【岐阜】郡上市白鳥町/ヤマクラ大坪醤油の地味噌

次に訪ねたのは「郡上みそ」発祥の蔵元で、1902年(明治35年)創業の「ヤマクラ 大坪醤油」です。案内を引受けて頂いたのは、味噌杜氏でもある4代目当主・大坪武司さん。同蔵元で造られる「郡上みそ」は、麦麹・大豆麹で醗酵させる独自製法から他に類を見ない種類の味噌と言われます。そのルーツは郡上地方の家々で造られていた自家製味噌。「郡上みそ」の特徴である溜まり成分を含んだ〝柔らかさ〟について、大坪さんは「戦国時代の兵糧をルーツにする信州味噌・仙台味噌・八丁味噌とは違い、運搬する必要性が無かったから」と話します。また「かつては、どの民家にも当たり前のように〝味噌部屋〟があって、家々独自の味を守り伝えていた」そうです。

「郡上みそ」は天然醸造味噌。仕込みは伏流水が最も清らかになる1〜3月に行い、熟成にはじっくりと18か月以上をかけます。そして同蔵元に並ぶ25本の杉製仕込樽(1本で約5トンを仕込む)が「郡上みそ」独自の香り・旨味を醸します。仕込樽は全て明治時代後半から大正時代に作られ、なかには100年以上を経たものも(壮観です!)。さらに気温変化にメリハリがある同町の四季も「仕込樽に染付いている酵母菌などの働きを活性化させるので、良い味噌を造る」そうです。

仕込樽の寿命は150〜200年。大坪さんによると「仕込みを休まずに〝使い続ける〟ことが寿命を延ばす」とのこと。乾燥に弱い仕込樽を空のまま放置すると、継ぎ合わせていた板と板の間に隙間ができてしまいます。そのため味噌を掬い終えた仕込樽を洗浄するときは、敢えて内側に残った味噌を完全に洗い流しません。この日、偶然にも解体した仕込樽の板を見ることができました(写真三段目左)。左は仕込樽の外側、右は仕込樽の内側。内側に染付いた褐色の跡は、休まずに「郡上みそ」を造り続けてきた同蔵元の歴史そのものです。
*大坪醤油 http://www4.ocn.ne.jp/~gujomiso/