新川直司

四月は君の嘘(1) (講談社コミックス月刊マガジン)

四月は君の嘘(1) (講談社コミックス月刊マガジン)

ピアノを弾けなくなった天才少年が、奔放なヴァイオリニストの少女と出会う物語。
重すぎる母親の期待を一身に受けて、それでも天才の呼び声をほしいままにしていた幼少期。在る時、突然奪われたピアノの音、弾けなくなった自分。それを引きずりながら過ごしてきた中学生の公生が出会ったのが、ヴァイオリニストの少女、宮園かをり。正しさを求められるコンクールで、楽しく自分の演奏をしてしまうような彼女に引っ張られるように、彼の歯車がまた回り始めて、という導入に当たる一巻ですが、これが非常に良かったです。背負ったものも、抱え込んだものもたくさんありそうで、けれど作品としては必要以上の影がない、ここからもう一度、しっかりと前に進んでいくこの感じ。そして音楽と青春とボーイ・ミーツ・ガール。すっきりとして魅力的な絵。ちょっと話が唐突に感じるところもあったのですが、それがどうでも良くなるくらいに魅力に溢れた一冊でした。早く続きを買ってこないと……。

断裁分離のクライムエッジ 1 / 緋鍵龍彦

アニメ化ということで前々から気になっていたシリーズの1巻を。
殺人鬼の血を引く子どもたちが、「殺害遺品」をもって闘うという異能バトルマンガ、なのですがそれ以上に炸裂する変態性にぶっ飛ぶような作品でした。へんたいだー。
女の子の髪を切ることが好きな少年と、切れない髪を持つ少女の出会いが生んだ二人の関係が、なんというか、髪切フェチという恐らく開けるべきではない扉の向こう側に羽ばたきそうで大変に危ないです。髪を切っているシーンがどう見てもそれなエロさだったり、裸よりも髪だったり、いちいち変態性が高くってもう。どこまでも軽くタガが外れた血飛沫の舞う異能バトルの暴走スレスレな勢いといい、ただのバトルマンガではない何かがあると思わせてくれるに十分な1巻ではありました。しかしこれ、本当にアニメ化……?

マギ 1 / 大高忍

マギ 1 (少年サンデーコミックス)

マギ 1 (少年サンデーコミックス)

さあここから壮大な少年マンガのファンタジーが始まるんだという、期待感と志の高さを感じさせてくれるような一巻でした。砂漠の国で不思議な力を使う少年アラジンと荷引きの運転手をしていた少年アリババは出会ってという話。奴隷制度が残るような国で割とシビアな現実を見せながらも、シンプルに理不尽を否定して目の前の子どもを助けようとする正しさが、この作品の中でどこに向かっていくんだろうなと思いました。あと、プロローグに当たるライラの話が凄く良かったです。ここで描かれている、友だちというものの素晴らしさと、人はやり直せるんだということが、この作品のとって大事なものになっていくののかなと。

ハイスコアガール 1 / 押切蓮介

時は1991年、ストⅡ旋風の吹き荒れた時代のゲームセンターで、学校では何をやってもうまくいかない小学生の少年と、場違いなはずのお嬢様が出会うお話。ろくでもない少年と、美人で清楚な(というか喋らない)少女という、接点なの無さそうな二人を、ゲームへの想いが、ゲーセンという場がだんだんと繋いでいって。表情すらほとんど変わらない大野の行動と、口では文句ばかり言っているハルオから、それでもだんだんと近くなる二人の距離が感じられ、遊園地の話があって、そして最後のシーンに、ためてためてこう来るか! みたいな感じでやられました。正直ゲーセン文化もレトロゲームもあまりよく知らない部分があって、そういう意味で楽しみ切れていないとは思うのですが、それを差し引いても良いものだったと思います。

ハレルヤオーバードライブ! 1 / 高田康太郎

ハレルヤオーバードライブ! 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

ハレルヤオーバードライブ! 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

ごちゃごちゃと御託を並べるのではなくて、女の子のために始まるギター。学校の抑圧に抗っいながら潜伏するように活動する金属理化学研究部(メタりか)。そして、バンド、誰よりも楽しそうにドラムを叩く先輩、合わさって一つになった時に垣間見る、音楽の魔法。もう本当に少年マンガでバンドで青春で、なんかいいなあと思わせてくれる一冊でした。ちょっと主人公の小雨のアホさ加減と永続的ハイテンションが個人的に苦手な部分があるのですが、それでもこのテンションだからこそ自然にこのライブの描写に入れて、そこでなにか特別なものがあると思わせてくれるんだろうなと。というか、バンドシーンの皆が魅力的で凄いなあと。こんな顔してドラム叩かれたらそりゃあハル先輩に惚れるよなあと思って、やっぱり正しく少年マンガしていると思うのでした。