『Tom Yam Goon (邦題『トム・ヤム・クン!』(2005))』

 
 既にタイ版DVDで何度も観てはいたんだけど
「でもこの画面はスクリーンで観るべき意味も価値もある筈… 」
 って思ってましたが、その予感は間違い無く大画面に耐えうる迫力と緻密さ、そして抒情に溢れた濃い濃い濃い映画でございました。
 はじめは
「でももぅDVDで観たじゃん」
 ってノリ気ではなかった妻も冒頭からグッと掴まれて後はもぅ最後まで突っ走る様に引き摺られてEDクレジットでございました。いや荒いし語り口としては無茶っか強引なんですけど、この監督らが
「今、自分達の国の為にはこれを訴えなければ!
 そして、多くの人に観てもらう為にはエンターテイメントにしなければ!」
 っという情念の熱さを思えば瑣末な事を突付くだけもぅ野暮かと。
 
 ただ、こうして日本で公開された事で台詞が解った部分は有難かったんですけどね… ギャガさんの売り方は私、納得いきません。
 
 まずパンフレットがクズ。
主演インタビューが載ってない上に、安易なつくりで¥600ってのは詐欺かと思いましたが、それ以上に
 取り戻したいがいる
 取り戻したいがある
 ってコピーはどうかと。
 既に観終えた人ならばここは
 取り戻したい家族がいる
 取り戻したい誇りがある
 だと思いませんか?
 
 加えてエンドロールにスカパラの曲を使った日本版独自のメイキングシーンって仕様にしてますが、これもどうかと。タイ版もメイキングでしたが少なくとも興醒めになつような素材は使わなかったし、スカパラのテンションの高い楽曲の後で無理からタイ版の荘厳なスコアに繋げるのなんて無理あり過ぎです。スカパラの楽曲は悪くないだけに、なんか凄くガッカリしたんですが… まぁ『Fearless』を『SPIRIT』に改竄されたのを思えばまだマシなんでしょうけど、しかしコレが最初ではないんですよねギャガさんわ。
 
 タイという国と後進国で貧乏でバカやってる国って扱いにする宣伝をこれまでもしてきましたが、その結果っか成果って出てるんでしょうか。私らが観た時なんて妻も含めて6人でしたよ劇場。『Ong-Bak』にしろ『Born To Fight』にしろ本作にしろ、確かにタイの憂国映画ではありますが、血なまぐさくてもエンターテイメントに撤してる本作をバカ扱いにしての余談を与えておいてクチコミが拡がるとでも思ってるんでしょうか。んなわきゃねぇのに… そりゃまぁ
「感動しました!」
トニー・ジャー最高!」
 なんて試写会後の一般人コメントCMも願い下げですが、もうちょっと真摯に扱ってやってもいいんじゃぁないんでしょうか。だって今の日本映画界が、これを馬鹿扱い出来るほどの作品を作れちゃいないでしょ? 作品のメッセージだって解ってる筈でしょ? それなのにあえてそういう扱いをして恥かしくないですか?
 
 
 
 … っと、まぁ文句はありますが、未見の人でアクション映画好きならば是非! 『Ong-Bak (邦題『マッハ!!!!!!!!』)(2003)』が好きだった人ならば特にオススメですよ。