ワキヤくんの主役理論

──これから三年間、どうぞよろしくしませんように。

ワキヤくんの主役理論 (MF文庫J)

ワキヤくんの主役理論 (MF文庫J)

 

めっちゃ、よろしくしてんじゃん君ら。しかもですよ? 出会った当日に同棲、というか同居である。

大変良い恋愛青春モノでした。主役になってリア充の青春を謳歌したい! と色々アクティブに努力する高校デビューの主人公と、脇役で自分の時間を充実させたいというヒロイン。求めるベクトルが真反対なのに、好みや考え方がとても似ていてひょんなことから始まった同居生活が、心地良くなってしまう。だが、そんな時間が何の障害もなく続くわけも無くて……。

 

主人公の我喜屋くんに惹かれている同級生のさなかちゃんの関係づけが上手だな、と思います。我喜屋から見て「友達」として心地良く思っているヒロインの友利とあわよくば青春のメインテーマ「彼女」になってくれたらいいなぁ、と意識しているさなかとのズレが、読み手的に今後の展開を期待させるわけで。

我喜屋と友利、そしてさなかのそれぞれ持つ過去の陰も良い感じで引き締めるスパイスになっていると思います。

それらも含めて、各人の想いが生み出す恋愛模様を読むのが好きなので、次巻も期待してしまいます。

空の青さを知る人よ

(※ネタバレ含むので情報無しに映画を見ようとする方はブラウザバックを)

 

長井龍雪監督の映画、『空の青さを知る人よ』を見て来ました。

 

TwitterのTLがざわめいていて、折角時間もあるから見てみようかな? という割と軽いノリで入ったのですが……すごく好みな話でした。

自分が好きな切なくもどかしい少女の恋愛話と、夢が現実に重みにすり減らされて適度に合わせてしまうおっさんの哀愁ある話。どっちも大好物なのですが、それが合体してぐっとくるストーリーに。やられましたネ、良い意味で。

 

メインのヒロインである、女子高生のあおいの『二度目の初恋』の描かれ方がとても感情を揺さぶるのでスクリーンに釘付け。幼い時に憧れだったお兄ちゃんの「しんの」が、自分と同じ年齢の時に再び出会うという不思議な体験。そして、惹きつけられて恋に落ちてしまう。そこに至るまでの描写がとても上手いんですよ、すごく自然で。

 

ああ、好きになっちゃうよなーと。そして、あおいにとって大切なもう一人の姉であるあかねへの罪悪感との板挟み。そして、本当にあかねも大好きだからしんのを奪うというのではなく、悩む。そんな懊悩をエピソードを積み重ねて、最後にあおいの涙に綺麗に落としていくところは長井さんの真骨頂だなぁと感じました。

ずるいよなー。でもうまいよなー。ああ魅せられたら、納得するしかないじゃないかと。

また長井さんが優しいなあと感じたのは、あおいに思いを寄せているツグの存在ですね。小学生だけどあおいのことが本当に好きで、幼い初恋のくせに将来設計ばっちりすぎて、正直に言えばひくわーってレベル。ああ、ここまで考えている子が傍にいたら、あおいに告白して結婚して幸せにするだろうなーと、想像させる配置。ずるい。でもそんな長井さんが大好きです。やっぱりハッピーエンドが一番いいですもの。

 

あおちゃんがとっても良かったよ! というのが1番目なら、2番目は慎之介の描写。

31歳のおっさんである。高校卒業後ビッグになるぜ、と東京に出てから音信不通。夢破れ、ただ辛うじて音楽に携わる仕事は続けられているという宙ぶらりんな状態。いわゆる『ダメ人間予備軍』なんだけど、共感してしまう(ダメ人間なので)

そんな疲れて現実的な生活をしている「慎之介」と、夢に溢れている高校生の「しんの」。BeforeとAfterが同時に描かれている様が、見ている方もおっさんだとどうなるか?

 

胸に後悔という鉛玉がマシンガンで撃ち抜かれる訳です。撃ち抜かれない人もいると思いますが、結構な人はずたぼろになる野では無いでしょうか。私は肉片になっちゃいますね!(いばれねー)。とまぁ、心に後ろ暗い影を持つ人間にとって、慎之介としんのはガチで苦しい。慎之介に感情移入しちゃうんですよ、「ああ、わかるわかる……」って。

そんな彼が高校生の自分に叱咤されるところはまさに死体蹴りですよネ☆ HPがゴリゴリ削られるわけですけど、故にまたスクリーンに目が離せなくなってしまう。

慎之介の描写にも長井さんがやさしいなぁと思わせるのは、再び気力を漲らせて前に進む姿を見せる所。そしてタイトルロールでそれが上手く言ったことを匂わせている。僕はそういう所が良い余韻だなあと感じました。過程がきちんと描かれているなら、ご都合主義でいいじゃないかと。フィクションなら気持ち良くENDマークを見て余韻に浸れるのが正義、だと思いますので。

 

ほんと、素敵な作品をありがとうございました。

初見だけではものたりないので、何度かまた映画館で見てみよう。そう思わせる作品でした。

プロペラオペラ

「カイルとガメリア人が気に入らないから全力で殴る。おれが戦う理由はそれだけだ。死ぬためには戦わない」

プロペラオペラ (ガガガ文庫)

プロペラオペラ (ガガガ文庫)

 

 男主人公のツンデレはアリだと思いますか? 自分は断然ありだと思います。

格好いい台詞吐いていますが、根本は惚れた女を奪われないために強国に喧嘩を売るというのが痺れます。

史実の日米大戦をモチーフに、現実では存在しない高度1200mに存在する第二の海上と呼ぶべき海戦の戦記モノ。でも、その根幹がラブロマンスもので読んでいてにやにやできる部分が多く、恋愛モノが読みたいモードに入っていた自分は大変楽しめました。

しかもヒロインが皇王家の姫で、気品ある気高い系なのもツボで勘違い(?)で一度こっぴどく振られたヒロインに全身全霊を賭けて守ろうとする主人公のクロトが格好良くていいなーと。ヒロインのイザヤには照れ隠しで憎まれ口を常に叩くのも高ポイント。男の子の見栄というか、分かる分かるみたいなとこが有って好き。

 

あと、強力な悪役の存在がいいです。端的に言えば、イザヤに横恋慕しているイカレ野郎なんですが、イカレ方が半端ない。大統領になってイザヤとクロトの母国、戦争で滅ぼして奪えばいいかなーとスケールがでかい。敵役とクロトの因縁がまた上手い感じで絶対に滅ぼすしか無いよね、というシチュエーションに持って行ってる。あとはどう苦しめられつつも、最後にやっつけるか。楽しみ。めっちゃ苦境になって人死にたくさんでそうですが。

 

犬村さんの得意とする駆逐艦内の乗員達のくだけたしょーもないところ(姫さまたちの「聖水」*をあがめるとか)と、命を張って毅然と任務に邁進するところのオン/オフの描き分けも魅力的でした。一般兵員の悲哀を感じさせるエピソード(平祐の姉の話とか)などもぐっとくるし、人情モノ的な部分もうまいよね、という感じで。

 

クライマックスへ向けた流れと、味方のピンチ。それを跳ね返すどんでん返しの見せ方もよく、良い意味で緩さと緊張感が両立していたと思います。

追憶の頃からもそうですが、映像的な綺麗さの描写もよかったなー。

空にあるもう一つの「海上」。セラス粒子という、空に船が疾走するというものなのですが、エネルギーと反応して七色に輝くという架空の設定が凄く映える描き方なんですよ。これは色が付いて映像になったら綺麗でしょうね……。

 

戦記モノとしてもしっかりと描かれていますので、そういうのが好きな人も楽しめるかと。

はやく続き読みたいですね。

 

* いわゆるしーしーな「聖水」ではありませんが、似たようなモノ。

スイレン・グラフティ

(わたし、庭上さんの漫画が読みたい──完成したところを、ちゃんとこの目で確かめたい──!)

スイレン・グラフティ わたしとあの娘のナイショの同居 (電撃文庫)

スイレン・グラフティ わたしとあの娘のナイショの同居 (電撃文庫)

 

 大切な投稿用漫画原稿を傷つけたことで、同級生だけど接点が殆ど無かった蓮を半居候させることになった、主人公の彗花。慣れない漫画の手伝いに食事に風呂の世話など、どうしてこんな事に──?

 

良い青春ガールズ友情モノでした。百合を期待した部分も有ったのですが、今回は二人がお互いを意識した所まで。親友以上百合未満というところかな?

嘘が下手で傷を隠して孤高を貫く狼と、おっとり羊な主人公がそんな狼さんに惹かれて行く、そんな話です。

 

教師にも平気で反抗し、遅刻早退は当たり前の問題児の連が隠していた秘密を知ってしまった、彗花。しかも弱みを握られて自宅を提供しながらおさんどん。最初は困惑していたのに、不良とは思えない蓮の漫画への熱い想いに胸を打たれいつの間にか彼女と一緒にいるのが当たり前のように思っていく過程を丁寧に描いているのがよかった。

だからこそ終盤、すれ違ってしまい蓮が自宅から去ってしまった後の喪失感が納得いく流れになっていましたので。

 

彗花の自宅での描写がメインになるのですが、彼女の双子の弟妹たちがまた可愛く描かれていて和みました。ともすれば退屈になりかねない所に良いアクセントになっていたなーと。

わたしの知らない、先輩の100コのこと 1

「恋愛経験はきっと小学生レベルですよね、せんぱい」

「……小学生レベルも行っていないから安心しろ」

 

わたしの知らない、先輩の100コのこと1 (MF文庫J)

わたしの知らない、先輩の100コのこと1 (MF文庫J)

 

 モブ系男子高校生が、通学に使っている駅で知り合った同じ高校の後輩女子。ひょうんなことから1日1回お互いに質問をして答えるという関係となり、初めは興味がなかった男子が後輩を気にするようになり──。

 

主人公と後輩ちゃんが交互に一人称で思いを綴っていくので、初めから興味があった後輩ちゃんの思惑と全く興味がなかった主人公の考えを読む部分は面白かったと思う。

少しずつ進展はあるものの、わりと淡々と進むため最後は「え、ここで終わり?」というような感じ。もうちょっと、1冊の本としてなにか落ちる部分があればもっと良かったかな。

ポンコツちゃん検証中 1巻

「私が立派な能力者になれるまで…めんどうみてな!!」

 

ポンコツちゃん検証中 (1) (少年サンデーコミックス)

ポンコツちゃん検証中 (1) (少年サンデーコミックス)

 

頼られたいのに強面で人から避けられる少年が、神様から能力を授かった少女に生まれて初めて頼られて彼女のために奮闘する毎日が始まるが──。

これは楽しいラブコメ。二人ともお互いに意識しているのに、素直に表現できないから生じるらぶいドタバタが愉快で面白い。

キャラがめっちゃいいんですよね。ドジっ娘で巨乳なぽんこつ娘のしかも方言ガールな夢咲さんが毎回起こす騒動に巻き込まれる水戸くんの反応がいい。夢咲さんが好きな水戸くんが彼女の仕草や言動に頬を赤らめたり、自分で自分に突っ込んだりと忙しい毎日。

 

二人がいつもいる理由が、地球滅亡を回避するために日替わりで与えられる能力を検証するというものでネタが色々変わるので飽きさせないのも上手い。

また、夢咲さんの親友の杏子ちゃんがまたユニークで可愛い。個人的にはツボな娘なのでもっと出番を増やして欲しいですね!

 

ほんと、続きが楽しみです。

賢勇者シコルスキー・ジーライフの大いなる探求

 「言い忘れていましたが、カグヤさんに負けたら君はフランス書院文庫の刑ですよ」

 ひどい、変人と変態しか出てこない。だが、それが良い(いいの?)

良いんです、おバカでお下品で異世界ファンタジーのハズなのにメタい台詞や描写がてんこ盛りで実に自由に好き勝手やっているなーと。波長が合うのか読んでいてとても楽しかった。

 ひとしきり笑って、キャラ達にバカだなぁと突っ込みながら読める話って好きです。

 

賢者と勇者の血筋で賢勇者のもとに押しかけて弟子入りしたサヨナが師匠を含めた変人・変態にツッコミをいれるのですが、まぁテンポがよくてさくさくと読み進められます。

ラノベって楽しませられればなにやっても良いんだ、というかこういうの出せるからラノベというジャンルがあるんだよなぁと思わせる怪作でした。

メタ系な話が多くても平気で、下ネタに抵抗が無く、おバカな話が好きであれば是非読んで見ては? と思います。

 

かれいさんの可愛い女の子と、クセの強い変人達を上手く描いているイラストも好みでした。話のノリ的をみるとマンガで見せても面白そう。雰囲気を上手く見せる挿絵を描かれていたので、かれいさんがコミカライズしたらマンガの方も欲しいなと。