まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

電波女と青春男(8)

電波女と青春男〈8〉 (電撃文庫)

電波女と青春男〈8〉 (電撃文庫)

  • ストーリー

何の前触れもなく、真とエリオの前にリトルスマキンが襲来した。
元祖スマキンでさえたじたじの電波っぷりに、真の日常はまたも振り回されることに。
リトルスマキンに感化されたらしいエリオは、宇宙飛行士を本気で目指すと言い出して……。


アニメ放映直前でなんと最終回を迎えてしまいました。
予想よりもずいぶん早い終わりでしたが、そんな天邪鬼なところもこの作品らしくていいんじゃないかなと思います。


ここにきて新たな宇宙人(?)、リトルスマキンが登場。
元祖スマキンに比べてよく動く、器用、意思伝達は全て筆談、と全体的にグレードアップ。
中身を絶対に見せないところも元祖とは違うところで、そもそも性別さえ分かりません。
電波もここまで来ちゃったか……という感じですが、こんな不可思議キャラを平然と受け入れて日常を送ってしまう真さんはさすがの上級者ですね!
もっとも、リュウシさんも前川さんもいたって普通に接してますけど。慣れって怖い。
ヤシロ? 女々さん? いや、彼女たちは宇宙人ですから。つくづく宇宙人の多い町ですねえ。女々さんはもっと違う何かのような気もしますけど。


新しいスマキンの登場によって改めて気付かされるのが、エリオの成長です。
こんな「宇宙人」だったエリオが、布団なしで外を歩いて、友達と電話して喋って遊んで、遂に将来の夢まで追いかけ始めてしまいました。
中でも驚かされたのは、エリオがリトルスマキンを諭す場面。
常識知らずで、真に頼ってばかりだったはずのエリオが、あの鮮烈な経験から彼女が得たことを、彼女なりの言葉にして伝えようとしている。
それはまるで過去の自分に語りかけるようでもあって、彼女が本当に電波女から脱却しているのだ、もう戻る気はないのだということをしっかりと感じさせてくれました。
スマキンをやめてすぐの頃の、何かあったらすぐに崩れてしまいそうな弱々しい姿とはまた違う、力強いその姿。
道のりはまだまだ遠いけれど、決して届かない夢ではありません。今のエリオなら、きっと。


一方の青春男は、最後まで青春真っ盛り。まさかまたやらかすとはね。
思わず笑ってしまいますが、何度目だろうと気分は爽快です。ちょっとやりたくなってくるから困る。
なんだかんだ言いつつもとことん付き合ってやるのが真の凄いところだと思います。
一般的な青春とはとても言えないけれど、この有り余る活力とぶっ飛んだ無茶を見ていると、やっぱり青春ということばがしっくりくる。これでこそ青春男というものです。
エリオにリュウシさんに前川さん、ヤシロに(一応)女々さんと、魅力的かつマッドなヒロインたちに囲まれて、真がこれからどんな選択をしていくのか興味は尽きませんが、ここで終わっておくのが美しいのかもしれません。
なぜならこの物語は、青春という刹那を超えて、果てしなく広がる未来を描いているから。


ちょっと不思議で、みずみずしく、どこまでもきらきらと輝く作品でした。出会えて良かった。
入間先生、ブリキさん、全ての登場人物たちに、ありがとう。
終わりと言いながらまだ1冊残っていますが、そちらもすぐに読みたいと思います。