池袋演芸場 昼席。

 

 窓口と入り口が隣接してなさげで地下へ、それも二階へと降りる綺麗なんだけど暗い階段は奈落へと続く道のような… 周辺の風俗店やらのロケーションといい、チョイと怯えつつも辿り着く場はえらく綺麗で、とりあえず開演前だし人気も感じないのでと喫煙コーナーで一服をしようとするとモニターがあってどうやら前座さんの一席、「転失気」がかかっていて、その設備も舞台も綺麗で、確かに最近改装っか新築なのかもしれんけれど確か4月頃にNHKBS2の『お好み寄席』で権太楼師が「不動坊火焔」を演った時にこの池袋演芸場について
「古くて汚くて客が来ない寄席で、いるのは爺と婆ぁばかり」
 と言っていけど千三つとまでは言わないものの話半分以下だよと、一服後にそっと開けたドアの向こうの客席が既に満員だったのにのけぞりつつ思ったものの既にデカイ図体を人様の迷惑にならない場所に収める場所なぞもぅ通路に設置されてるパイプ椅子の補助席しかなく、脚は伸ばせるもののさて4時間もこんな椅子で大丈夫なのか自分?っと思ったもので… 浅草演芸ホール末広亭では結構キツかったもんなぁ… っと多少ゲンナリした気分になったもののぽっぽさんの明るく可愛げのある高座姿と客席のいい雰囲気に姿勢を正したものですが、結果から言えば私にはピッタリな番組と言うか出演者の方々ばかりでしたわ。
 あくまでも好みの話ですが、あんまりベタベタした粘着質なのって駄目なんですよ。言葉の響きが良くてカラッとしてるのが好きなもんで今日の出演者とその構成は聴いていて観ていてとても気持ちいいんですよ。そりゃまぁ日常的に寄席に来れる人には何て事の無い番組で噺なのかもしれませんが何せコチラは寄席の無い東海地方の田舎物、素直に観た事のある師匠も初めて観る師匠もそれぞれ楽しませて大笑いさせて頂きましたよ。っか普段には無いくらいに笑った為に顔は痛くなるわ体は熱くなるわ… 自分にとっては出演者にもよりますがまた来たい、っかこの場に妻を連れて来なかった事を本当に後悔しましてな… っか、ホント、私にはどれも良かったんですよ。間合いが気持ちと言いますか… って事で以下は適当な感想がダラダラと長く続くのでお閑な方だけ
 
春風亭ぽっぽさん、滑舌やら何やらより雰囲気の明るさと愛嬌があるのがいいですよな。確かにこれから歳をとってゆく事で失われる部分もあるし将来的な部分では今のままではいられない事を思うと大変だとは思うのですが、落語という話芸で愛嬌があるのってのは結構重要な気がするんですけども。何と言うか、いくら端正でも可愛げや愛想が無い人のする落語ってのは私にはどうも聴いていて居心地が良くないんですよね…
川柳つくしさんも初見。またエライ師匠さんの弟子に… って思うものの「弟子ではなく介護」と言っちゃうあたりはお家芸?(笑) 新作ですが濃く「女」を出さないでのこの噺、ぽっぽさんに続いて気楽に笑わせさせてもらいましたわ。
ひびきわたる師、ベタなネタをベタベタに演じずにつららっと繋げる間がいい感じ。いい意味でお客さんを見過ぎないし頼らない安定感は本来こういう漫談が苦手な私も楽しんだもので。
古今亭志ん五師は声と口調がいいですなぁ… 私は低音がちゃんと出せる人って好きなんですけども詰め過ぎない間合いといい、古典落語を聴いてるって充実感がありました。
古今亭志ん駒師、カラっとしたお客あしらいの口調がとても気持ち良かっただけにマクラのみだったのは残念。
笑組、緩急のつけ方といい間を詰めに詰めた紳竜流が主流の今時のTVが主の漫才と比べて安心して聴いて笑えれたものでしたわ。
柳家さん喬、ややお疲れ目に見えまして実際マクラと踊り(茄子南瓜)だけだったんで残念ではありましたが、前々日にたまさか観たのとは男型と女型の違い以前、芸人としての腕の差がモロに出ていてこんなにも違うものかと。極めん所をまさに極める事でメリハリもつけば流れも出来るものですが、多分、そんなに気ぃ入れてのものではない分だけ所作の1つ1つから次への移行の仕方等観ていて楽しかったですな…
三遊亭金也師の「干物箱」、一生懸命だとは思うもののもぅひとつ私にはピンとくるものではなくちょっと睡魔に襲われつつ。決して出来が悪いとは思わないんだけども、序盤の若旦那と親父さんとの部分を端折ったわりになんか長いなぁっという印象が最後まであったんですが… まぁコレには理由があったんで仕方無いですよね… でも品は良かったんではないかと。
大瀬ゆめじ・うたじ師の漫才、これまた客をいい意味で見てないもので、それでいてちゃんと客席の温度差に対しての手の入れ方ってばベテランの腕、なんですかね…
柳家権太楼師はチョイとお疲れっぽい感じがしましたが流石でしたね… 早足で駆け抜けるような末広亭とは違っての「蜘蛛駕籠」は前半まででしたが解り易い表情と実に細かい客席の気配りっぷりは圧倒、そして爆笑しましたな… いい中トリでした。
古今亭菊志ん師は兎に角スピードがあって軽くテンポも良く聴いていて気持ちよかったですわ。中入り明けのザワついた感じの客席がいい感じにまとまりましたもんな…
柳亭市馬師、声がいいですよね… それとあの落ち着いた雰囲気。シレっとしてるけどツレないワケでもなくこれまたいい心持ちになりましたわ。っか、こういう噺家さんタイプに弱いんですよ、私は。
翁家和楽社中、三人って事での空間の取り方が単純に良かったですな。曲芸の技術がいくら凄くても見せ方が小さいんじゃぁこういう芸能はつまらないですしね…
川柳川柳師は本当にお元気ですな。やってるネタは末広亭と殆ど同じなんですが滑舌が良くて音程もしっかりとれていつつテンポが良いなら好みではなくてもそりゃぁ聴いてしまいますがな… って事で、個人的には大笑いしたし満足。この時妻は木馬亭に行ってたんですが誘わなかったのが本当に残念に思ったものでした。
 
 
 寄席ってよりも小劇場といった方が良い小屋で、施設も綺麗。ただ場内の段差やらトイレの問題等、車椅子等の障害者の方には利用がチト難しいかな?って気はしますが、箱の大きさやらも込みで私には気に入った劇場でありましたわ。これまた番組次第ではありますが、また来たいなぁ… っと思う寄席でしたわ。
 

*1:正式な題名名は知りません… ご存知の方はお教え頂ければ幸いです。

*2:コメント欄で教えて頂きました。メカパンダ様、多謝。