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湿地帯中毒

2018-04-18

日記

福岡県侵略的外来種リスト2018が公表されました。PDFにて全編公開されています→リンク

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表紙はセアカゴケグモ、裏表紙はブラジルチドメグサですね。いずれも特定外来生物としてはインパクトのある種です。これ以上の蔓延は防ぎたいものです。

魚類についてひとこと。本冊子7ページにあるように、今回対象種として水産有用種を除外しています。したがって、侵略性があると判断されるであろう飼育品種のコイ(ただし分類学的にはまだ日本産と同種)や、自然分布域外のヤマメとアマゴは入っていません。リストアップすらされていません。

淡水魚類の外来種問題、特に国内由来の外来種は水産資源増殖目的での他地域からの水産有用種の放流を原因とするものが多く知られています。これまではそこが別枠という考えで来たわけですが、この先はやはり水産有用種だからといって生物多様性の保全を無視することはできないと考えます。そして、実際のところ内水面漁業振興法(リンク)などでも、自然環境の保全に寄与する持続的な水産業の推進が求められています。すなわち、外来種を売りにするような水産業は今後成り立たないかもしれないということも、関係者はよく考えておく必要があるでしょう。また、例え水産有用種であるとしても、外来種であるということはよく認識した上で、扱っていくべきです。今回、このリストでは外来種であっても水産有用種は外す(リストにすら掲載しない)という扱いになりましたが、もし次に更新する機会があれば、ぜひとも外来種は外来種として、せめて掲載はして欲しいものです。それをどうするかは、行政的な問題として、別枠で考えていくべきでしょう。

2018-04-13

論文

上手雄貴・中島 淳・林 成多・吉富博之(2018)日本産ヒメドロムシ科の目録と分類学的な問題点.さやばねニューシリーズ,29:6-12.

ここ数年大変な人気のヒメドロムシ科。新種も続々記載されていますが、まとまった目録は「おいかわ丸のくろむし屋」リストしか存在せず、引用できる形での総説が求められていました。ということでくろむし屋リストをちゃんとした形で世に出そうというプロジェクト(と個人的には思っていましたが)の進展により、ヒメドロファン待望の論文が出ましたので紹介します。

この目録により、現時点でのヒメドロムシ科は全57種で、うち52種が日本固有種であることが明示されました。そして、それぞれの種について現時点での分布域を整理するとともに、幼虫が記載されている種についてはその情報を、また、いくつかの種では分類学的な問題点等も指摘しており、今後の研究方針を考える上で、また調査報告リスト等を作成する上で有用なものとなっています。

また、九州のヒメドロムシ相を考える上で重要な点は、11頁で書いている「九州からのサンインヒメツヤドロムシの初記録」です。これは緒方・中島(2006)ですでに記録されていた「マルヒメツヤドロムシ」が、詳細な検討の結果実は「サンインヒメツヤドロムシ」だったという形での、記録になります。また、あわせて緒方・中島(2006)の「ヒメツヤドロムシ属の一種」の方が「マルヒメツヤドロムシ」であったということも付記しています。何故こういうことになったのか、以下記録を残しておきたいと思います。

緒方・中島(2006)では前胸背の光沢の有無で「マルヒメツヤドロムシ」と「ヒメツヤドロムシ属の一種」を区別しました。すなわち光沢が有る方をマルヒメツヤドロムシ、無い方をヒメツヤドロムシ属の一種としました。この理由はO師匠とともにマルヒメツヤドロムシの模式産地である和歌山県紀見峠に行った際に採集した「本物」と思われるマルヒメツヤドロムシの前胸背に光沢があったからです。今回共著者でもある林成多さん(サンインヒメツヤドロムシの発見&記載者)の指摘を受けて交尾器中央片を確認したところ、緒方・中島(2006)で「マルヒメツヤドロムシ」とした方は、上翅点刻や交尾器先端の特徴が「サンインヒメツヤドロムシ」に一致することがわかりました。一方で「ヒメツヤドロムシ属の一種」とした方が「マルヒメツヤドロムシ」に一致することがわかりました。実はマルヒメツヤドロムシには前胸背に光沢が有るものと無いものがあり、福岡県のものは(紀見峠のものと異なり)光沢が無かったのです。すなわちこの点は区別点にはなり得なかったという訳です。

と、いうことで!本報により九州からサンインヒメツヤドロムシを初記録する運びとなりました。区別点については、少なくとも福岡県の日本海側においては、

サンインヒメツヤドロムシ

→前胸背に光沢が有る、上翅点刻列がやや細かく上下の間隔も狭い、交尾器先端にトゲ有り、やや黒っぽい、中下流の細流に多い

マルヒメツヤドロムシ

→前胸背に光沢が無く皺状、上翅点刻列がやや荒く上下の間隔が広い、交尾器先端にトゲが無い、やや赤っぽい、渓流や山間の細流に多い

ということになります(※繰り返しますが前胸背光沢の有無は種間の決定的な違いではありません)。この2種は筑前大島や能古島では同所的にみつかっているので、完全にハビタットが違うというわけではありません(生活史は違う可能性がある)。

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左が福岡県産サンインヒメツヤドロムシZaitzeviaria sotai 、右が福岡県産マルヒメツヤドロムシZ. ovataです。全然違いますね!こうして日本列島の自然史の一端が解明されたわけですので、うれしいことです。福岡県の日本海側には広くサンインヒメツヤドロムシがいる可能性が高く、また、佐賀県〜長崎県にかけても注意が必要です。今後の調査の進展が期待されます。

参考

緒方 健・中島 淳(2006)福岡県のヒメドロムシ.ホシザキグリーン財団研究報告,9:227-243.(PDF

SS 2018/04/17 17:21 初めまして。いつもTwitterを拝見しています。
お忙しいところ大変恐縮なのですが、ご相談があります。
まだ正式に参加することも決定していないのですが、
先日カンボジアのリゾート開発のデザインをするお話を頂きました。
そしてたまたまその開発の中心におられる方と話をする機会があります。
自分としては現地の自然を最大限活かした開発を行なってほしいと
考えているのですが(海辺のマングローブ地帯です)
おそらく専門家によるアセスメントなどはほとんど行われないことが
予想されます。
そこで自分から先方に生物多様性の重要性などを提案したいのですが、
なにぶん専門外のことでうまく提案できるか不安があります。
何か目を通しておくべき文献や、教えを請うべき方、協力して頂ける方をご存知でしたらお教え頂けないでしょうか。よろしくお願い致します。

OIKAWAMARUOIKAWAMARU 2018/04/17 17:26 Eメールをいただければ幸いです。アドレスは以下です
oikawamaru(あっと)gmail.com

SS 2018/04/17 21:22 取り急ぎメールさせて頂きました。
こちらも状況がまだ分かりませんので現状ではこれ以上言えないのですが、
また追って詳しいことが分かり次第ご連絡させて頂ければと思います。

2018-04-09

日記

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今日は某調査のためフラフラとしていたところ、かつてのアリアケギバチとオヤニラミの楽園が消滅していることを偶然発見して心が痛みました。何故この場所をこの事務所がこのように掘っているのか理解不能です。何かの手違いか、大きな治水上の理由があるのか、はてさて。。いずれにしろ普通はこうすることはないので、残念なことでした。

2018-04-06

日記

新年度がはじまってずいぶんたってしまいました・・生きています。割合に時間もあるので、書き物やら何やらをしています。

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湿地帯としての水田と農業用水路。平野部の農業用水路の多くはもともとの氾濫原湿地内の細流を改造してつくったものも多いので、ウナギを含む多くの湿地帯生物の重要な生息環境になってきました。上の写真のあたり(リンク)なんかは、氾濫原湿地内の細流をそのまま農業用水路に転用した感じがよく残ってますよね。あと水田が氾濫原湿地を改造してつくったものであるということもよく見えると思います。ところが農地の近代化で急速に環境が悪化し、こうしたところに暮らしていた湿地帯生物の多くが絶滅危惧種になってしまっています。例えば今後の公共事業の方向性として、三面コンクリ化された農業用水路を多自然水路に作り変えていくなんてのは、持続可能な社会を構築していく上で意味があるのではないかと考えたりもしています。農業の近代化にはそうしたコンクリ水路への改造が必要であったということはよく理解しています。ただ、こうなったからにはその中間をとっていく対策は必要だと思うわけです。

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本来の氾濫原湿地は国内にはもうほとんど残っていませんが、グーグル様の力を使うとアムール川にある素晴らしい湿地帯を見ることができます(リンク)。関東平野とか大阪平野とか福岡平野とか、もともとはこうした湿地帯の縮小版みたいなものだったのでしょう。出水ごとにその位置を変える本流と分流。本流は分流に分流は本流に。かつての川の跡地に無数の池沼。数ヵ月前にできた湿地帯から、数年前にできた陸になりかけている湿地帯。そしてそれぞれの湿地帯に適した湿地帯生物がそれぞれの湿地帯であふれかえる世界。素晴らしいですね。当然、こうした湿地帯をいまの日本の平野部で再生することは不可能ですが、もう少し湿地帯生物と共存する仕組みはできるはずです。このまま環境破壊を続けて生物を減らし続けていくと、回転寿司の種類が一品ずつ減って行って、最後にはキュウリと卵だけになってしまうでしょう。そんな未来が嫌な人は、ぜひとも生物多様性の保全に興味をもってもらいたいです。

2018-03-27

日記

調査でした。これで今年度の野外調査はおしまい。

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秘密の楽園の様子も確認。茶色い方がドブガイモドキで、黒い方がイシガイです。まだ安泰でした。

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別件で魚道の画像。この魚道は絶妙な堰操作によりあえて魚道に水を流さないスタイルなのでしょうか。謎です。

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こちらの魚道は恐るべきことに魚道の入り口の下流側にもっとも大きな段があり、魚道に到達できません。謎です。

魚道はまだまだ改善の余地があり、もう少しなんとかしたいなと思う反面、筑後川水系では魚道がない堰のおかげで本流から外来種ギギが侵入せずアリアケギバチの楽園が維持されていると思われるケースもあります。ああいうところに良い魚道をつけてしまうと、外来種ギギの分布が拡大するなどの問題も大きいでしょう。目的が生物多様性の保全であるならば、一律に良い魚道をつければ良いというものではありません。一つずつ丁寧に専門家と協議して適切な手段をとっていくべきでしょう。それが持続可能な社会をつくるということです。

あ、余談ですが九州では日本海側の遠賀川水系、紫川水系そして瀬戸内側の諸水系ではギギは在来種です。しかもかなり減っているので希少種です。一方で、筑後川水系ではおそらくオイカワあるいはアユの放流に混入した本州産のギギが外来種として定着しています。すなわち九州東部のギギは在来種で保全対象、九州西部のギギは外来種で駆除対象です。ややわかりにくい事態ですが、わかりにくいと投げ出してしまっては、いけません。そこで投げ出してしまってきたのがこれまでの日本。21世紀のこれからは持続可能な社会をつくっていくために、わかりにくいことも丁寧に理解して、最適な方法で問題を解決していかなくてはなりません。