飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「双界のアトモスフィア」感想

双界のアトモスフィア (富士見ファンタジア文庫)

双界のアトモスフィア (富士見ファンタジア文庫)


第23回ファンタジア大賞銀賞作品。
世界観と設定が『売り』なところがあるので、これらを読んで楽しめるかがポイント。

新世界が生まれて50年。こちら側の『科学世界』〈フィロソフィア〉とあちら側の『術式世界』〈テウルギア〉の二つの世界が交わり、あまりに違う世界同士が争った大戦が終結し月日が流れた。
総人口を三分の一までに減らし、統合された世界で生きる少年・八劔姫也。彼は『術式世界』の異形の者達に対抗しそれによって発生する両方の世界の争いを無くすために戦う組織『D.S.T』に所属しながら国立京学園に通っていた。姫也はある任務中に、襲われている少女を助ける。その少女は姫也の幼なじみにして、『術式世界』のヴァルハラ国皇女アイリスであった。運命的な再会を果たし喜ぶ二人であったが、アイリスはヴァルハラ国を取り巻く陰謀に巻き込まれており追われる身。助けを求めるアイリスを護るため、姫也は仲間たちと巨大な陰謀に立ち向かう。

まず読み終わって感じたのは「この作品は巻を重ねる事に味が出る」作品なのかな、ということ。それというのも、やはりこの作品の一番の魅力は科学と術式が入り混じる世界であり、今回はその世界観と状況を読者に植え付けることに物語の大半を費やしているから。もうひとつ、姫也とアイリスの過去に傷を持つ幼なじみ二人の関係を物語半ばまで掘り下げ続けていたため『個性ある仲間』たちの印象が希薄になりがちで、これが個人的に残念なところだった。最後の盛り場で見せ場はそれぞれ用意されていたものの、せっかくのキャラクターが勿体ない。

と、イロイロ思うところはあるけれど、これで終わりの物語と考えるのではなくシリーズモノとして捉えるとこの先かなり期待が持てる作品になる。
いや、もうこれは二巻からが本番でしょう。他のキャラクター(特に女性陣)にスポットを当てて欲しい。