特報・古池嘉和さんの観光振興論〜その2〜

長浜

 これらに対して、古池さんが厳しい目で見るのは長浜だ。
 長浜の成功は疑いえない。しかしそれはテーマパークとしての成功ではないかと指摘する。なぜなら黒壁スクエアの周辺に同種の店舗を誘致することで、スクエアの内部と外部を切り分け、空間を洗練することで、お洒落な消費空間化し、単一的な文化コードで覆い尽くしているからだ、という。
 ガラス細工やオルゴール、フィギュアなどの消費空間に純化した観光商業的な空間へ装いを変えていくことをもって、即座に「観光まちづくり」の成功モデルというには、やや異和感があるとされている。


 この点は『創造都市への観光振興』を書かれた宗田好史さんと真逆の評価だと思う。
 宗田さんは「実際は、ムラーノボヘミアのガラス細工を仕入れて並べただけの店だが、大成功した。小洒落た商品と小綺麗な店の組合せが肝心」「多くの観光客は、何の縁もない長浜とガラス細工が伝統的で素敵な組合せだと思っている」としている。


 宗田さんは消費者の心を捕まえるサービス技術に創造性を見るが、古池さんは消費空間に純化と見る。宗田さんは古い建物の雰囲気を活かすことを創造性と見るが、古池さんは歴史や文化とのせめぎ合いがないと見る。
 ただし両者とも、プラチナプラザなど周辺の動きの今後を期待している。


 笹原司朗さんと一度だけお話したことがあるが、2つ印象に残っている。
 一つは、長浜市民の商店街としての再生ができていない。それが課題だと言われたこと。
 二つは、ものすごい数の視察団が来て感心して帰るが、帰ってから長浜のような取り組みができたところは皆無だと言われたこと。
 笹原さんは笹原さんで、きちんと問題を認識され、それでも自分たちの独創性に誇りを持っていた。

本書の全体構成

 本書は、実はもう一つ、観光都市の空間概念として、「疑似イベント空間」「生活空間」「異種混交的な場」を提示し、三者を橋渡しするものとのして、アートの可能性を追求している。
 乞うご期待。

主要目次(仮)

  はじめに
 序章
 1章 商店街〜それはテーマパークか生活世界か(長浜と彦根
 2章 アートツーリズム〜異種混交する生活世界(別府と湯布院)
 3章 創造性と観光〜生活世界の中の小芸術(多治見、益子、常滑、ファェンツア)
 4章 都市/農村〜交流と連携の舞台へ(足助町高山市
 終章



○関連情報
古池嘉和さん出版記念セミナー(2011.01.14、京都)
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1101koike/index.htm


古池嘉和氏インタビュー
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/010koike/index.htm


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宗田好史著『創造都市のための観光振興