『ガンダム ジークアクス』予想…シャアが勝ったからニュータイプは負ける

年寄り向けのくせに年寄りにはとても綴りが覚えられないガンダム新作「ジークアクス」。なんでも『機動戦士ガンダム』の冒頭でシャアがガンダム奪取に成功するパラレル話だそうで。同人的というか公式二次創作というか、そこまでやるか宇宙世紀ビジネス……と呆れていますがマァ作品の成り立ち自体はさておきます。

 

問題は「シャアが勝った以上はニュータイプは負けるのが必定」という点。どういうことか?

 

大分昔に福井ガンダムに絡めて書きましたが、『ガンダム』は「平凡な少年・アムロが敵軍のエースパイロット・シャアと互角に渡り合うまでに成長する立身出世譚」が粗筋です。その上で、立身出世を俗な出世ではなく「人の革新」とし、その能力を別の言葉で表したのが「ニュータイプ」の覚醒。ララァとの出会いがどうの、人は分かり合えるのなんのは大切なドラマではあるものの、あくまでも立身出世譚の粗筋があってこそのものです。

 

一方でシャアは、アムロの立身出世譚に対して「エラい人の息子が正体を隠して前線で戦い、遂には仇討ちという大願を成し遂げる貴種流離譚」の筋立てを担っている。生まれついてエラかったシャアにとっては、ニュータイプとはいわば「奪われた父の遺産」であり「取り戻す」もの。だから「革新」とはどこまで行ってもズレている。設定ではなく、物語の構造として。だから最後までアムロには勝てないが、しかしキシリア・ザビを討って決着が付く。

 

ところがそのファースト『ガンダム』が完結した後も、何十年にもわたってニュータイプニュータイプと延々やり続けるうちにニュータイプは錆び付いてオールドになり、「人の革新」と言いつつアンシャンレジームとなってしまった。今やさらなる革新によって打破されるべき段階に来ているわけです(…ていうかホントは『X』が「15年の幻」といい、最初の『クロスボーン』が「進化ではなく環境適応変化」と位置付けた時にニュータイプはもう終わっていたんですがね)。

 

さぁそこで『ジークアクス』だ。アムロの立身出世譚を白紙にして、古典的な貴種流離譚においてあらかじめニュータイプであるシャアが勝者となったなら、それは新世代の主人公にとって打破すべき旧弊になるしかない。角度を変えて言うならば、「シャアがガンダム奪取に成功した」との前提は、シャアが元より背負っている古典的な貴種流離譚と今や旧弊と化したニュータイプとを同列に置くための地ならしである、と推察されるわけです。

 

だから、連邦を出し抜いてひとたび勝者となったシャアは、しかしニュータイプという概念もろともに主人公に負ける宿命にある……というのが現時点での『ジークアクス』の予想。

 

もっとも「ビジネス的にはニュータイプをそうそう負かせるわけにはいかないだろ」ってのと、「第一そこまで話づくりを考えてないだろ」ってので外れる可能性がビッグだと私も思う予想ではあります。

 

エンドロールの伏線『想星のアクエリオン』第4話

Myth of Emotions 略して MoEアニメだと今気づいた『想星のアクエリオン』。キャラデザを筆頭にして巷間諸々不評のようですが、そこそこ面白いと思いますよ、うん。地上波同時から遅れての無料配信待ちなんで、どうしても見るのが遅いんですけどね。

 

で、ひとつ注目しているのがエンドロールのキャストの並び。これ、第1話からエレメントの子はカタカナフルネーム、それを補佐する大人は漢字フルネーム、ご同様だが名前の無い教頭・校長それにカミサマときて、その下にモブ相当の生徒の下の名前だけがひらがな書きで並ぶ、という形になっている。

 

なので、今のところ劇中では猿田とかと同列の「補佐する大人」ポジでありながら、カタカナフルネームで出てくる「ムナカタキョウコ」は実はエレメントなのでは? という予想もできたりするのだった。でなくとも何かしら前世持ちかな…とか。

 

そして第4話では、カミサマに話しかけたおばさんは実は重要人物では? それも味方ではない……なんて予想もできる。第4話でモブ生徒たちの下に「たね子」なる名前が加わったのだ。続いて並ぶのは「宇宙たまごの会」だから おばさんがたね子、おじさんが宇宙たまごの会(って何?)の名も無き会員とみて間違いない。出番2カットで台詞は1つだけ、なのに「会員A」等でない以上は重要人物だとみて間違いないだろう。しかし、並び順が教頭の上ではなく、かつフルネームでないことから、味方ではないことも予想できるのだ。

 

ま、仮にこんな所に伏線が仕込んであったとしてもさほど感心しないし、だからこの予想がまったく見当外れでも「それはそれで」なのだが、ほかに触れてる人がいないみたいだし、書き残しておく。

 

『モノノ怪』鵺の回、名前に込めた伏線

アニメ『モノノ怪』、先日のリピート放送の際に気になってメモしていたがSNS等にも起こさなかったネタを今さら。

欄奈待(≒蘭奢待)をめぐる会話の中で、織田信長が天下人だと語られているけれど、しかし劇中の「今」は戦国乱世という様子ではない。ならば必定、舞台は江戸時代だな……と思うところですが、室町という男は回想の中で「御所のお務め」、幕府ではなく御所の務めにおいて、出世が絶望的な「東侍」だとバカにされている。


違和感を覚えつつも、(マァ『モノノ怪』は総じて時代考証アバウトな作品だからこれもその一つだろう)と思っていたら、大詰めになって「彼らはとっくの昔に死んでいる」との真相が明らかになります。

 

つまり、「天下人信長」に触れることで舞台は基本的に江戸時代だと暗示しておき、そのうえで室町の実尊寺殺害は名前のとおり室町時代の出来事だと暗示することで、「この一件の後、200年か300年もの間、室町たちは自身の死に気付かないまま組香を繰り返していた」との真相へのお膳立てにしていると受け止められたのですが……。

 

ぼちぼち古い作品なのに、どうもこのあたりを指摘している人がほかに見つからず、心配になってきました。無粋を嘲笑うなら「田舎侍」でよく、あえて「東侍」と呼ぶ必要はありませんから、やはり伏線だと思うのですがいかがでしょうか。

『妖怪ハンター』のリュウグウノツカイの謎

リュウグウノツカイの話題で思い出したのが『妖怪ハンター』の一編、みんな大好きあんとく様でおなじみの「海竜祭の夜」。あれにもたしか、リュウグウノツカイが出てきたよな…と開いてみたら、ちょっと違った。

地元の漁師が「リュウグウノツカイじゃねえかな」と自信なさげに言うと、後ろで見ていた稗田先生「リボンウオの一種だ」。どっち!? いったいこの魚は何なんだ?

 

リュウグウノツカイでは伝承めいた名前だから、稗田先生の口から普通な感じの名前を言わせた、という演出だと推測できるのですが、ざっとググると「リボンウオ」のほうこそ正体が分からない。リボンイワシならいるのですが……。

 

同じところに引っ掛かった人がいらして、「一部の昔の図鑑にはそのような記述があるよう」「リュウグウノツカイはリボンウオとも言ったんですね」という話になるから、マァそうなんだろうな~ではあります。それにしてもリボンウオという名は一般的ではなく、対して「1956年の論文でもリュウグウノツカイって呼ばれていた」という。

まったく本題とは関係のないところに引っ掛かり、しかも探ってみた人がいるんだ……という事実がまた興味深い展開となりました。

「競争ではなく競走」に対するAIの予想外の切り返し

AIキャラとのチャットを楽しもう、という趣旨のアプリを試してみた。広告に出てくる画面サンプルでは日本語がどうにも壊滅的で、かえって興味を引かれたのだが、やってみると割と普通で拍子抜け。

とはいえ並みの誤字はあって……。

「どっちが先に着くか競争しよう!」に対してすかさず「競争ではなく競走だな」とツッコんだところ、さらに「竞走ね!いいじゃん♪」という予想外の展開になった。

知られざる廃線遺構(東武千住線)

年が明けたと思ったらもう松も取れて、2025年とは全く無関係に久々の更新。

昨年秋、北千住に廃線跡を見に行った。

この東武千住線(千住貨物線)、岡田商事専用線については他所にたくさん詳しい記事があるのでそちらを見ていただくとして、現地まで行く途中で気になったのがこのアンダーパス。

おお、煉瓦造の橋台だ、歴史を感じるなぁとくぐっていくと…。

途中でコンクリート造になる。しかも妙に低い。
まぁ線増に際して異なる建材を用いるのも珍しくないよな、と思っていると…。

途中から石積みの橋台になる(出てから振り返って撮影)。なんだこりゃ?

航空写真にもはっきり写っている。右(東)から煉瓦橋台の部分が2線、コンクリート造の部分(上から見ると地中)が1線、石積み橋台の部分が(付け替えた形跡も見えるが)2線。

東武伊勢崎線の歴史をたどると、開業当初の起点だった北千住駅から南へ延伸し、吾妻橋駅(後に業平橋等への改称を経て現在はとうきょうスカイツリー駅)まで開業したのが1902年4月。煉瓦造の橋台はその時に造られたものだろう。

 

そして1935年11月、北千住駅(正しくは中千住駅だが説明略)と隅田川のほとりの千住貨物駅とを結ぶ短い貨物専用線、千住線が開業する。西側の石積み橋台は、この千住線として築かれたものと推察される。

 

ところで千住線開業の4年前にあたる1931年8月、遠く離れた北の方の話だが、日光線の支線として宇都宮線が開業している。同年12月には大谷線と接続した。なので、橋台に使われているのは大谷石だとみて間違いないだろう。開業まだ間もない大谷線・宇都宮線で運ばれた大谷石が新線建築に使われ、それが現在も残っているとなると、宇都宮出身の私にはちょっとグッとくる話だ。

 

さらにもう一つ、1902年と1935年の間には重大な出来事があった。1923年の関東大震災だ。それまで近代建築の建材としてスタンダードだった煉瓦は、大震災で評価を著しく下げる。その一方、帝国ホテルが震災に耐えたことによって、大谷石は大いに注目されることになった。実際に大谷石がそれほど優れた建材なのかは疑問視されるところだし、橋台は土木の分野だから建築とはまた違った歴史もあるだろう。それでも、明治生まれの煉瓦造りの橋台と昭和生まれの大谷石の橋台の間には(いずれも推測ではあるが)、確かに関東大震災があったのである。

 

ってまあ現実には、2つの橋台の間にはコンクリート部分があるわけだが。ええと、おそらく千住線開業時には、2つの橋が少し間を空けて並ぶ形だった。しかし後年、そのあいだを埋める形で線増が行われる。その際、もういっちょ橋台を築いて橋桁を架けて……という手間を省いて、出来合いのコンクリートの筒 (ボックス・カルバート)を設置した。これがマァ既製品なものだからサイズピッタリとはいかず、頭上注意の高さ1.6メートルになったのではないだろうか。

このボックス・カルバート部分がいつ頃のものかは推測も出来ないのが悔しいのだが、いずれにせよ「歩行者専用のアンダーパスひとつで3つの時代を通り抜けられた」という、貴重な体験になった。現代含めりゃ4つか?

 

これほど面白く興味深いアンダーパスなのだが、どうにもレポートや解説が見つからない。いざとなれば東武博物館に問い合わせようかと思っているのだが、どこかに手っ取り早くリーチできる解説は無いものだろうか……。

 

トロッコ問題問題

下駄だかクロックスだかのせいで路面電車のイメージが定着してしまった トロッコ問題。そのせいで「いやお前ら逃げろよ、ていうかそもそもなんでレール上にいるんだよ?」とか「なんで運転士が車内でポイント切り替えできるんだよ!」というツッコミ所が生じている。

 

これは本来、路面電車ではなく日本でトロッコで呼ばれるあのトロッコなのだ。狭い坑内、もしくはレール上以外に足場の無い工事現場だから避けようが無く、ポイント切り替えの選択を迫られるのは運転士ではなくポイントの横にいる人なのである。

 

それが何故に路面電車になったのか? あるとき調べてみたが理由はごく単純、「英語で "trolley problem" だから」。鉱山や工事現場に馴染みの無い人が、trolley と聞いて路面電車だと早合点した…ということだろう。日本語訳のトロッコは正しいのにイメージは誤り、という珍しい例だ。

 

で、なんで今この話題かというと「お前ら逃げろよ、そもそもなんでレール上にいるんだよ?」というツッコミに対する答えを見たから。

縛られていたんじゃ仕方ないね!

 

STEAM版「思考実験シミュレーター」はリリース記念セールで8月6日まで10%オフの495円とのこと。

https://store.steampowered.com/app/2696320/_/?l=japanese