クリスマスにもっともふさわしい絵本

 今年も午後4時の礼拝に出席。うちの教会は主教座聖堂ということもあり、イブ礼拝は午後2時、4時、7時半、11時の計4回もある。最初の2つは家族礼拝なので、かなりカジュアル。息子はバイオリン、主人はギターでバンドに加わり、聖歌や頌栄の伴奏をした。礼拝後、例年通り友人宅で簡単な持ち寄りパーティ。戻ってから息子と『神の道化師』を読む。これはどうしても今夜読みたかった。
 舞台はルネサンス期のイタリア、ソレント。みなしごのジョバンニは、お手玉の曲芸で身を立て、旅の芸人一座に仲間入りする。棒やお皿、たいまつを回した後に7色の玉を回して空中に虹を作れば、拍手喝さい。けれども、人々を喜ばせるために見せた芸は加齢と共に精彩を欠き始める……。
 人は何のために生きるのか、深く考えさせられる絵本。フランスに古くから伝わる民話だそうで、修道士でもあった作者が自分自身の人生体験と重ね合わせ、心を込めて語りかえした。淡い水彩と淡々とした語りから伝わる人間らしさは、つまり、作者が魂を吹き込んだという証拠である。ジョバンニの生きざまに「キリスト者としてどう生きるか」の決定的なヒントが示されているし、キリスト教に関係なく「人間としてどう生きるか」の視点で追えば悲哀漂う生涯から見えてくるものがたくさんある。
 クリスマスに大聖堂で見せるジョバンニの芸が涙を誘い、こらえて読むのが結構大変だ。そんな中、息子はどう感じていたのだろう。ずっと沈黙のうちに聞き入り、終盤に入り幼子イエスの顔を見て「怒っているみたいだよ」ともらしてから、最後のページを静かに見つめていた。(asukab)

  • 邦訳の書影がないので、こちらは原書英語版

Clown of God

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