2009-11-10(Tue): 図書館総合展1日目−フォーラム「財政危機をチャンスに変える思考と戦略」で講演、ヨコハマ経済新聞に寄稿

ついに、

2009-11-10(Tue)〜2009-11-12(Thu):
第11回図書館総合展/学術情報オープンサミット2009
(於・神奈川県/パシフィコ横浜
http://www.j-c-c.co.jp/library/

が開幕。

初日の今日は会場が近場ということもあって、オープニングのセレモニーから出席してみた。実はオープニングを見るのは初めて。


図書館総合展全体を通しての感想は3日間の会期終了後に書きたいが、第11回となる今回は昨年の第10回に続き、

・「第10回図書館総合展に向けて−ささやかな願い」(編集日誌、2007-11-12)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20071113/1194907239

で記した願いがまた幾つか実現しており感慨深い。出展者でも講演者でもなかった一来場者の声に耳を傾けてくださった図書館総合展運営委員会の方々に感謝したい。

さて、開場後、出展者ブースやポスター発表をぶらりとのぞいた後、

図書館総合展パネルディスカッション「ディジタル時代の本と読者−これからの出版者と図書館の役割」
http://d.hatena.ne.jp/sogoten/20090930/p18

を講演部分のみ聴講。

土屋俊さん(千葉大学教授)の司会の下、長尾真さん(国立国会図書館)、中山信弘さん(弁護士)、植村八潮さん(東京電機大学出版局)の講演があった。

しかし、ご本人もおっしゃっていたので誤解されることはないと思い書くが、そろそろ出版業界の視点を植村さんにすべて代表・代弁してもらうのは無理があるだろう。日本書籍出版協会理事というお立場もあるとはいえ、出版業界の当然ながら学術出版だけで成り立っているわけではない。むしろ、出版産業全体からみれば、学術出版が占める比率はそうは高くないだろう。学術出版の定義がまず困難なので、正確な算出は難しく、これはあくまで単なる感覚値に過ぎないが。

そろそろ小学館講談社のような大手総合出版社、一般書、文芸書、雑誌、専門誌、学術書、児童書、コミックを幅広く取り扱っている出版社の方々が壇上で自らの理念と現実を語るべきときではないかと思う。

むしろ質疑に関心があったのだが、午後のフォーラムに登壇予定なので、ここで中座し、13時から、

2009-11-10(Tue):
図書館総合展フォーラム「財政危機をチャンスに変える思考と戦略−低成長時代の図書館サービス指導理念」
(於・神奈川県/パシフィコ横浜
http://d.hatena.ne.jp/sogoten/20090930/p17

に参加した。ここでは、

  • 上山信一「これからの自治体経営と図書館」
  • 根本彰「図書館は誰の(ための)ものか」
  • 岡本真「オープン志向による図書館サービス改革−金太郎飴を超えて」
  • 山田真美「『オタク』の時代の図書館経営

という順で講演し、その後、高山正也さん(国立公文書館)をコーディネーターに「新しい政権下での図書館経営」と題してパネルディスカッションを展開した。

・「オープン志向による図書館サービス改革−金太郎飴を超えて」
http://www.slideshare.net/arg_editor/crisis-to-chance20091110

以下は手元のメモから各登壇者の発言で考えさせられたことを公開メモとして。

上山さんが討論の際に指摘した「図書」の危機と「図書館」の危機を明確に分けて議論する必要があるというのは、まったくその通り。さらに付け加えれば、「図書」の危機も、「図書」そのものの危機と、「出版社」の危機、そして「出版行為」の危機は、相互に関わりは持つものの、それぞれ別次元の話であることを自覚する必要がありそうだ。

根本さんがご自身の演題「図書館は誰の(ための)ものか」への答えとして示した「コミュニティの住民全体のもの」という定義は至極まっとうだと思う。同時にこのとき根本さんが提示した「利用者、非利用者、現在の住民、将来の住民」という住民の定義、そして「将来の住民」という言葉で示された「時間軸の導入」という視角も意識しておきたい。ここにさらに「過去の住民」という概念を入れていくこと、そして非来館の利用者ではあるが、その図書館に支持を与えてくれる人々を取り込むために「住民」ではなく「市民」という概念でまとめあげるのがよいのだろうかあ。

山田さんによるイギリスにおける百科事典のつくり方の話は非常に印象的だった。ご本人が伝聞と断られていたので、ここでは詳細を記さないが、自分で調べてみたい。

さて、自分の講演では、WikipediaYahoo!知恵袋そしてTwitterを事例に、ウェブにおける共創を参考にしつつ、図書館も

  • 館種間
  • 職員間
  • 市民間

に多重多層的なネットワークを織りなすべきであると説き、その上で仮説として、参加型レファレンスと参加型アーカイブという2つの共創モデルを提案してみた。財政危機の中で苦境が続く図書館にとって少しでも役立つところがあればと思う。特に参加型レファレンスについては、先日行った

・「岡山県立図書館 図書館職員等研修講座(レファレンス研修)で講師」(編集日誌、2009-10-09)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20091012/1255337285

での2時間に及ぶ討論で示唆されたところが大きかった。あらためて研修の企画者・参加者の方々に感謝したい。

・「行ってきました!図書館総合展+ARGカフェ&ARGフェスト(その1)」(空手家図書館員の奮戦記〜Library0.2からの出発?〜、2009-11-15)
http://karatekalibrarian.blogspot.com/2009/11/argarg-1.html

ところで、一部には大受けだったようだが、図書館総合展の開催にあたって、ヨコハマ経済新聞に寄稿させてもらった。

・「11回目を数える「図書館総合展」への招待−国内外から図書館関係者が集う年に一度の大イベント」(ヨコハマ経済新聞、2009-11-10)
http://www.hamakei.com/column/197/