富国と強兵

副題が「地政経済学序説」。地政学と経済学との結びつきを復活させるという志が込められている。著者は経済産業省の官僚であるだけに、中身も、経済自由主義を批判し、経済政策、産業政策を正当化するという側面が強いけれど、それにとどまらず、地政学の大御所であるマッキンダーの詳細な紹介など、読書する楽しみを存分に味わうことのできる好著。
ちょっと驚くのは、レイという学者の学説の紹介で、レイによると、国家財政の赤字こそが民間に貨幣を供給するので、財政の健全化=黒字化は愚かしいという議論。目からウロコが落ちた。
戦争によって需要を煽り景気対策をするという考えは、もはや古いと著者は指摘する。戦争によっても景気はよくならないのが現代戦なのだ。果たしてこれは、著者の言うように希望なのか、それともより深い困難なのか?
ここで私としては、小野義康氏の貨幣フェティシズム論をもとにした経済学と接続してみたいものだが。