ゴッド・ディーバ

舞台は2095年のニューヨーク。処刑前の猶予を与えられた神ホルス(頭が鷹)は、宇宙人やミュータントらが混在する街で一人だけ白い肌に青い髪の女性、ジルを探そうとする。一方、冷凍冬眠の刑に処されていた運動家ニコポルは事故によって刑務所から出ることになるが……というお話。
さすがコミックが原作とかいうだけあって、昨日の『CASSHERN』がふっ飛ぶくらいのトンデモ世界観とビジュアルが冒頭から提示される。この時点で、あわわ、ついてけるだろうか、と不安に。しかも主要登場人物のうち生身の役者が演じてるのは3人くらいで、後は全部CGキャラ。えっ、そういう映画だったの?またこのCGキャラが生気ないんだ。今のCG水準からするとかなりしょぼいレベルの代物なんじゃなかろうか。
そんな感じで序盤はかなり辛い思いをしながら観てたものの、中盤あたりでこれが急に乗り移りネタ友情&ラブストーリーとも言うべきベタな話になり、そこからは俗っぽい方向に感受性が発動したので楽しんで観られた。何だ、ラブコメがやりたかっただけか。SF的世界設定はほとんど無意味だな。わりとひどい映画なんじゃないかという気がするものの、体を乗っ取る男と乗っ取られる男の友情話が実においしかったんで文句は言わない。
数少ない生身キャストの中ではニコポル役トーマス・クレッチマンが地味目のハンサムでツボだった。以後注目しようっと。

誘拐犯

二人組みのチンピラ(ベニチオ・デル・トロライアン・フィリップ)が大富豪夫婦の子供の代理母を誘拐するが……というお話。うーん、何がやりたかったのかよくわからんなあ。アクションシーンも一応あるもののやたらに単調で物凄く退屈だし、誘拐サスペンスとして見るとちっとも事態が二転三転しない……と言うか一応ハプニングは起こるのだけど、登場人物の反応が薄いのでちっとも盛り上がらない。
心理ドラマが盛り上がる気配は少しあったものの、登場人物ほぼ全員が自分のことしか考えていない(ように見えた)ので人間関係に動きがなく、これまたダメだった。ドラマが発生してたのはあのお医者さん周りくらいかな。冒頭のコミカルな雰囲気は打楽器ばかり鳴ってるサウンドトラックにも合っていて、なかなか良かっただけに残念。ずっとあんな調子なら面白かったのに。
キャストではマフィアの手先役ジェームズ・カーンが渋くて良かった。ライアン・フィリップはこの時点ではもうそんなに若くもないだろうに顔があどけなさすぎて、チンピラ役としては違和感が(「あどけない顔にいい体」物件としては見物だったが)。デル・トロは何だか不必要にかっこいい。もっとだらしない感じのほうがこの役には良くないか。

西村京太郎『華麗なる誘拐』

まさか再び西村京太郎を読む日が来ようとは。小中学生の頃はよく読んだけどなあ。ちなみに今回読んだのはmix deepestの課題本になったため。
お話は日本国民1億2000万人を誘拐するという前代未聞の誘拐事件の顛末を描いたもので、人質となった国民が日々殺されていく中、名探偵左文字進と犯人グループとの熾烈な頭脳戦が繰り広げられる、というような感じ。壮大で独創的な誘拐計画が実行されていく様にはワクワクしないでもないんだけど、流水大説レベルの被害者数に慣れ切ってしまった身としては、もっと死人出せ!などと思ってしまうことしきり。まあ流水大説云々は置いといても、スケール感のデカさをもっと強調してもよかったんじゃないかな。犯人グループの巧妙な身代金回収方法とそれが招く計画の崩壊については素直に面白いネタだなと思わせられた。オチの付け方も綺麗に決まってていい。
ただ、書かれた時代が時代なんで言葉使いとかセンスの点で相当古びてる感は否めず、そのへんはニヤニヤ笑いながら読むといいと思った。僕は「ブルーライオンズ」という犯人グループの名前に対する左文字の妻のコメントが笑えました。この左文字妻はなかなかナイスキャラで、夫婦漫才的な会話が楽しめるだけに、夫婦の会話シーンが少なめなのがちょっと不満。もっと多いほうがキャラが立ったと思うな。