いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「埼玉県神統系譜」中村智紀(ガガガ文庫)

埼玉県神統系譜 (ガガガ文庫)
埼玉県神統系譜 (ガガガ文庫)

高校二年の夏、進路調査票によって生徒たちは人生の岐路に立たされる。白狼神社の一人息子である立花孝介は、いずれ実家の神職を継ぐものと余裕ぶっこいていたのだが……。「うちの神社は今、倒産しかけてんぞ?」――父親の突然のカミングアウトにより、我が家の惨状を知ることとなる。そんな折、孝介は、オオカミの面を着けた怪しげな女と出会う。自分を神と名乗るその女は、白狼神社の経営を立て直すべく、神社に寄せられた願いを叶えていく仕事の手伝いをするよう孝介に要請する。

第9回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞受賞作



現代慣れした神様と神社の息子の少年が人助けする物語……になるはずだった物語。
と言うのも、主人公のドラ息子が一向に働かないのである。神様の手伝いで山登りをしたら、ひーひー言いながら往復してきただけで本人は何もしない。試験が明けてさあ本腰と思ったら、他の神様と戯れただけ。人助けなんてなかった。いやそれ以前にストーリーなんてなかった。
では、何があるのかと言うと、クセが強く馬鹿馬鹿しい地の文がある。
埼玉をdisりつつ神奈川と千葉に喧嘩を売っていく序章から始まる主人公の独白は、説明過多で脱線癖があり、男子高生らしい痛々しさと男臭さが満載。知識をひけらかしているだけ様なところがいくつかあるのが小賢しいが、ちょっと古風な言い回しとテンポの良さが小気味よくて割と好き。
思っていた方向と違ったが、そこそこ面白かった。人を選ぶ作品という点では、ガガガ賞らしい作品と言えるかもしれない。