Saori@destinyの歌詞分析
前からやろうと思いながら出来ていなかった、Saori@destinyの自作の歌詞分析を幾つかの曲を挙げて行います。
Saoriの書く歌詞がいかに優れているかの証明になれば幸いです(笑)。
まずはインディーズのデビュー曲で最初に作詞したと思われる、この曲から。
【My Boy】
My Boy (new vocal styling mix)/Saori@destiny - 歌詞GET
走りだそうと思えたのは キミを見つけたからさ
秋葉原の路上ライブから活動を始めたSaoriのデビュー曲ですから、これからアイドルとして羽ばたいて行くぞという雰囲気の中、掴みはOKと言った感じでしょう。
この曲の特徴として、主人公が男か女か分からないという事が挙げられます。Saori側からの視点とも取れるし、ファン側からの視点とも取れます。まさに、ファンと「運命」を共にするという「Saori@destiny」の名前の由来(命名自体はTerukadoのむちゃぶりだとしてもw)に沿った内容になっています。ここで「走りだしたの」はSaoriとファンの二重写しになっています。
エンターキーでボクのものになる
もうシフトできない世界
エンターキー、シフト(キー)、オプションキー、コントール(キー)、さらには「パスワードかけた文字」というようにパソコンの操作をイメージする言葉がちりばめられています。これも秋葉原から活動をスタートさせた事を意識させます。さらにその言葉の使い方が上手い。単純に「シフト」や「コントロール」はキーの名前だけでなく、言葉そのものの意味も通るような使い方をしています。
もうちょっともうちょっと追い風に手伝ってもらって
もうちょっともうちょっと向かい風に逆らっていたいよ
Saoriの曲には、対比させた言葉がよく出てきます。ここでは風が肯定的なものにも否定的なものにもなぞらえられています。
ここまで上げたどの点においても、言葉の使い方が受け手のイメージを膨らませる効果を生んでします。
イメージを膨らませやすい言葉の使い方により、受け手が自由に想像し自分の思いれをこの曲に持ちやすくする効果があります。
いわゆる「メッセージソング」や「人生の応援歌」がつまらないのは、伝える側に単純なメッセージしかなく、そこに受け手の自由がないからです。受け手にとって、受け入れるか拒否するかの選択しかない曲には自由はありません。優れた歌詞は、受け手にメッセージを運んでいくものではなく、受け手の内面に何かを引き起こすものなのです。
【ステンレス・スターライト】
ステンレス・スターライト/Saori@destiny - 歌詞GET
この曲も男の視点と、女の視点の両方出てきます。それどころか2人の関係が両想いなのか片思いなのかもあいまいです。さらに言うと、ラブソングを越えた関係を歌っているのかもしれません。
マジカルミステリーツアーズ
ケミカルディスティニーロマンス
先ほど述べた対比的な言葉の使い方と同様に、韻を踏む事もよくあります。ここはちょっと無理やりな感じもしますけどね(笑)。
「マジカルミステリーツアーズ」はSaoriが好きなビートルズの影響なんでしょうが、なぜ複数形なんでしょう(笑)?「ケミカル」はケミカルブラザーズ?Producerやディレクターからのアドバイスがあったのでしょうか。
僕の120度ぐらい違うミライ
180度でも90度でもないこの微妙な感覚。このフレーズ、好きです。
磨いたフリしてたんだ
くすみっぱなしあたし隠したいんだ
錆びないけれど、光輝く高級な金属でもない「ステンレス」の性質をイメージさせます。
ステンレススターライト
さびやしないはずだ マイドリーム
プラチナの夢ほしいわけじゃない
「ステンレス」と「プラチナ」の対比が絶妙です。
【Domestic Domain】
Domestic domain/Saori@destiny - 歌詞GET
×をつけるなら ああ どうして
大切な命じゃないのにしないの
○をつけてよ 正解なら
目の前の「答え」焼きつけときたい
イメージを膨らませる対比的な言葉としてこれはSaoriの最高傑作でしょう。×(バツ)と○(マル)。
震災の悲劇と死、神様への問いかけとその返答、復興への希望。さまざまな思いやイメージを生じさせる歌詞です。
しゃべらないあなたがつぶやいた言葉
ほどく未来また結び直していくんだ
「しゃべらない」のはあまりのショックに言葉を失くしたからでしょうか?それとも亡くなられた方なのでしょうか?その解釈は受け手に委ねられています。
また、「ほどく」と「結ぶ」の対比、さらにその動詞を「未来」という言葉に関連付けるセンスが素晴らしい。
【パーフェクト・ワンダーガール】
パーフェクト・ワンダーガール/Saori@destiny - 歌詞GET
グルーヴもアップデイト
こころまでアップタイト
スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)を思い出すフレーズですね。曲も非常にグルーヴィです。作曲者のAlexさんの入れ知恵でしょうか?
【サヨナラリヴァイバル】
サヨナラリヴァイバル/Saori@destiny - 歌詞GET
ひらひら舞うアゲハ蝶は Ah どこまでも自由だ
はかない自由を表現したフレーズ。これも好きだなあ。
他にも素晴らしいフレーズはたくさんあります。
歌詞は音楽の一部ですから、耳で聴く事に価値があると考えます。歌詞カードで読むということはあくまでも補助。曲を聴いたときに意味を取る事で他の音を聴く事がじゃまになっては本末転倒です。韻を踏む事で音的な効果があり、イメージを想起させる言葉使いにより、音を聴く事をじゃませず、膨らませる。そのような点でSaoriの書く歌詞は優れていると思います。
ぜひ、曲を聴いて音として味わってもらいたいと思います。
おまけ