読書録

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正義について考えよう 扶桑社新書 200 

正義について考えよう (扶桑社新書)

正義について考えよう (扶桑社新書)

 憲法9条をめぐる改憲の動きが具体化してくる中で、本書で展開される改憲やジャーナリズムやネットをめぐる議論は興味深い。


 団塊ジュニア世代の東浩紀氏は、「普通の日本語で言えば、自衛隊は戦力だ。学問の世界では自衛隊は戦力ではないということになっていて、たとえそれが正当だとしても、そういうことをやっていると憲法への信頼自体がなくなる」(2015/6/15)にツイートし、憲法は国民にわかる普通の日本語で書かれているべきで、9条を解釈すれば違憲という判断になるのに、戦後長い間積み重ねてきた憲法学の「専門的な解釈」なるものの蓄積が事態をねじ曲げているp19、「9条が好き」というのが、現実と建前は違う方が良いという発想にいってしまっていて、この国のゆがみを象徴しているように感じるp21、リベラルな立場からの改憲論が求められているという主張p25、団塊は心情左翼がすごく多いが、内田樹さんや高橋源一郎さん、上野千鶴子さんに続く人は下の世代にほとんどいないので退場すると、影響力は無くなるp37、としているが、今後を見据えた場合、説得力のある議論かも知れないと感じる。


 いまは、広告業界が消費者の欲望を一番よく捉えていて、大衆を意志通りに動かせるような時代ではありませんp111。

 ネットの普及によって、メディアは視聴者が読者が何を求めていたかすごく正確にわかるようになりp168、大衆というのは本来感情的で、排外主義的、差別主義的でもあり、攻撃的だったりもする。ネットはそれを一気に可視化してしまった…p170、いまのネットの状況だと、オープンでパブリックな議論をするのが難しい…p171、



発刊した扶桑社のサイト⇒ http://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594073725



 猪瀬直樹東京都知事も、このところはテレビでよく拝見するようになったが、かつての戦争を始めた分析から、「決断しなければ責任は問われないーという思考習慣」「リーダーシップ不在の集団無責任体制」p11の問題を指摘し、 日本が意志決定できないのは、政府と省庁が富士山の形ではなく八ヶ岳のようにいくつも横並びで存在していて、 統一した意思決定ができなくなっている からで、この「八ヶ岳状態」の解決p30が必要ということを、繰り返し主張しているのは、道路公団改革や都庁に入り実務を担当しただけに、説得力はある。


 悲観的な話が多い中で、猪瀬直樹氏の『救出』という本では、リーダーもビジョンも存在しない中で気仙沼の公民館に取り残された被災者446人が生き残った物語が描かれているとのことp136、これは是非読みたい。生活者それぞれが持ち場持ち場でできることを全力で発揮するということ、自ずからなる同調性のプラス面p148ということか。


{2018/1/3-8読了、記入は1/18木夜}