トロイ

トロイ王子パリスがスパルタ王妃ヘレンを奪ったことから全ギリシア対トロイの全面戦争が勃発!ギリシア軍の英雄アキレス、トロイ軍の英雄ヘクトルを先頭に両軍は壮絶な戦いを繰り広げる、というお話。合戦、一騎討ちを問わず戦闘シーンはなかなかに迫力があって、かなり見応えがある。火だるまゴロンゴロン転がし攻撃の場面なんて面白かったなあ。それだけに、人間ドラマ部分があまり興味の持てないストーリーになってたのが勿体無い。途中までは周りバカばっかりの中一人で苦労してるヘクトル様可哀想話として観ればよかったのだけど、終盤は辛かった。アキレスのラブ絡みの話は本当にいらないなあ。ただでさええらく身勝手に見えるアキレスのウザさが倍増!ただ、その身勝手さが彼の最後の姿を印象的なものにしてるので、そういう意味では文句はないのだけど。
で、歴史モノならではの特殊な肌露出を揃って披露して下さっている豪華な出演陣ですが、お目当てのヘクトルエリック・バナは結構な好演で一安心。この映画の中で一番出来た人間に見えた。ちゃんと強そうにも見えたけど、騎乗シーンでは体が不安定だった気が。パリス役オーランド・ブルームの童顔とヘボヘボぶりも好印象。終始目がイッちゃってるトロイ王役のピーター・オトゥールを始め老人連中も概ね良い感じ。あと、ヘレン役ダイアン・クルーガーは美人だけど名前が大きく出てるわりに出番が少ないのな。ブリセウス役の女優のほうがはるかに目立ってた。

三津田信三『シェルター 終末の殺人』(背景色でのネタバレ含)

核シェルターの取材に赴いた作家・三津田信三がまさにシェルターに入ろうとしたとき空に不気味な閃光が!シェルターに逃げ込み、共同生活を営む三津田等の間で起こる連続密室殺人。外は放射能でいっぱい、世界の終末だってときに犯人はどうして殺人なんか?というお話。あらすじは面白そうだったのだけど……そもそも全然“終末”感を匂わせられていないので前述の魅力的な心理的謎が立ち現れてこない。なので、始まってしばらくすると(主人公がたまにあっちの世界に行っちゃうのとマニアックなホラーに関する薀蓄を除けば)普通の孤島モノ・雪の山荘モノな雰囲気になってしまってるのですねこれが。まあそれでもオチが面白ければいいやと思って最後まで読んでみたら……なんだこのトリック・その意味づけ共に10年くらい古いオチの付け方は!いやあさすがに現在の国内ミステリ界ではこれじゃ通用しないでしょう。つまらん。
結局面白かったのはホラー薀蓄くらいかな。あの“名探偵”の設定をもうちょっと工夫しとけばいくらかマシになったのに。三津田信三って前々から読んでみたかったのだけど、この分じゃ他作品にもあんまり期待できなそうだなあ。あ、それとこのオチにはちょっと『アイデンティティー』(映画)を思い出した。タイムリーにならなくて良かったですね。

ブラザーフッド

こちらは試写で。家族でつつましくも幸せな生活を送っていた兄弟が揃って朝鮮戦争に徴兵される。過酷で非情な戦場の空気に翻弄され、強く愛し合っていた二人の関係も捩れていく……というお話。僕は戦争映画をよく知らないけど、これは、戦争映画としてはかなりベタな展開が盛りだくさんなのではないかな。ベタすぎる上に盛り上げ方が無理矢理な感じで、ストーリーにはあんまり感心できない。兄弟モノ好きな僕としては兄弟関係の描き方にも不満がある。二人の心理描写に整合性取れてなくないか?兄が一時あんなに人非人だったことの言い訳を付けられていないし、終盤弟があれしきのことで兄を許しちゃうのも何だかなあ。戦闘シーンは結構血みどろだったりで観てるとそれなりにドキドキするものの、一本調子でだんだん飽きてきちゃう。もちっと綺麗な画面が観たかった。
とまあそれほどでもない映画だったのだけど、僕には大収穫だったことが一つ。それはウォンビン、お前だ!弟役を演じるこの若手俳優のまさに一挙一動に僕は釘付けでした。いや、前から気になってはいたのだけど、実際に映画の中で動いてるのを観てみると、相当にヤバいですねこの人は。仔犬系「守って」オーラが全開で、ほとんど凶悪的なまでに可愛い。そのあまりの可愛らしさに映画開始十分ほどで僕の目は潤み出してました。さして泣けるシーンでなくてもウォンビンが目に涙を溜めてるとこっちまで貰い泣き。不安そうにキョロキョロしてる表情とか、手足を持て余すような走り方とか、ああー本当に可愛いなあこん畜生!負けた。負けました。つーわけでラストはあの演技下手な爺さんなんか出さないでウォンビンの泣き顔のみで盛り上げて欲しかったです。ウォンビンに100点。