読書とメモ

岩波講座哲学10 社会/公共性の哲学』より、齋藤純一「感情と規範的期待」、中山竜一「リスク社会における公共性」。

岩波講座 哲学〈10〉社会/公共性の哲学

岩波講座 哲学〈10〉社会/公共性の哲学

どちらも面白かったが、まず、齋藤論文は、感情を規範的期待の表現と捉え、それを公共的な問題として解釈する討議の政治という理解を提示する。
次に、中山論文は、「リスク社会」における公共的決定をどのように行うべきかについて考察する。一部の専門家や行政官に委ねることはもはやできない。少なくとも三つの選択肢がある。すなわち、1)熟議民主主義、2)リスクの個人化と市場化、そして、3)「リバタリアンパターナリズム」である。最後のものは、キャス・サンスティーンによって近年提起されている(下記の本)。それは、特定の選択肢を押し付けるのではなく、「背中をそっと押す」ようなやり方で、つまり、自己決定を尊重しつつも人々の行動を一定の方向へと回路づける(144頁)ような制度設計を行うことだという。だが、「善意の制度設計者」にまつわる問題が解決されているわけではない(145頁)。著者の結論は、(おそらく)一定の選択肢を用意した上での熟議と、それを規制する手続的ルールである(146-147頁)。
これで解決になっているのかについては疑問の余地があるけれど、とりあえず、扱われている論点は大変興味深かった。結論部に関する考察があるらしい、中山氏の別の論文も読んでみるべし(2つ目の本は持ってる)。


・中山竜一「予防原則憲法政治学」『法の理論』27号、成文堂、2008年。
・中山竜一「リスクと法」橘木俊昭ほか編『リスク学入門1:リスク学とは何か』岩波書店、2007年。


サンスティーンの本はこちら。図書館に入っている(一冊は貸し出し中だけど)。

Laws of Fear: Beyond the Precautionary Principle (The Seeley Lectures)

Laws of Fear: Beyond the Precautionary Principle (The Seeley Lectures)

Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness

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自分で借りているこの本もチェックしてみるべし。
Designing Democracy: What Constitutions Do

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