天国の口、終わりの楽園

メキシコ人の金持ちのボンクラ息子とそのお友達。年中発情期でその上ジャンキーな二人はある夏の日、心に傷を負った人妻と車で架空のビーチ「天国の口」を目指して旅に出かける、というお話。とにかく主役の二人のバカ若者っぷりが鼻につき、彼等が抱える“心の傷”みたいなのを語られても白けるだけで困ったものの、終盤になってくるとちょっとマシに。何故なら、この二人ってヤりまくりな癖にメンタルは耳年増な童貞少年のそれなんだもの。それがわかれば微笑ましいと取れないこともない。まあ、それでもあまり楽しめなかったけど。
終わらせ方とか変なナレーションの入り方はどうにもかっこつけ方が乱暴な感じで気に食わない。三人の乗る車が通り過ぎた後の光景をちょっと映したりするロードムービーっぽい部分は好き。メキシコの自然も綺麗だった。あと、ボンクラ二人組みのうち背の低いほう役のガエル・ガルシア・ベルナルは今をときめいているだけあってさすがに押しの強いルックスだと思ったものの、この映画だといまいちその魅力が確認しにくかった。『アマロ神父の罪』でも見ようかな。

辻村深月『冷たい校舎の時は止まる(中)』(背景色でのネタバレ含)

上巻(→感想)に引き続き、なかなか読ませる。ファンタジー版『そして誰もいなくなった』みたいな展開になって来て、特殊な設定がさらに生きて来た感じ。上巻の感想では西澤保彦に近いみたいなこと書いてるけど、これは西澤と言うよりは恩田陸かも。少女マンガっぽさとかが。でも、登場人物への距離のとり方は恩田陸よりむしろ巧いと思うな。この中巻では主役の高校生達が抱える悩みのナルシスティックさ加減がわりと前に出て来てる印象を持ったのだけど、それがあくまでエンターテインメントとして好バランスな域に留まってるおかげであまり鼻につかないもの。感心感心。下巻が実に楽しみ。
さて、ではここで適当に結末予想でも。ホストの正体は角田春子ってことでどうだ。そうだったらちょっと面白いかも、ってだけで何の根拠もないですが。