七十二日目 沖縄の夜空 その2
北斗七星は綺麗に見えている、
ひしゃくの付け根の三等星メグレズもちゃんと見える。
柄の真ん中の星ミザールにくっついてるアルコルは見えない。
アルコルは四等星だから、今夜の空は三等星までのようだ。
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アルコルは寿命星という別名があって、
この星が見えなくなると寿命が近いという。
昔の空で昔の人の視力で四等星が見えないと確かにヤバイかも。
これを逆に勘違いしたのか、わざと話を作ったのかが
『北斗の拳』の「死兆星」なんだと思う。
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北斗七星の星七つは全部固有名を持っている。
柄杓の口の端から順番に*1
ドゥーベ(熊) α 天枢・天魁(貪狼)
メラク(腰) β 天璇(巨門)
フェクダ(股) γ 天璣(禄存)
メグレズ(付け根) δ 天権(文曲)
アリオト(尾?) ε 玉衝(廉貞)
ミザール(帯) ζ 開陽(武曲)
伴星:アルコル(かすかなもの) 輔星
ベネトナシュ(泣き叫ぶ少女) η 揺光(破軍)
別名:アルカイド(大きい棺台の娘達の頭)
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中国名の「破軍星」ってのはどっかで聞いたことがある。
この星に向かって戦うと必ず負け、背にして戦うと負けることはないと。
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榎本武揚が函館に渡った徳川幕府の船「開陽丸」は
ミザールの中国名からもらったそうな。
別名「武曲星」なのは軍艦にふさわしいような。
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ミザールの帯がよくわからないが、
こちらのサイトの解説がよかった。
アリオトとミザールは本来他の星の名前だったらしい。
アリオトまでの五つはおおぐま座の星座図を見ると納得。
ベネトナシュが別名を含めて異質で不穏なのは、
ドゥーベからメグレズの四角を棺桶、
三つをそれを引く女たちに見立てたものらしい。
北斗七星の回転方向を考えると
ウィキペディアなどの説明の「棺を引く」のではなく、
「泣きながらついていく」んだと思う。
「アルカイダ」とはアラビア語の冠詞が同じだけで関連はないみたいだ。
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矮性アルストロメリアに品種名に北斗七星の固有名をもらったものがある。
通販カタログで見ると「ミザール」ってのが白地に赤の斑が入って
かわいらしかったし、名前もいいしで、頼んだ。
花が咲いてみたら、赤地に黄色の斑だった。
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またやりやがったな>大和農園。
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ピンク水仙で香りがゆかしい「ロマンス」も
色だけ同じ大輪のを送ってきただろう。
大輪だし、香りがバニラで、あの花は名花だとは思うけど、
私はホントの「ロマンス」が欲しかったんだ〜!
こう重なると単に間違えたのでなく、
在庫切れだけど、同じようなもんじゃん、どうせわかんないさと
確信犯で送ってきている。絶対。消費者をなめてると思う。
生協でも苗の状態がよくないから、大和農園、地元だけど頼まないんだ。
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北斗七星について語り出すと尽きないなぁ。
大好きな星。あの柄のカーブを見つけるとうれしくなる。
沖縄では地平線の下に北斗七星が潜ってしまう。
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カーブを延長するとオレンジ色の星がある。
牛飼い座アルクトゥルス、日本名「麦星」、
『ノンちゃん雲にのる』でノンちゃんがもらった星。
私も五月が誕生日*2なので、
この本を初めて読んだ小学校の低学年から、
勝手に私もこの星を自分の星にしてみたもんだ(^-^;。
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そのカーブをまたのばすとさっきの星よりは少し暗いが
白い清らかな星がある。これが乙女座主星スピカ。
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海に向かってまだ距離がある。
ということは獅子座はまだ沈んでいない。
この二つの星は「春の大三角形」を作ってる。
「春の大三角形」はほぼ正三角形だから、
空にコンパスを当てて二つの弧の交点をさがすと
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あった。二等星獅子座のβ、デネボラ。
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この高度だと獅子座は頭を海につっこんでる。
Yahoo!きっず星空で今見ると
七月二十日午後九時だと火星や土星もいたんだけど、
水平線あたりに雲があったから見えなかったのかな。
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このあたりのこと、星の見つけ方から
すごくおもしろく書かれたページ見つけた。
星空の連帯 北斗七星の見つけ方
【星空の連帯】2002年4月 渡部@大阪市立科学館
ここが元のサイトみたい。
大阪市立科学館はいまだにプラネタリウムを生解説する
珍しいところなのだが、私の聞いたワタナベさんがこの人なら、
観客のつかみが多分一番うまい人、内容もおもしろかった。
夏の星 大都会住民用
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視線を南に転じると蠍座が堂々としてる。
都会じゃ建物がじゃまでさそり座の全貌を見るのはむずかしいのだ。
うちんちも向かいに家があるから家の隙間から見る。
バス停からの南向きの坂道正面に南中してるときなら、
なかなかいい眺め、滅多にお目にかかれないけれど。
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次女に「あの赤い星が見える?」と訊ねる。
「うん」
「あれが、サソリの心臓、アンタレス。
その両側ちょっと下がったところにちょっと暗い星見える?」
「うん」
「その右側に縦に三つ星見える?」
「うんん?・・・あ、わかった!」
「じゃあ、縦の真ん中の星とアンタレスの延長線あたりに
二つ並んでキラキラしてる星は*3」
「んん・・・あった!」
「それがサソリの尻尾、毒針のところ。
『ネコの目』とか『カニの目』とか呼ばれる。
そこから下へ星をたどって、右へ折れ、
さっきのアンタレスと縦の三つ星とで大きなS字を作れる?」
「・・・うん、・・・あぁ!」
「以上さそり座でした。
その左側の明るい星」
「むっちゃ明るいなぁ!なんて星?」
「あれは木星、瞬いてないやろ、惑星やから」
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なんで瞬いてないのか、などの質問はないんかい?
・・・そうか、ないのか・・・。
*
「さそり座との間に南斗六星があるんだけど」
南斗六星は見えてる。が、説明がむつかしい。
次女にはわからないという。
北斗七星ほどくっきりとしてないし、
ひしゃくが開いた台形だし、
南斗の柄の先端*4が暗いし、
ちょっと離れている。
今夜はかろうじて見えてるんだけど・・・。
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南斗六星は中国では斗宿、
その右側は箕宿。これの三つの星を加えて、
欧米ではティーポットに見立てる。
ひしゃくのすくうところが取っ手、
箕宿の三星が注ぎ口、ひしゃくの柄の星が蓋の取っ手。
右と左をつなぐと
ちゃんと蓋まであって、明るさもそろっているので、
こっちでパターン認知が出来てしまうと、
ひしゃく形をさがすのに苦労してしまうものだが、
次女にはティーポットもわからないという。
*
あきらめて東の空へ。
大きなヴェガ、その近くのデネブ、
デネブとベガをつなぎ、ベガを頂点とする直角を作る。
アルタイルはその延長線上にある。
デネブから北十字星の別名を持つはくちょう座をたどる。
この図からやってみてね
しかし、天の川はおろか、はくちょう座とわし座に挟まる小星座、
見たら誰もが愛さずにはいられない、や座といるか座も見えない。
小さな星座だが、よくまとまっているので、
見えさえすれば見落としは絶対ない。
この二つの星座と天の川は是非とも見せてやりたいのだが・・・。
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こちらはそう思っているのだが、
次女にすればこんなにたくさんの星を見たことはなかったんで、
しきりに感心し、「さすが沖縄やなぁ」なんて言ってる。
不憫な都会っ子である。
*
星や月は知ってさえすれば、地球のどこへ行っても変わらない*5。
きっとあなたの心強い友になるだろう。
都会の空は一等星を覚えるのにはむしろ向いているのだ。
だって、一等星しか見えないから。
諦めずにお友達になってもらえればなぁと思う。