とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

AFC U23アジアカップ 準々決勝 カタールvs.日本

 韓国戦をこのカタール戦に先発したメンバーで戦っていたら、よもや敗戦することはなかっただろうに。そしてグループを首位抜けなら、準々決勝の相手はインドネシア。開催国のカタールに比べればどれほど楽だったか。メンバー表を見た時、そう思った。

 カタールの布陣は3-5-2。ハルド・アリとアルラウィの2トップに、中盤はナイフをアンカーに、右IHジャッセム、左IHモスタファ。WBは右にアルヤジディ、左にサイフエルディーン。CBは右からアルハシミ、アヤシュ、アブドゥラー。GKはユーセフ。対する日本は4-3-3の布陣。細谷をトップに、右WGに山田楓喜、左に佐藤恵允。中盤は藤田譲瑠チマをアンカーに、右IHに山本理人、左IHは松木。DFは右SB関根と左SB大畑。CBは高井と木村。GKに小久保が戻ってきた。

 しかし開始2分、右SB関根のフィードをCBアブドゥラーがはね返すと、左WBサイフエルディーンの中へのパスを右WG山田がカット。そのまま前進し、そしてミドルシュート。これが決まる。日本が幸先よく先制点を挙げた。その後も5バックで守備を固めるカタールに対して、日本がパスをつないで攻めていく。9分にはスローインに左WG佐藤が走り込み、戻しを右IH山本がシュート。16分には左IH松木ミドルシュート。さらに18分には右WG山田がFKで直接ゴールを狙う。

 この間、カタールはほとんど攻め込む時間はなかったのに、同点ゴールは突然訪れた。左サイドからの攻めを封じられて右へのパスが収まらず、右に流れたボールを右WBアルヤジディが高速クロス。これをFWアルラウィ―が高い打点で合わせてヘディングシュート。日本のゴールに突き刺さる。アルラウィにはCB高井が付いたが、の守備が左右に振られて、マークがややズレてしまった。

 38分、日本は左WG佐藤のスローインに左IH松木が走り込み、クロスにFW細谷がシュート。しかしわずかにポストの右。フリーだったのに、残念。しかしその直後、今度は左IH松木のフィードにFW細谷が走り込むと、AP手前まで飛び出したGKユーセフがヘディングでクリア。しかし飛び上がった拍子に、右足を細谷に向かって蹴り込んだ。細谷が腹を抱えて倒れ込む。VARで確認の末、主審はユーセフにレッドカードを提示した。退場。これで残り時間を日本は一人多い状況で戦うことになった。カタールは44分、ハリドアリを下げて、GKアリナーデルを投入。アルラウィを右SHに下げて、5-4-0の布陣を取る。

 45+1分には左IH松木がFKを直接狙うが、壁にはね返される。カタールも45+3分、右WBアルヤジディのクロスにCBアヤシュがヘディングシュート。これは枠を外れたが、右WBアルヤジディのクロスは正確で怖い。前半はこのままタイムアップ。1-1で折り返した。

 後半頭、日本は、前半にイエローカードをもらった松木を下げて、FWに藤尾を投入。山本がボランチに下がり、4-4-2に布陣に変更する。攻める日本に対して、ブロックを作って守備を固めるカタール。しかし4分、左SHモスタファのFKにCHジャッセムがヘディングシュート。一人少ないカタールが勝ち越し点を挙げた。11分には右SB関根から左WBサイフエルディーンがボールを奪って、そのままドリブルで仕掛けてシュート。13分には右WBアルヤジディのパスを受けた右SHアルラウィが反転からミドルシュート。左に外れたが、自由にさせると怖い。

 しかしその後も日本が攻めていく。そして17分、CH山本のCKにCB木村がヘディングシュート。ようやく日本が同点に追い付いた。カタールも24分、左SHモスタファのCKにCHジャッセムがヘディングシュート。日本は32分、右SB関根のクロスにFW藤尾がヘディングシュート。このゲームの関根は右サイドから積極的に仕掛け、グラウンダーのクロスがよくDFに間を抜けてチャンスを作っていく。しかし合わせられない。38分にも右SB関根のクロスにFW藤尾がシュートを放つが、枠を捉えられなかった。

 36分、カタールは右WBアルヤジディとアルラウィを下げて、右WBユーシフ、右SHマンスールを投入。日本も38分、佐藤を左SH洞川に交代した。45+1分にはCH山本の縦パスをGKアリナーデルが弾くと、FW藤尾がシュート。しかしファーサイドに外れた。アディショナルタイムは9分。45+4分、カタールはアルハシミとアブドゥラーに代えて、右CBナビル、左CBマナイを投入。日本も45+6分、山田を右SH荒木に交代した。しかし結局90分が終わって1-1。勝負は延長戦に突入する。

 延長戦も積極的に攻めていく日本。2分には右SB関根のクロスにFW藤尾がシュートするが、これも枠に飛ばない。8分、カタールはナイフを下げて、CHファレスを投入。各選手にだいぶ疲れが見える。そして11分、CH藤田の縦パスを右SH荒木がさら前へ。FW細谷が抜け出してシュート。ついにストライカーにゴールが生まれた。日本が3-2と勝ち越した。

 延長戦後半の最初、日本は山本と細谷に代えて、右IH川崎とCF内野航太郎を投入。布陣も最初の4-3-3に戻した。藤尾が右WGに回り、荒木が左IHに移る。いよいよ疲れが見えるカタール。4分には左IH荒木のFKに左WG平河がシュート。これはGKアリナーデルがナイスキャッチ。しかし8分、左IH荒木のCKのクリアを右IH川崎がミドルシュート。GKアリナーデルが弾くが、CF内野航太郎が詰めてシュート。日本が4点目。そしてそのままタイムアップ。4-2。カタールを破って、日本が準決勝進出を決めた。

 よかった。もう一つの準々決勝では韓国がインドネシアに負けている。退場者が出た上に、PK戦での敗退だが、これでオーストラリアに続いて、韓国の五輪出場は無くなった。カタールが相手でよかったのだろうか? いすれにせよ、次の準決勝はイラクベトナムの勝者となる。順当に考えればイラクだろうが、イラクはグループリーグでタイに負けている。一方、ベトナムはグループ首位のカザフスタンには敗れたものの、2勝を挙げた。どちらになるか、わからない。いや、どちらになっても今日のゲームのように必死に戦うだけ。次のゲームで五輪出場を決めてくれると信じている。

AFC U23アジアカップ グループB第3戦 日本vs.韓国

 グループAはオーストラリアが敗退。開催国カタールが首位でグループリーグ突破。インドネシアがヨルダンに勝って2位でグループを通過した。一方、グループBは日本と韓国が勝ち点、得失点差ともに並び、このゲームで勝った方が首位突破となる。首位突破なら決勝トーナメント1回戦はインドネシア、2位通過ならカタール。当然、勝って首位通過を狙いたい。

 ところが、日本の先発メンバーを見て驚いた。布陣は4-3-3。内野航太郎がワントップで、右WGに藤尾、左WGに平川。中盤は川崎をアンカーに、右IH田中聡、左IH荒木。DFは右SB半田、左SB内野貴史。高井と鈴木海音のCBに、GKは野澤。なんと、田中聡、半田、野澤と3人が今大会初選出。UAE戦から7人を交代。中国戦からも8人が代わっている。対する韓国の布陣は3-4-3。チョンサンビンをトップに、右WGホンシフ、左WGホンユンサン。キムドンジンとチェガンミンのダブルボランチに、右WBチャンシヨン、左WBイテソク。CBは右からイチェウォン、イカンヒ、チョヒョンテク。GKはペクチョンボム。レギュラーのCBが二人、出場停止とケガで出場できない。

 ゲームは序盤から日本がパスを回して攻めていく。3分には左WG平河が仕掛けて、クロスに右IH田中聡。だがDFがクリアする。韓国は5バックで守備を固め、長いボールからカウンターを狙う。15分、CH川崎がミドルシュート。19分には左WG平河がミドルシュートを放つが、枠は捉えられない。次第に韓国のプレスも厳しくなり、日本の攻撃が停滞。44分には右WGホンシフがカットインからスルーパス、CFチョンサンビンが走り込み、クロスに左WGホンユンサンが走り込むが、CB鈴木海音がブロックする。前半はほとんど膠着したまま、スコアレスで折り返した。

 後半も日本がパスを回すが、チャンスはほとんど作れない。韓国は12分、中盤でボールを奪うと、CFチョンサンビンがドリブルで持ち上がり、左に流すと、左WGホンユンサンがドリブルからシュート。GK野澤がセーブする。13分、韓国はチェガンミンとキムドンジンを下げて、CHファンジェウォンとCHキムミヌを投入。さらに18分にはチョヒョンテクとチョンサンビンを下げて、CHカンサンユンとCFカンソンジン。イテソクが左CBに下がり、キムミヌが左WBに入る。一方、日本も、田中、川崎、平河を下げて、CH藤田、右IH松木、左WG佐藤を投入した。

 すると19分、右WG藤尾のクロスに右IH松木が競って、左SB内野がヘディングシュート。続くCKはGKペクチョンボムがパンチングでクリアするが、CH藤田がミドルシュート。一方、韓国も22分、右WGホンシフのパスからチャンシヨンがクロス。CFカンソンジンがヘディングシュートを放つ。28分、日本もCKの流れから、左SB内野のヒールパスにCH松木が走り込み、クロスにCB高井がヘディングシュート。しかし枠は捉えられない。

 そして30分、左CBイテソクのCKに左WBキムミヌがヘディングシュート。これが決まる。韓国が先制点を挙げた。31分、左IH荒木のミドルシュートは枠の上。32分、日本は内野航太郎と荒木に代えて、CF細谷と右IH山本理人を投入。松木が左IHに回る。しかし36分、右サイドコーナーで右WGホンシフがキープすると、中へのパスを受けたCFカンソンジンが反転でCB高井をかわしシュート。GK野澤がファインセーブでブロックする。

 その後は攻める日本。右IH山本のパスをCF細谷が反転してシュート。DFブロックのこぼれ球をCH藤田が左に展開。左WG佐藤がシュートするが、枠は外した。40分、左SB内野のサイドチェンジから、右WG藤尾がクロス。左WG佐藤の戻しをCH藤田がシュート。だが右WBチャンシヨンがブロックする。41分、韓国はイチェウォンに代えて、CHペクサンフンを投入。ファンジェウォンが右CBに下がる。直後の右IH山本のCKにCF細谷がヘディングシュート。だが枠を捉えられない。

 アディショナルタイムは9分。45+3分にも右IH山本のCKにCF細谷がヘディングシュート。だがGKペクチョンボムがキャッチする。45+7分にはCH藤田の縦パスを右IH山本が落とし、右SB半田のクロスに左WG佐藤がヘディングシュート。だが左ポストにはね返される。そしてタイムアップ。1-0。韓国が勝利。グループリーグ首位突破を決めた。

 日本は2位通過。これで決勝トーナメントは開催国カタールと当たることになってしまった。松木や藤田、佐藤らが途中交代で入った以降、日本が押していた。大岩監督はどうして彼らを先発から起用しなかったのだろうか。しかも初出場が3人。中2日の連戦はわかるが、五輪出場を考えれば、首位突破は最重要だったはず。多少の無理をしても、首位で突破できれば、インドネシア戦は多少メンバーを落としても戦えるはず。後半勝負を考えていたにしても、前半からもう少し攻めていきたかった。悔いが残る。松木や藤田にしても同じ思いだろう。こうなれば、その思いを次のカタール戦にぶつけていくしかない。次こそ絶対に負けられない、かつ相当に難しく厳しいゲームになる。

問題はロシアより、むしろアメリカだ

 昨年の6月に発行されており、また、収録されているエマニュエル・トッド池上彰が対談してから既に1年以上が経っている。そしてウクライナ戦争はいまだ終わっていない。昨年秋にはイスラエルのガザ侵攻があり、両者の戦闘も、一時ほど詳細には伝えられなくなり、一段落した感がある。だが、ウクライナ戦争はまだ終わっていない。ではいつ終わるのか。

 エマニュエル・トッドは、ロシアにとって、いまこの戦争をやめることは全く利益がないと言っている。一方、アメリカもいまの状況ではやめられない。ではいつまで続くのか。トッドは「5年」と言う。5年後、世界はどう変わっているだろうか。

 事由と民主主義という西洋的価値観を押し付けようとするアメリカに対して、権威主義でありつつも、あらゆる文明や国家の特殊性を尊重するロシア。日本にとってどちらがいいかと言えば、後者の方がいいと思うけども、池上彰は、それは「フィンランド化」であって、「中国と戦争にならない程度に、中国を刺激しないという形で付き合っていくのは個人的には嫌だ」(P165)と言う。どうなんだろう? 小さくとも、中国からも、世界からもリスペクトされる国家であることは可能ではないだろうか? 少なくともアメリカの腰巾着であり続けることは近いうちに不可能になりそうだ。日本の選択。エマニュエル・トッドは少なくとも池上彰よりは世界の国々の動向をよく見ているように感じる。

 

 

○「ジャーナリスト、メディアが反ロシア感情が始まるスタート地点」というふうにとらえている…。そして…ジャーナリズムという思想のなかでは、自由に対してひじょうに抽象的な考え方があったり、ちょっとエリート主義だったり…そしてロシアに対する敵対心もあったり(P42)

○経済のグローバリゼーションが進んでいくなかで、「生産よりも消費する国=貿易赤字の国」と「消費よりも生産する国=貿易黒字の国」との分岐がますます進んでいるんです。ロシアはインドや中国とともにまさに後者の代表で、天然ガスや安くて高性能な兵器、原発や農産物を世界市場に供給する「産業大国」であり続けています。/一方で、前者の貿易赤字の国とはアメリカ、イギリス、フランスなどです。材の輸入大国としてグローバリゼーションのなか国の産業基盤を失ってきている。(P63)

○ロシアと中国は、いまこの戦争をやめることに対して、全く利益がないわけですね。続けることにこそ意義があるといいますか。逆にアメリカは、自分のしかけた罠にハマってしまったような状態にいます。…ロシアと中国はいま、そんなアメリカを「つかんでやった」と思っているはずなんです。そして、このアメリカ的ヘゲモニーを崩壊させるのはいまだ、これが機会だというふうに考えているはずです。(P85)

ウクライナ戦争におけるアメリカのそもそもの目的は、私からすると「ロシアとドイツを引き離すこと」だったわけですね。…ドイツは、ここまでアメリカにひじょうに従順だったわけです。けれども、アメリカの工業面での弱さというのが本当に表れてきたときに、ドイツがどういった行動に出るかというのは注目していくべき点ですね。…このウクライナ戦争から「抜け出す」ドイツというのも、想像することはできると思います。(P138)

○フランス…は、先進諸国のなかでも経済改革…をなかなか進めなかった国なんです。…子どもを作るということに関しては、経済的な合理主義…からいったん脱することで、子ども…はもしかしたら増えるかもしれない…日本は経済合理性から脱するべきなんですけれども、ぜひ、フランスの非合理主義的な経済政策…をモデルにしてほしいと思います。(P167)