ナガールジュナサーガル 2日目

昨晩のオートの若者ドライバー、10時と言っていたのに
どういうわけか8時半に迎えに来た。
彼は見た感じ22、3歳くらい、黒の長袖ボタンシャツに
裾に模様の入った、足首丈の黒の腰巻きを巻き、
そして黒いショールを無造作に首に巻きつけていた。
全身白はよく見かけるけど、全身黒、初めて見た。
かなりスタイリッシュ。ギャルソンて感じだ。
後で聞いた話では、その服装はヒンドゥーのある種の人の
儀礼のひとつで、11月のあたまから1月までの期間限定の
スタイルなのらしい。
多分、同時に他の戒律も並行して守っていると思う。
ファッションと何ら関係無いにしろ、長身でスタイルがよく
ハンサムな顔立ちの彼にとてもよく似合っていて、印象的だった。
しかし私は、昨日の現地マネージャーとの約束のほうが
きっとおいしいに違いないと思ったから、ギャルソン青年を断ることに。


昨晩のロッジ内のツーリストインフォメーションに行くと
まだ閉まっていた。振り返ると、昨日の州観光開発公団の
現地マネージャーが来た。名刺を渡してくれた。
そのまま、特に何の説明もなく、ではダムへ行きましょう、となり
彼の運転するバイクで移動。インドは基本的にノーヘル。
州政府だろうが何だろうが、ノーヘルだ。

ナガールジュナサーガル・ダムと考古学博物館

ナガールジュナサーガルは、1700年前に、山間の谷間に
仏教信仰の研究および振興の地として栄えた土地だったけど
それもいつしか下火になり、近年になって、
町を流れる、インドの主要な川のひとつ、クリシュナ川を
堰き止めてダムが建設された。なので、かつて繁栄を見せた
数々の史跡は、今はダムの底に沈んでしまったのだった。
その史跡から回収された仏像や数々のレリーフを始め
沈んだ町の模型などが保存されているのが、ダムに浮かぶ島、
ナガールジュナコンダに新たに建てられた博物館。


マネージャーのバイクで、そのダムを渡って島に行き来する
船の発着所へ着いた。9時だった。まだ1時間ばかり
船が出るまで時間があるということで、
またバイクにまたがり、かつて仏教の大学があった跡、
「アヌパ」という所に連れて行ってもらった。


そこはダムのある谷間からかなり離れているので、
ダムに沈まずに済んだらしく、現在では芝が植えられ
手入れの行き届いた広々とした気持ちのいい場所だった。
観光スポットとしてマイナーなのか、ざっと見渡しても
私たち以外には従業員がぽつぽつといる程度だった。


芝の中に、1植えの菩提樹の幼木があった。
今年の2月、ここにチベット仏教の最高指導者、
ダライ・ラマ14世が訪問された際に植えられたそう。


その昔、アジア各国からやって来た僧侶が、そこで仏教の
知識を深めていたという。日本からも来ただろうか。
こんなところまで遥々。
今では跡を残すのみで、当時ここがどれだけ仏教を
学ぶ最先端の地で、どれだけ多くの僧が学びに来ては
去って行ったのかは、今では想像するしかないのだけども、
その広大な敷地と、現代の大学やコンベンションセンター
見られるのと同じような、階段状の聴講席、それらは
すべて丁寧に切り出された巨石で作られているのだけども、
大自然に囲まれたその環境といい、今すぐにでも復興
されるべきほどの、何かはかりしれないエネルギーに充ちていた。
もっとここには多くの人が訪れるべきだと私が言うと、
マネージャー氏が、ダライ・ラマ14世も同じことを
仰っていましたよ、と鳥肌の立つようなことを言った。


そうこうしているうちに11時になったので、先の船の発着所に
戻り、フレッシュなオレンジジュースをごちそうになり
インド人観光客に混じって、マネージャー氏と船に乗った。



あいにく今にも降り出しそうな空模様で、せっかくの大パノラマも
その美しさと壮大さを見せ付けるには陽光が足りなかったが、
15分程度で到着した博物館のある島は、木々や芝や草花が
みなとてもよく手入れされていて、金持ちの別荘へでも行くような
道だった。


博物館は1枚岩に彫り込まれたレリーフや、優美な仏像など
かなりの点数が保存されていて、1日中でも見ていたいような
展示品の数々だった。いつかまた来たいと思った。
ざっと見た後、休憩所でチャイをごちそうになり、また
さっき乗った船で戻った。


発着所に戻り、発着ロビー上に設けられたレストランで
アーンドラ・プラデーシュ(州)料理!
私の希望でフィッシュ・フライのメニューに。
4種類のカレーはどれもマハラシュトラの味わいと
微妙に異なって、フィッシュ・フライともよくマッチする。

エティポタラの滝(ナガールジュナサーガル)

ナガールジュナサーガルには滝があった。
川はそんなに水量がないのだけど、地下にもたくさんの水が
存在するらしく、それらが切り立った岩の合間から
川から流れ落ちる水と一緒くたになって滝となっていた。
それでも、それほど大きな滝ではない。20メートル程度。



写真上:エティポタラの滝 中:エティポタラの滝の奥に見える別の滝
下:滝の下流方向

ここは「エティポタラ ETTIPOTALA」というところで
“瞑想をする場所”という言葉が語源らしい。
高台に手摺りが取り付けられている場所から、
滝を存分に眺めることができたけど、
周辺の林を下って、すぐ間近に滝を見ることができるらしい。
確かに下方の木々の間に人影がちらほら見える。
私も下りてみたくなり、マネージャー氏と、ガイドさんを
伴って早速下った。


滝を見終わり、滝の近くに併設された小ぎれいなロッジで
そこのレストラン長の計らいで、チョウミン、インドの
焼きそばを頂いた。マネージャー氏といると特典が付くのだ。


その後、アーンドラ・プラデーシュ州観光開発公団の経営する
まだ新しくてきれいな宿泊施設を案内してもらった。
個室はインドの高級ホテル並みにきれいで広々として、
プールやジムのほか、日本で見るような整然とした会議室や
レストランバーなど、あらゆる施設が整っていて
かなり驚いた。観光開発のためにかなりの額を投じていた。
どうしてここが日本でマイナーなのか不思議でならない。