キルギスの戦略的重要性考察

ウクライナ地政学的に観ると、「東欧を制するものはハートランドを制し、
ハートランドを制するものは世界を制す」というマッキンダーの原則にのっとり、
ドミノ化戦略によってリムランド勢力に組み込まれているように見受けますが、
同様の観点からキルギスの状況を現在どのように理解しうるのか、
一種の知的訓練として考えてみたいと思います。

特に今回は結論を出すことを目的としてはおりませんので、
ご了承ください(っていつものことか)。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/kyrgyz/data.html

ブレジンスキーによると、
ロシアの周辺国で重要な国としては、ウクライナを除くとアゼルバイジャンカザフスタンであるとのことです。
前者はロシアからイランに抜ける回廊であり、
カスピの石油資源を算出できる国であること。
後者はロシアと国境を接する唯一の国であり、
国土の広さからロシアの軍事的圧力から地域諸国を守る障壁となっていること。
また民族的に多民族国家であるため、ナショナリズムによる国家の安定が
望みがたい状況であることがあげられています。

このカザフスタンに隣接するキルギスは民族構成が多様であり、鉱物資源は豊富であり、
観光地として開ける可能性があり、中国とはさまれているという点が構成要素として上げられております。

さて、以上を踏まえた上で
次にモーゲンソー的(リアリスト的)な国家の強さを測るフレームワークにかけてみたいと思います。
デカルト的な要素還元主義的なフレームワークなのですが、
以下の要素に落とし込んで考える方法です。
1.人口
2.軍事力
3.経済力
4.国民性
5.国土など地理的要素
6.技術力
7.文化等

以上によるならば、
1. 500万程度
2. 政権転覆時に軍隊が動かなかったくらいだからおしてしるべしでは・・・?
   地上軍8,500人、空軍 航空機50機では隣国に対するプレゼンスは低いといってもいいと思う。
3. 以下のリストを見ると、現在は比較的安定しているといえますが、
外国の経済環境の変化を強く受けるといえそうです。
1.主要産業 農業・畜産業、軽工業、鉱業(金採掘)
2.GNI 14億5,400万ドル(02年:世銀)
3.一人当たりGNI 290米ドル(02年:世銀)
4.経済(実質GDP)成長率 6.7%(03年:CIS統計委員会)
5.物価上昇率 3.1%(年率)(03年:CIS統計委員会)
6.失業率 2.9%(03年:CIS統計委員会)
7.総貿易額 (2003年:CIS統計委員会)
(1)輸出 5.82億米ドル
(2)輸入 7.17億米ドル
8.主要貿易品目 (2002年:キルギス統計委員会)
(1)輸出 繊維製品、鉱物製品、金
(2)輸入 鉱物製品、機械設備、化学工業製品
9.主要貿易相手国 (2000年:CIS統計委員会)
(1)輸出 スイス、ロシア、アラブ首長国連邦
(2)輸入 カザフスタン、ロシア、ウズベキスタン、中国


4.国民性はキルギス人50パーセント、ウズベク人13パーセント、ロシア人15パーセントより、キルギス人が優勢とはいえ、マイノリティに対して安定的な構成比ともいい難いことがあげられます。気質的なことは現時点ではよくわかりません。

5.地理的要素は軍事的には攻め込まれづらい環境だと思いますが、攻められたらあっという間でしょう。また中国西部とカザフスタンをつなぐ位置にあるという点で、この地域の
パイプ的な立場を主張できる可能性があります。

6.ロシア人が流出していることから、
現状ではそれほど強いとはいえないでしょう。

7.ウズベキスタンは大帝国時代の首都がありましたが、
それとの対比で言うとこれといって特筆する要素でもないと考えます。





以上の要素から判断するなら、
地理的要素以外にこれといって特筆する点がないと考えられます。
反対に、もしこの国が更なる民主化をするのであれば、
中国北西部(沿海部に比して貧しい地域)や中央アジア、そして中央アジアを通じて
ロシアに対し影響を与えることができる。
その意味では、民主主義国家(あるいはリムランド勢力)にとって戦略的な飛び地として考えられるかもしれません。

つれづれなるままに書いてみましたが、
現在の環境変化は、この地域に関して影響を及ぼせる適当な国家が見つかったということで
(例えばカザフスタンじゃ大きすぎるしロシアの関心の度合いがより高い。また経済援助というツールのコストも相対的に高い)、
やはり今回の政変は奇貨というべきでしょう。
迅速な援助(=介入)による影響力の増大を望みます。