『宇宙は本当にひとつなのか』(村山斉著、講談社ブルーバックス)を読む。
最新宇宙論入門という副題があり手にとった本。前半の話題の中心は宇宙が暗黒物質に満ちているということで、観測結果からどうしてそういう解釈がなされているかをやさしく順序だてて説明してくれる。それでも暗黒物質の重力によって銀河のきれいな渦巻状の形がつくられているということと、暗黒物質は他の物質とは反応しない不思議な粒子であるということはなかなかすんなりと飲み込めない。後半はこの暗黒物質の正体をめぐって研究が行われており、その第1候補がWINP(Weakly Interacting Massive Particles)という。これは明確な対象に対して名付けられているわけではなく、あくまで存在するならこうあるはずだという粒子の属性を示した名称の粒子ちうことだ。ここでその存在条件を巡って異次元を導入すればうまく解釈できるということから多次元宇宙の話題が取り上げられる。そして最終章では宇宙の多元性、すなわち表題の疑問について解説される。超ひも理論を使って宇宙の性質を検討すると、解の候補の数だけ宇宙があることになり、その解の一つであるこの宇宙に私たちが存在しているかもしれないこと、私たちが観測する宇宙の構造は私たちが存在できる条件を満たす宇宙であるという人間原理について触れている。

宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)

宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)