Web Forms 2.0 に思うこと

developerWorksWeb Forms 2.0について書かれた記事を読んだのだが、なんとセンスの無い仕様だこと。

何が一番まずいかと言うと、下記である。

フォームの送信前にブラウザによるチェックを可能にする検証構文。新たな属性にはrequired、min、maxなどがあります。

このようなクライアントサイドチェックというのは、HTTPという送信内容の改竄が容易な方式においては、何の防壁にならない。もちろん使用策定者サイドとしては、あくまでユーザのユーザビリティ向上のためだと言うのかもしれないが、例えば、表示するエラーメッセージの内容を変えたりより複雑なチェックを行うためには、JavaScriptを使う必要がある。そして、それはすでに可能なことである。しかも、この属性は、input要素の属性として用意される。なぜ新たに仕様を増やすのにただでさえ多義性を持つinputタグの用途を増やすのだろうか。あらたに要素を用意することに何の問題があるのだろうか。

次世代Webフォームの仕様に求められていることは、より多くの視覚的な挙動を実現できることであって、より多くの機能ではないのである。*1

*1:現在、この手の仕様としてはXFormsという規格が進められている。XFormsXFormsで複雑すぎるのだが……。なぜ策定者は仕様を無意味に複雑化させるのが好きなのだろうか。

大竹文雄著「経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには (中公新書)」を読む((当てられてしまったので、書いてしまうことにした(^_^;))

まず、書いておかねばならないのだが、これは大変問題のある本である。本書によれば、身長が高く体育会系運動部の出身者で容姿が優れており結婚している人々は有意に所得が高いそうである。

これって、私のお給金は低くて当然ということですか(泣)

閑話休題。この手の経済学啓蒙書と言えば、伊藤元重先生の「はじめての経済学」やおなじみポール・クルーグマンの「クルーグマン教授の経済入門」を始め、どちらかといえば国全体の経済、マクロの視点から書かれたものが多かったように思えるが、本書は労働経済学の立場から人々のお給料や不平等と言った問題を面白おかしく(そして、真面目に)解説している。

国全体の問題というのは、ある意味個々人の一般庶民にとってはどうでもいい話であり*1、経済学への入門としては非常に適切な題材であるように思える。いや、むしろなぜ今までこの観点から経済学の入門書が書かれていなかったのかということの方が不思議に思える。

本書において強調されるのは、インセンティブである。スティーブン・ランズバーグが経済学について曰く、「人はインセンティブに反応する。それ以外は、付随的な注釈にすぎない」と言った通り、インセンティブは極めて強力な概念であり、その切れ味は本書でも如何なく発揮されている。

美男美女は得かどうかという問題や、プロ野球監督の能力評価といったしばしば興味本位で話される話題に対して、インセンティブに基づいた分析が行われ、しかもそれで終わらずに、通常の本であればたとえ話で終わってしまう前述のような問題に対しても、きちんとデータを用いて説得的に示してある点は特筆に価する。

マクロ経済の知識が政策立案には欠かせないように、本書で述べられるような賃金や所得格差に関する知見は人事の担当者にとっては極めて役に立つデータとなるはずである。国が人々から成り立っているように、企業もまた個々の社員=人間から成り立っている以上、人事制度のありよう次第で企業の生き死にも影響を与えるであろう。本書で述べられているような経済学的思考を用いれば、誤った人事制度の予防し優れた人事制度を作る足がかりとなるのではないだろうか。

なお、以前より年金制度は積立方式にすべきであると主張していた当方としては、同様の主張を岩田規久男先生に続き本書においても聞けたことで、ちょっとだけ自信を持ちました(笑)

*1:実際はそんなこともないのだが、庶民感覚というものはそういうものだ。