- 作者: 三浦展
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/12
- メディア: 新書
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大型商業施設の急増によって、本来固有の歴史と自然を持っていた地方の風土が、まるでファストフードのように均質なものになってしまうというのが、この本を貫いている問題意識だ。
ブルックリン大学の社会学者シャロン・ズーキン教授の説明を次のように引用する。
p91:大型店が増えて地元の小さな商店が減ることは、個人化、低賃金、地域のアイデンティティがなくなること。
p93「地域のアイデンティティがなくなることは、人生の意味の喪失につながる。地域がずっと同じように存在しているということは、人間が人生の連促成を感じられるということだ。同じ場所にいて、同じ人と会って、同じ店に行く。そういう暮らしがなくなるということは、自分自身を見失うということになる」
著者は、あとがきで、「下流社会化とファスト風土化は実は同じグローバリゼーションの断面の違いだと、私自身、あらためて気がついた。グローバリゼーションが与えた影響と経済、雇用、価値観などの側面から切り取ったの概念が下流社会であり、地域社会の変化という側面から切り取ったのがファスト風土化といえる」(p238)とまとめているが、だとすれば、どうすればいいのか。
この本で、宮本冬子氏が、反グローバル化の理論武装として、ナオミ・クラインの『ブランドなんか、いらない』を紹介し、大競争時代に大企業が人件費抑制を図っていく構図を見せ、鳥海基樹氏が建築家ダヴィッド・マンジャンの都市計画の構想から、中心市街地の商店街を保護し近郊大規模店舗を制限、街なか居住を進める三位一体の施策で、流れに抗している姿を提示している。
理論としてはわからないでもないし、下流社会がいいわけもない。ただ、大型商業施設や安い商品は好きだし、以前に比べて便利になったのではないかと思う。ロハス思考もそうあればとは思いつつ、昔には戻れないのではないかとも感じる。流れは流れとして、そこで救わなければいけない部分は何なのか、もう少し考察を進める必要があると考える。
{図書館から借り1/27読了、記入は30簡易第四弾}