デイヴィッド・ピース「TOKYO YEAR ZERO」



TOKYO YEAR ZERO

TOKYO YEAR ZERO


1945年8月15日、東京、品川の軍需工場で女性の腐乱死体が発見された。そして1年後に発見される第二、第三の死体・・・。敗戦を機に解き放たれた殺人鬼。そいつは何者なのか?それを追う警察もまた、その内部に大いなる秘密を隠していた。

実在の連続殺人鬼・小平義雄の事件をモチーフに現代イギリス文学の旗手デイヴィッド・ピースが描く日本の「占領」とその闇。

戦慄の超大作<東京三部作>開幕!



すげぇ圧力感。そして酩酊感。


久々に文章読ンでて得体の知れぬプレッシャーを感じました。何つーか、素潜りしている状態に近いなこのトリップ感は。文章ってすげえぜ!と今更ながらに思わされた作品。というわけでデイヴィッド・ピースの東京三部作の開幕編であるところの「TOKYO YEAR ZERO」。既に世間では2作目「占領都市」が出ておりますが、もうすぐ文庫化するってのをキッカケに積みっぱなしであった本書を引っ張りだして読ンでみた次第であります。そして読ンでこの恐るべき内容に戦慄した次第でもあります。つーかこれならもっと早く読ンでりゃよかった。とてつもない本ですよこいつぁ。


何しろ戦後の闇というかですね、もうノワール顔負けの真っ黒、暗黒も暗黒、ダーク極まりない文学ですよ。そして恐るべき幻想小説でもあるのですよ。見よこの目眩くファンタジックな戦後の闇を。そしてこれほどの厚みがある話ながら(いや厚みがあるからこそ、か?)、きっちりミステリとして成立しているところがまた憎い。そしてそれらを効果的に活かすのが文章。短文を積み重ねるスタイルなのですが、その中にやたら強調されて繰り返され挿入されるフレーズがめっちゃ印象的。・・・まぁこれは中毒性があると言うか、受け入れにくい人には単に読みにくいだけな諸刃の剣と言えるのですが。京極とか好きな人なら問題なく読めると思うけど。


読ンでる最中は「これ翻訳作品?」というのを忘れてしまうくらいの恐るべき小説。さぁ皆もこの混沌とした戦後の東京世界に飛び込むがよいよいよい。いやマジで凄いよこれ。