映画『靖国』に使われた税金を無駄にしたのは誰か

自民党右派議員を中心とする保守派の方々は、「反日的な内容」を含む『靖国』に税金が使われたことを問題視しているらしい。
私は『靖国』を観てもいないので、「反日的な内容」が含まれているのかどうかということ自体について論ずる資格もないし、論ずるつもりもない。
(そもそも、日本の過去や靖国神社天皇等を批判的に取り上げることが「反日的」であるかについても大いに異論はあるが、ここではそれは置いておく。)
ここで考えてみたいのは、「反日的な内容」が含まれる映画の製作に日本の税金が使われることと、それを国会議員が問題として取り上げることの是非についてである。
少なからぬ人々にとって、「反日的な内容」を含む映画に日本の税金が使われたという事実は、何の検証の必要も無く明らかな罪悪であるようだ。そういう人々にとって、「親日的な内容」「反反日的な内容」の映画に日本の税金が使われることは、無問題なのだろうと、私は推察する。
でも、それって外から見たら(国益を考えたら)本当に自明のことなのだろうか。
朝鮮中央放送の番組が、朝鮮の外の人に対して、朝鮮の考えに共感をもたらすような効果を持つだろうか?
一方、国営ではないが、BBCのドキュメンタリーは英国政府に都合の悪いものもしょっちゅう含んでいるが、これは英国の国益を損なっているだろうか?
もし、『靖国』が「反日的な内容」を含んでいたとして、日本の税金がその製作に使われていたことは、日本にとってマイナスとなるだろうか?
「それ見たことか、日本の政府だって認めてるんだ」というような見方をする外国人もいるかもしれないが、そういった人々は、そもそも何をやっても親日になどなりはしないだろう。むしろ、日本の正当性を強調するようなドキュメンタリーを税金で作ったりすれば、反感を高める効果しかないだろう。一方、「反日的な内容」を含む映画の製作に日本が税金で援助をしたということになれば、日本の懐の深さを示し、対立する意見に対しても敬意を払う民主主義の国家としての評価を高めることになり、比較的中立的にものをみることの出来る人であれば、日本の過去の歴史に対して悪感情を持っている人であっても、怒りの矛先を鎮めることにもなりうるのではないかと私は思う。
これが成り立つということを勝手に仮定した上で話をすすめるが、せっかく懐の深さを示すチャンスであったところに、一部の自民党議員をはじめとする勢力が「反日的な内容を含む映画への税金の支出」を問題として糾弾したことはどういう影響を与えるだろうか。これにより日本の評価が好転するとは思えない。むしろ、せっかく民主的で懐の深い国であるとの印象を与えるチャンスを台無しにしてしまう行いだと私は思う。
ということで、まとめとしては、費やされた税金がせっかく日本のイメージアップに役立つチャンスがあったのに、それを無にするどころかマイナスに転じてしまった人々は、本人の意図とは裏腹に税金の無駄遣いの張本人となってしまっているのではないのかというのが私の意見。