Duke Ellington & Count Basie 「First Time!」

First Time: Count Meets the Duke

  • 小西康陽「僕は散歩と雑学が好きだった。小西康陽のコラム1993−2008」で2回も紹介されていて聴きたくなったアルバム。
  • 「スポーツ観戦にビール、と考えたら頭の中でカウント・ベイシー楽団の演奏が鳴り出して止まらなくなった。いつでもいちばん最初に思い出すのは、デューク・エリントン楽団と競演した『ファースト・タイム』という傑作アルバム。豪快なホーン・セクションが歌う『A列車で行こう』を聴いたら、あなたもきっとぼくと同じように、のどが鳴るに違いない」というのが1つ目の紹介なのですが、「A列車で行こう」よりもむしろ、タイトル通り各人が入り乱れて豪快に祭の始まりを告げる「バトル・ロイヤル」に堪らないものがあります。
  • 「ぼくが初めてこの曲(「コーナー・ポケット」)を知ったのも、その新しい方のタイトル(「アンティル・アイ・メット・ユー」)でクレジットされていた、ベイシー楽団対デューク・エリントン楽団の夢の共演盤『ファースト・タイム』というアルバムだったはずだ(中略)右のスピーカーからはエリントンの、左のスピーカーからはベイシーのバンドが演奏を聴かせる。という馬鹿馬鹿しい企画盤だったが、まるでスタジアムでワールドシリーズを見ているような、豪快なサウンドが大好きで、友達が来てビールかなんか飲み始めると、出来上がった頃にはいつもそのレコードをかけて、そして何か下らないことを言っては大笑いしていたような気がする」というのが素敵な2つ目の紹介。確かに「コーナー・ポケット」は「快活でダイナミックでやるせなくて」良い曲です。
  • オリジナルのLPではベイシーの十八番「ジャンピン・アット・ウッドサイド」で豪華絢爛に締めるところを、CDでは残念ながら無用なボーナストラックが全体の印象を拡散させているかもしれません。
  • 「B D B」というタイトルは何かと思えば、「ベイシー/デューク/ビリー」の頭文字。書いたのはビリー・ストレイホーン、というと若干ホモ・セクシャリティーの香りを感じなくもないです。
  • プロデューサーはテオ・マセロ。1961年7月録音というと、カーネギー・ホールのライヴ録音に向けてマイルス・デイヴィスとゴチャゴチャしている頃だと思われますが、その裏で録音された、息抜き的にお気楽かつゴージャスな企画盤。
  • 1962年のオリジナル・ライナー(ジョージ・T・サイモンとスタンリー・ダンス)に加え、アーロン・ベルの回顧談(1998年)、再発プロデューサーのフィル・シャープによる解説(1998年)と、ライナーも充実していますが、ちょっと英語表現のハードルが高かったので、談笑するポール・ゴンザルベスとバド・ジョンソンの写真を撮っているベニー・パウエルといった、祝祭感溢れる多くの写真だけジックリ見ておきました。
  • 若干消化不良というか期待外れという感じが残ったので、デューク・エリントンの高名なニューポートのライヴ(1956年)でも聴いて見たいと思います。