『Ong-Bak 3 (2010)』- Region 3

DVDジャケ。

 

 
囚われの身になったTien(Tony Jaa)は斬首刑となるところをかつての国王の部下の機転によって解放されるのだが、生死の境目から復活をしたものの彼の肉体は苛烈な拷問を受け続けた為に手足を満足に動かす事すらままならぬ状態になっていた。
 一方、国王と王妃を惨殺し王子のTienを追放して王位を簒奪して安泰となった筈の悪玉だったが、謎の男による呪法による幻覚幻聴に悩まされていた…

 
っという粗筋は私はタイ語がカケラも解らないし字幕無し故に想像で、故に本作の感想も間違ってるでしょうからそれでもってお時間に余裕がありネタバレがあっても気にしない心の広い方だけ…
 
前作を観て私はてっきり古代を舞台にした伝奇物っか貴種流離譚活劇だと思ったので後編は本当に楽しみでした。後半で爆発するからこその重苦しさや陰惨さ、お国は違うけど中国の武侠映画とか日本の時代劇とか、あえて現代ではないからこその荒唐無稽で血沸き肉踊る大活劇になるんじゃぁないのか、と思ってたんですが…
 
 ん〜…
 
 要はジェット・リーの『霍元甲 Fearless (2005)』(感想)がやりたかったのかな? とラップげな曲にのせての演舞でのエンドロールに思ったんですけども、プロットや進行、「復讐は皆を不幸にする。それよりも己に克て。」というメッセージは大体同じであっても才能があるからこそ傲慢となった為に熾った悲劇からの再生がドラマになり且つ中国共産(党)主義肯定プロパガンダ映画という芯があったからこそのブレがほぼ無かった『霍元甲』と比べると本作の場合は悲劇に落とされたのは生まれ故って理不尽だし。逆境からの復活も込みでのそこからの自立程度ならまだドラマになるけどいくら御坊様に諭されたからって更に一足飛びに「復讐は皆を不幸にする。それよりも己に克て。」げになるのは流石に無茶が過ぎるし、わざわざ『Ong-Bak (2003)』に繋げる為にあの仏像とジョージ役のペットターイ・ウォンカムラオを登場させたりしているけど全く繋がらないとか物語の目的とか終着点が曖昧だから真の悪登場!とか本作でやられたりとかのテコ入れも全てバラんバラんなままになっちゃってるから折角のアクションにしても主人公の感情や状況がストーリーの情況と乖離しちゃってて凄いしダイナミックではあるけどカタルシスや共感にならないんですよな。演出も結構散らかってるし。
 
パフォーマンスとして、となると、幾星霜の月日を重ねて「演」じ「舞」う為の型を創りそれを撮るフォーマットを蓄積し洗練されていった香港映画の歴史の中でも最高の演舞者の一人であるジェット・リーと比べてみるにその香港映画も元にしての型とフォーマットはよくやっていても見劣りはするし表現者としてのトニー・ジャーの身体能力の高さはあっても美しくはないし。そこを超えるのがアクション場面でのネタだったんだけど本作ではネタ切れによる同じネタの使い回しがある、という点で正直言ってガッカリしてしまいましたわ… いや、『霍元甲』のタイ版を制作するのが駄目ってんじゃぁないんですが折角前篇であそこまでのアクション連発… 特に終盤のはホント凄いですよね… をしたのに、と思ってしまうんです。
 
劇中のスコアが気を衒ってないしありがちっちゃありがちなんだけどその分直球で盛り上がるものだったり、自然や情景の撮り方は好みなんですよ。最近Blu-rayで『Ong-Bak (2003)』を観直したからよく解るんですが、過去作品がアイディアやネタをトニー・ジャーの身体能力で達成した凄みはあるんだけど殺陣としては間の取り方やらが結構単調と言うか一本調子だったと気付くくらいに本当に凄く厳しいっかハードになってるしで期待値が上がり過ぎてたのかもしれませんが… しかし… 
 
製作のゴタゴタが色々あったから、というのもあるのでしょうが本作がタイで公開された同じ月にトニー・ジャーは寺院に入門し仏僧になったそうです。期間が何時迄かは明らかにされておらず、実質俳優業の引退とも言われているのですが… 勿体ない、と思う一方で、仕方ないかな…とも思います。
 だけどもし、Prachya Pinkaew監督と喧嘩別れをしなかったのならば、2006年に軍事クーデターが発生しなかったら、せめて状況をキチンと管理し判断出来るプロデューサーとマネージャーが揃っていてくれたのなら、例え同じ脚本であっても、もうちょっと違った作品になっていたんではないのかなぁ… そう思うと、なんか切なくなりました、わ。
 
 
 
さて、DVDソフトとしましては…

  
『Ong-Bak 3 (2010)』- Region 3
 
 Studio: mongkolfilm
 Theatrical Release Date: 5 May 2010
 DVD Release Date: 11 August 2010
 Run Time: 94 minutes
 
 Aspect Ratio(s):
 Anamorphic Widescreen 1.85:1
 
 Available Audio Tracks:
  Thai (Dolby Digital 5.1‚ Dolby Digtal 2.0)
 
 Subtitles: None
 
 DVD Features:
 ・Trailer (2:21)
 ・Interviews (6)(30:33)
 ・Maiking (14:19)

 
紙製のアウターケース入りの本品、画質と音質は文句無しですね。美麗でクリアーなもので、やや暗い場面が潰れるトコはありましたが元々そういう画面処理をしてるしDVDの解像度からいけば仕方ないんじゃないんでしょうか。
 
特典は前作が予告編だけだったのと比べると約50分も収録していて豪華になりましたよ。ただ画質・音質はVCD程度なのが難点ですが、メイキングも含めてお得感がありますよね。いやまぁ『Ong-Bak 2』も特典ディスク付のデラックス版が出たんですけど100分無い本編でわざわざディスクの入れ替えしなきゃならんのはカッタルイですしね… って事で品質的にも内容的にも満足したんですが、しかし本編が、なぁ… っとぉ。