実像と虚像。

 僕が憧れるのは、例えば司馬遼太郎の描いた「燃えよ剣」の土方歳三であり、吉川英治が描いた「宮本武蔵」の宮本武蔵であって、極端な話、実際の彼らがどういう人間だろうとどうでもいいわけです。まぁ、僕が「憧れの人」の欄に平気で「シャア・アズナブル」と書けるアレな奴だからというのもあるでしょうけど。

 だから、こういうのを「美化されてて嫌だ」という人はちょっと理解出来なかったりする訳で。フィクションはフィクションの世界として認識していけばいいんでないの?と思う次第です。

 だからといって、実像に迫ろう!という動きを否定するわけでもなく、どちらかと言えば興味津々なのですが。しかし、やっぱり今年の大河の「武蔵」には、何か見ていて煮え切らないものを感じるのです。

 脇役の演技は確かに渋いし、良いかも知れない(お通の米倉涼子と、石舟斎の藤田まことというキャスティングはどうかと思うけど)。でもやっぱり、殺陣のヘボさは本当に目を覆いたくなってしまうし、武蔵の過剰すぎる演技にはどうにかならないものか、と思ってしまう訳で。

 天下のNHK大河ドラマが、「アバレンジャー」より殺陣がヘボいっていうのは、やっぱり問題だよ。

井上雄彦・著「バガボンド」(ISBN:4063288714)

 この漫画を連載し始めた頃から、徐々に徐々に、作家的自意識を肥大させ続けている井上雄彦。現在、原作とは既に「別物」。名前だけ借りてる状態であります。「画」で魅せよう、とするあまり、読者を退屈へ誘うような真似もしておりますが、これからどうなるのでしょう?

 個人的に、宍戸梅軒の話は原作の方が断然好き。寝ている梅軒の首に、鎖鎌を置いて「お休みなさい」という場面なんて、武蔵の梅軒に対する色んな感情を程良く表していて最高だと思うのだけど。何で、こっちを使わなかったのかな〜……。

 小次郎編は、これからだからまだ分からないけれど、どうして一刀斎をあんなキャラに仕立て上げたのか、よく分からん。