債券って何?
さとり世代のさと子ちゃんが、経済の基礎の基礎から質問して、だんだんと日本経済のしくみを分かっていく、そんな会話シリーズを書いてみようと思いました。答えるのは、団塊ジュニア世代のてつ夫です。分かりやすくなるかな〜 (^_^;)
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第1回「債券って何?」
さと子:てつ夫さん、国債って何?「国の借金1000兆円」っていうやんか。
あれって、国債ちゅうやつかな?よく国債の値段が上がったり下がったりって言うやろ?借金の値段が上がったり下がったりて言われても、ぜんぜんわけわからんわ。
てつ夫:さと子ちゃん、国債っていうのは、国が借金したときに「お金を借りましたよ〜」って渡す借用書や。ちなみに、ここで言う「国」ちゅうのは、政府のことや。
借用書って分かるか?
お金貸した人がお金を返してもらうときに、借りたヤツに「お前、返せ」と言うやろ。でも借りたヤツが「オレ、借りてへん」ってごねたら困るよね。だから、借りたヤツから「私借りました。きちんと返します」っちゅう借金の証文を書いてもらうわけよ。
これを借用書って言うわけや。
さと子:でも、てつ夫さん、それが「上がったり、下がったり」とどう関係あんの? 借金は借金であって、その値段が上がったり下がったりするっちゅうのがよく分からんねん。
てつ夫:そうやな。そな、まず、「債券」の説明からしよか。さと子ちゃん、「債券」って知ってる?
さと子:いや、ようわからへん。
この間、大学の教養の授業で、民法の教科書を読んだら、お金を貸している人は「債権者」、お金を借りている人は「債務者」って書いてあった。それと関係ある?
お金を返してもらう権利を「債権」って言うみたいやけど、同じ「さいけん」って言葉で言っても、こっちは「券」っちゅう言葉を使ってる。
なんで、なんで?良くわからん。
てつ夫:ちょっと、例えて説明してみよか。さと子ちゃんが僕に1万円貸してくれたとするわな。僕はさと子ちゃんに「1万円借りました〜」ちゅう借用書を書くわけや。
借金を返す条件については、「1年後に5%の金利分500円を付けて、10500円を返します」という約束も書いとくわけやな。
さと子:うん、それで?
てつ夫:さと子ちゃんは、僕に1万円を貸してくれたわけやけど、その後、新しい彼氏ができて、デートの前にちょっと新しい服を買いたくなったとするわな。そうしたら、僕に何が言いたくない?
さと子:うん、「てつ夫さん、あの時に貸した1万円、返してくれへん?」って言うと思う。
てつ夫:でも僕の方は、「そんなん、1年後に5%の利子付けて返すって言うたやんか。急に言われても困るわ」ってことになるよね?
ふつう、借用書を書いてもらっても、借金を返してもらう期限が来ないと返してもらえんやろ。
さと子:そうやなあ、でも私はおしゃれしたいから1万円はすぐ返して欲しい。
てつ夫:でも、僕は帰せって言われても、手元に1万円がない。どうしようか?
さと子:うーん。あっ、例えば、わたしの親友のユウナに借用書を買ってもらうっていうのはどう? ユウナだったら、てつ夫さんのことを良く知っているし、てつ夫さんも実はユウナのことが好きやから、私よりもユウナにだったら「ちゃんと返さんとあかんなぁ」って思うでしょ?
てつ夫:(焦って)えっ、いつから気づいてたん!?なんでここでユウナさんが出てくんのや、、、
それはともかく、いいとこに気がついたな。さと子ちゃんは貸したお金を何とかして返してもらいたい、でも僕にはお金がない。だから、二人ともが良く知っていて二人ともが信用しているユウナさんが出てきたわけやな。
実は、政府が借金するときには、国債っちゅう政府からしてみたら借金の証文を発行するわけや。その国債っていうのが優れもんなんは、持っている人が自由に売買できるっちゅうことになっていること。
さと子ちゃんが僕に貸した1万円の借用書は、僕からしてみたら簡単に他の人に売られたら困る。だから僕だったら「売ってもらったら困る!」って文句を言うと思うけど、政府が国債を発行するときは、「自由に他の人にこの借金の証文を売ってくれてええよ」っちゅうことにしているわけや。
こういう「自由に誰にでも売ってええ借金の証文」のことを「債券」って言うわけや。
さと子:でも、てつ夫さん、何で「債券」って言葉には、「券」っていう言葉が使われてるん?
てつ夫:ええとこに気づいたな。さと子ちゃん、コンサートは好き?
さと子:なんでいきなりコンサートの話? 私はあんまり行かないけど、お兄ちゃんはAKBオタクだから良く行ってる。この間も、コンサートのチケットが手に入らんかったからって、ネットオークションで高い買物しとったわ。何がええんか、よく分からんけど。
てつ夫:そうか、お兄さんはAKBが好きなんか〜。それはそうと、何で「チケット」なんや?って考えたことある?
さと子:うーん、さっきの「券」って言うのと関係あるの?
てつ夫:そらそうや。だって「券」って「チケット」って言うやろ?
さと子:うん、確かに。でもそれが何なん?
てつ夫:お兄さんはもともとチケットを劇場から買ったわけやない。でも、チケットを持って行ったら、会場に入場できるわけやろ?
さと子:うん。でもそれが何なん?
てつ夫:つまり、チケットちゅうもんは、「これを持って行ったら、会場に入れますよ」っていう入場できる権利を証明する証明書なわけやな。だから、持っている人が重要なんであって、誰が最初に買ったかちゅうことは重要でない。
会場に入れる権利はチケットの上に載っている、とも言える。
チケットを売ったり買ったりすることで、会場に入れる権利が売買されているわけや。
これを「お金を返してもらう権利」で考えてみるとどうなる?
さと子:よく分からんわ。お金って、誰から借りるか、誰に貸すか、両方大切よね。そんなん、「お金を返してもらう権利」が載っているチケットなんて、よく分からん。
てつ夫:でも、さっきの1万円の例で考えてごらん。僕に貸した1万円を返してもらいたいときに、借用書を売る相手として、僕にも納得してもらえる人ということでユウナさんの名前を出したよね。
もし、僕があらかじめ「誰にでも売っていいよ」とその借用書に書いていたら、さと子ちゃんが借用書を売る相手も簡単に見つからない?
さと子:そら、そう思うよ。でも、どうしてそんなことするの?
てつ夫:さっきの例で言うと、もし誰にでも借用書を売っていいということだったら、さと子ちゃんもより簡単に僕にお金を貸してくれるかも知れんやろ。そうすると、5%の利子やったんが、4%にしてもらえるかもしれん。そうすると、僕の方にメリットが出てくるわけや。
逆の立場に立ってみよか。さと子ちゃんがデートのためにお金を返して欲しくなったときに、僕に直接「返して」と言わなくても良くなる。債券の形、つまり借金のチケットになっていたら、ユウナさんでなくても、どんな人にでも売ってお金に換えてもらうことができる。これはさと子ちゃんの方のメリット。
借金をチケットの形にするっちゅうことで、お金を貸す側の「債権者」もお金を借りる側の「債務者」も、両方ともトクするっちゅうことやねんな。
だから、政府が借金をするときも、誰でもその借金の証文をお金に換えられるように、「債券」というチケットの形にしてるんや〜
さと子:なるほど〜 でも、それと「上がったり、下がったり」はどう関係してるん? やっぱりよく分からんわ〜
(次回に続く。但し、次回があれば。←リクエストがあったので、続いて第2回)
国債の値段が上がったり下がったりって?
さとり世代のさと子ちゃんが、経済の基礎の基礎から質問して、だんだんと日本経済のしくみを分かっていく、そんな会話シリーズを書いてみようと思った第2弾です。答えるのは、引き続き団塊ジュニア世代のてつ夫です。調子に乗って続きです。(^_^)/
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第2回「国債の値段が上がったり下がったりって?」
さと子:なるほど〜国債はチケットなのね。 でも、あいかわらず、それと国債の値段が「上がったり、下がったり」はどう関係してるん? やっぱりよく分からんわ〜
てつ夫:さと子ちゃん、さっきの僕に1万円を貸してもらった例でまた考えてみよか。あの1万円は利子が5%で、1年後に返す期日が来るものだったよね。
これを田中くんに売るとき、田中くんは何と言うかな?
さと子:ユウナに、じゃないの??? まあ、ええか。
えっと、田中くんだったら、「あのてつ夫さんやろ。ちゃんと返してくれるか分からんやろ。さと子ちゃんは優しいから5%の利子でええけど、オレやったら10%の利子をもらわんとやってられへんわ」と言うのとちゃうかな〜
てつ夫:あの田中くんが、そんな鬼畜なことを言うわけないやろ。さと子ちゃん、あいかわらず、僕には厳しいなぁ。
まあ、ええわ。その10%でいこ。
さと子ちゃんに貸したのは1万円で1年後に5%の利子やから、合計10500円やったわけやな。これを10%の計算で行ったら、今のその借用書はいくらの価値を持ってる?
さと子:えっと、10500円が、10%の利子を含んでいるんやから…
10500円=「今の価値」×110%
という方程式を解けばいいんやね。だから、
「今の価値」=10500円÷110%
になるか。そうすると、10500÷110%=9545.45…円だから、
「今の価値」=約9545円ということになるかなぁ。
てつ夫:そう。9545円ということやったら、最初の1万円を比べて下がってる上がってる?
さと子:てつ夫さん、バカにしてる? 下がってるに決まってるやんか!
てつ夫:それやったら利子はどう? 5%から10%になったちゅうことは、利子は上がってる下がってる?
さと子:またバカにして! 上がってるに決まってるやない!
てつ夫:何か気づかへん?
さと子:何よ!
てつ夫:利子は?
さと子:上がってる。
てつ夫:借用書の「今の価値」は?
さと子:下がってる。
てつ夫:だったら、利子がどうなったら、債券の値段はどうなった?
さと子:えっ、、、えっと、利子は上がってる。借用書の今の価値が債券の値段やから、債券の値段も下がってる…
あっ、債券の利子が上がると債券の値段が下がるって、こういうことなんや!
てつ夫:だったら、例を変えて考えてみよか。10年後に元本を返してもらえる国債を考えてみよ。国債っちゅうんは、個人向けの特別なもん以外は固定金利なんや。
10年もんのちゅうたら、毎年毎年金利分だけ配当があって、最後の10年目に元本が返ってくるんや。
例えば、10年もんの国債を100万円分買ったとするな。額面の金利は1%やったとする。そうすると、1年後には100万円×1%=1万円の利子が配当で帰ってくるわけや。2年後も同じ1万円。3年後も1万円、4年後も1万円、5年後も1万円…、9年後までは、毎年1万円が金利の分になるわけや。
それで、最後の年、10年後には、100万円の元本と1万円の金利、合計101万円が返ってくるっちゅうことやな。
さと子:うん、それは分かったけど、それが何なん?
てつ夫:この国債を買った一年後、市場金利が2%になったとするわな。さと子ちゃんやったら、いくらで買う?
さと子:えっ、いきなり問題かいな。あと9年残っているわけやな、、、
本当は2%ずつ、これから毎年の利子分は2万円欲しいところやな。
でも、その国債の配当は毎年1万円しかないわけか。
そうすると、毎年毎年1万円ずつ、損をする計算になるなぁ。
あっ、そうか。
その分、差し引けばええわけやな。
てつ夫:さと子ちゃん、ナイスや。
ちょっと正確やないけど、残り9年分あるから、毎年1万円損する×9年=合計9万円損する、ちゅうわけや。
だから、100万円から9万円を引いて取り引きすればええっちゅうことになるわな。
つまり、100万円−9万円=91万円や。
ほな、ちょっとまとめてみよか。
金利は何%から何%になった?
さと子:1%から2%に上がった。
てつ夫:債券の値段はどうや?
さと子:100万円が91万円に下がった。
てつ夫:だったら、金利はどうなって、債券の値段はどうなった?
さと子:金利が上がって、債券の値段が下がった…
てつ夫:金利が上がると債券の値段は?
さと子:下がる。
てつ夫:じゃ、逆に金利が下がると?
さと子:上がるってことになるんやよね? ここはどう考えたええんかな〜
てつ夫:さっきの例で、逆に、10年もの国債の金利が2%で、1年後に1%に市場の金利が下がった場合を考えたらええねん。
2%やから、毎年2万円ずつ配当があるわけや。でも、市場金利は1%に下がっているわけやから、本当なら1万円しかもらえんはず。
さと子:買った方はボロ儲けやな。
てつ夫:だったら、売る方は買う方にボロ儲けはささんわな。いくらやったら、売る方は売るやろうか。
さと子:さっきと逆やから、売る方としたら毎年1万円ずつ余分に欲しいっちゅうことになるわ。そうすると、9年分かけるから、1万円×9年分=9万円を追加して払わんと売ってもらえんかな。
だから、100万円+9万円=109万円になるわ。
てつ夫:そうすると、金利がどうなって、債券の値段はどうなる?
さと子:金利が下がって、債券の値段は上がる!
てつ夫:分かった?
さと子:分かった〜!
(取りあえず、国債の値段の話はここまで。このシリーズは、質問をいただけばまだ書いていくことにします。)
追記【さと子の質問シリーズバックナンバー】
第1回・第2回「国債って何なん?」
(第1回「債券って何?」)
(第2回「国債の値段が上がったり下がったりって?」)
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140529
第3回「お金って何?」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140602
第4回「お金とは支払いの手段」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140603
第5回「銀行の銀行」日本銀行
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140606
第6回「銀行にとって預金は資産か借金か?」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140618
第7回「ふつうの銀行がお金を発行!?」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140619
第8回「資産と負債のバランス」(バランスシート)
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140621
第9回「銀行のバランスシート」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140622
第10回「銀行は手元にあるお金を貸すんじゃない」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140719