いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ひとつ海のパラスアテナ (2)」鳩見すた(電撃文庫)

ひとつ海のパラスアテナ (2) (電撃文庫)
ひとつ海のパラスアテナ (2) (電撃文庫)

「大丈夫。助けはきっと来るよ」
アキともう一人の少女の疲労は、限界だった。『溺死』という不吉な二文字が、脳裏をよぎる。
「……来ないと、思います」
波間にぽつんとたゆたう二人。
「大丈夫。絶対助かるよ」「助かりません」
絶海で浮かんで待つ二人の周囲では、獲物の命が尽きるのを待つ猛禽の眼があった。少女が悟ったように言う。
「助けは『絶対に』来ないんです。ここは…セントゥリア海峡ですから」
絶望的な状況の中で――二人の「生きるための戦い」が、始まる。


そこそこ面白かった。でも、期待は大きく下回ったので厳しめに言わせてもらう。
死と隣り合わせの容赦のないサバイバルに、後半のご都合主義の超展開。良いところも悪いところも1巻と変わってない。そうすると人は、良いところには慣れてしまって、悪いところには改善が無いことに落胆するわけで。
そして一番どうかと思ったのが主人公のアキ。
タカと離れてからのアキの成長を描くものかと思っていたら、すでに再会の約束の時が迫っていて驚いたが、それは別にいい。問題は一年前の経験があってその後も色々なことがあったはずなのに、アキが何も成長していなかったこと。
二度も三度も死にそうな目に合っているのに、反省した様子がまるでない。むしろもっと迂闊になっている。慎重すぎる主人公では物語にならないのは分かるが、アホの子が主人公でも面白くはない。
あと、これは好みの問題もあるが、今回の相棒のオルカに前回の相棒タカほどの魅力がなかった。
知識の宝庫でやることに突拍子もなく、アキと同じく生きることに貪欲だったタカと、テンプレツンデレで諦めも早いオルカでは、比べるまでもなくタカの方が読んでいて楽しい。
そんな訳で、1巻に比べると大分トーンダウンしてしまった感は否めない。衝撃のラストからの巻き返しに期待したい。