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翡翠輝子の招福日記

2017-02-19

カウリスマキ監督の引退

10代の私を導いたのがボブ・ディランなら、中年期はアキ・カウリスマキです。

西洋かぶれでありながら、西洋のコンプレックスもあり、対等の立場で外国人と友達になることなんてあるのだろうかと思ったものです

そんな時、フィンランド人のアキ・カウリスマキ監督の映画『浮き雲』を観て、ヨーロッパにこんな国があったのかと、一気にフィンランドに心ひかれました。
カウリスマキ映画の登場人物は、「美男美女が出ない映画」とも呼ばれていますが、たしかに登場人物はあまりお洒落じゃなくて、寡黙で不器用。
あとでわかったことですが、カウリスマキ小津安二郎の『東京物語』を観て映画監督を志しました。『浮き雲』の登場人物がどこか日本的なのも、小津の影響でしょう。

そのカウリスマキ監督が「映画製作をやめる」と発表しました。
移民をテーマにした三部作を作っていたはずなのに、『ル・アーヴルの靴磨き』に続く二作目の『The Other Side of Hope(英題)』が最後の作品になるそうです。

『ル・アーブルの靴磨き』を吉祥寺の映画館で観た日のことをよく覚えています。
カウリスマキ監督の作品を全部、観なくては」と、レンタルショップに寄って片っ端から借りました。そして、『トータル・バラライカ・ショー』でレニングラードカウボーイズのヨレ・マルヤランタを見つけたのです。
それまでは、音楽映画だし、巨大リーゼントに軍服という奇妙ないでたちから、「これは観なくていい」と敬遠していたのです。

その後はフィンランドとつながりたい一心で、フィンランド語を習いに行き、カウチサーフィンを始め、日本語教師の資格を取り、フィンランド人学生のホームステイを受け入れました。
すべてはカウリスマキから始まったのに、映画製作から引退とは…。

カウリスマキは現在、59歳。引退は、小津安二郎の影響もあるのではないでしょうか。
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小津安二郎1903年12月12日に生まれ、1963年12月12日に亡くなりました。
還暦を迎えた誕生日で人生を全うしています。
小津に心酔しているカウリスマキですから、小津が亡くなった年を越えて映画を撮るのがいやになったのかもしれません。

50代半ばの私にとっては、還暦はすぐそこです。
すぱっと引退できたらいいのですが、今の日本では還暦で仕事をやめるのは贅沢な選択です。
高齢化社会では、60代、70代、へたしたら80代でも総活躍しなくてはいけません。
マラソンのゴールを目指して走って来たのに、ゴール近くまで来たら、「あと10キロ走りなさい」と言われているような状況です。

還暦を過ぎてどう生きるのか、とりあえずカウリスマキはどんな生き方をするのか、興味津々です。

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フィンランドのシンボル、ヘルシンキ大聖堂

2017-02-16

ディランも変わる、易も変わる

ボブ・ディランノーベル文学賞に選ばれたことで、数々の特別番組が放映されました。ディラン先生のファンとしてはうれしい限り。

中でもおもしろかったのが、NHKのBSプレミアム「BOB DYLAN Master Of Change〜ディランは変わる〜」。
1994年の奈良東大寺のライブを見逃していたので、この番組で見ることができて大感激でした。オーケストラにをバックに「はげしい雨が降る」を歌うディラン先生。
この曲は、ノーベル賞授賞式でもパティ・スミスが歌い上げました。

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「はげしい雨が降る」は、私に言葉の持つ力を教えてくれた曲です。無味乾燥な教科書の英語に飽き飽きしていた時、たたみかけてくる歌詞に圧倒され、英語をもっと学びたいと思ったものです。

番組タイトルの「ディランは変わる」も私にとっては深い意味を持つものです。
易経の英訳のタイトルは"Books of Change"、「変化の書」です。

フォークからカントリー、ロック、あやしげな宗教音楽、そしてアメリカン・スタンダードへと変化を続けるディラン先生。裏切りと感じるファンも多いのですが、ディラン先生の変化を止めることはできません。

易には八卦×八卦で六十四の卦があるのですが、1番から64番までの並び方も実に興味深いものがあります。
たとえば、沢山咸(たくざんかん)の次は雷風恒(らいふうこう)。
八卦人物に置き換えると、沢は少女、山は少年です。そして沢山咸の咸は感覚、感情の感。一目見た瞬間に恋に落ちるような若い男女の恋です。
そんな二人がゴールインして何十年も連れ添ってきた夫婦へ。少年はおじさん(雷)となり、少女はおばさん(風)になり、雷風恒となります。
易経の序卦伝には、夫婦の道は末永く続くものでなければないから、沢山咸の次は雷風恒と解説されています。
しかし、雷風恒の次は天山遯(てんざんとん)。遯は遁走の遁で退くという意味です。「物事は久しく同じところにとどまることはできないから、雷風恒の次は天山遯。

こんなふうに前の卦からの次の卦へと、すべてストーリー展開があります。そして六十四卦の最後の火水未済(かすいびせい)。未完ですから、再び一番目の乾為天(けんいてん)へと戻っていきます。

吉は凶となり、凶は吉となる。
じゃあ、易なんか立てても、どっちかわからないじゃないかと思ったものですが、とりあえず今の状態がどうなのかを探るヒントになります。そして、状況は必ず変わる。そんな風に人生を俯瞰して眺めるためにも易は役に立ちます。

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立春高知は、春の陽気に満ちていました。まさに南国土佐です。

2017-02-12

「たっすいがは、いかん!」

高知旅行から帰ってきて一週間がたちました。

それにしても、JALの「どこかにマイル」は、ありがたくて楽しいシステムです。
6000マイルで、4つの候補地のどこかの往復航空券と交換できます。羽田伊丹の往復には通常で12000マイルが必要ですから、かなりの大盤振る舞い。航空会社としては、席が埋まらず空気を運ぶぐらいなら、特典マイルの客を乗せたほうがいいという考えなんでしょう。

高知以外の候補地は九州だったので、九州で温泉に入るのもいいと思ったのですが、高知に決まったら決まったで、ものすごく楽しみになりました。

高知は高校時代に友人と二人で旅行して以来、30年ぶり。高校時代の旅行も楽しかったけれど、高知最大の魅力を味わっていませんでした。
高知は酒飲みの天国です。いくら私が酒飲みでも、高校時代は飲んでいませんでしたから。

高知のあちこちで目にする言葉。「たっすいがは、いかん!」
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キリンビール高知でのキャッチコピーです。
土佐弁で「弱い、薄い、手ごたえがないのはダメだ」という意味。{薄い酒をちびちび飲まず、強い酒をガーっと飲め!」、「中途半端にせず、とことんやれ!」ということなんでしょう。

阪神タイガース藤川球児メジャーリーグ自由契約になり、故郷の四国アイランドリーグへ移籍表明した際にも口にした言葉です。古巣のタイガースに戻ってこないのは残念でしたが、彼なりに筋を通したのでしょう。

そこそこ長く生きてきて、おだやかで静かな生活を送るべきなんじゃないかと思うことが多いのですが、高知で再びエネルギーが注入されました。人相と易の達人、天道春樹先生のアドバイスもいただけたし。
自分の手に余る仕事を引き受けて、後悔することが多かったのですが、弱気になるたびに、「たっすいがはいかん!」と前進あるのみという勇ましい気持ちになりました。この言葉に出会えただけでも、高知に来た甲斐がありました。

2017-02-09

どこまでが仕事でどこから趣味?

仕事は仕事、趣味は趣味ときっちりラインを引く人もいれば、仕事と趣味が混然一体となっている人もいます。

学生時代だったら、勉強と趣味に置き換えられます。
たとえば、英語。
大学受験で英語は最も重要な科目だから、英語は趣味ではなく勉強のはずですが、試験に出る単語を暗記するより、ボブ・ディランの歌詞を読むほうが私にとっては大切でした。

村上春樹は高校時代から英語の小説を原文で読んでいたけれど、英語の成績はぱっとしなかたそうです。村上春樹より英語の成績のがいい生徒はいっぱいいたけれど、彼らは英語の本を一冊読み通すようなことはまずできない。そこで出した結論が、日本の高校における英語の授業は、生徒が生きた実際的な英語を身につけることを目的にしていないということ。

じゃあいったい何を目的としているのか? 大学受験の英語テストで高い点数を取ること、それをほとんど唯一の目的としているのです。英語で本が読めたり、外国人と日常会話ができたりなんてことは、少なくとも僕の通った公立校の英語の先生にとっては、些末なことでしかありません(「余計なこと」とまで言いませんが)。

今は高校の英語教育も変わっているのかもしれませんが、私の時代も村上春樹と似たようなものでした。
ディラン先生を通して学んだ英語は、海外を旅したり、外国人と親しくなるのに大いに役立ちましたし、細々とした翻訳の仕事も続けています。

20代の頃はゲームにハマりました。ドラゴンクエストトルネコの大冒険。仕事に穴を開けるまではいきませんでしたが、夢中になって時間を忘れ、気がついたら夜が白々と明けていたということも。

現在、日本語教師として外国人の日本オタクに教えているのですが、ゲームにハマった体験は大いに役立っています。外国人学生はRPGはドラクエよりもファイナルファンタジーを好むのですが、ゲームの話題を出すことで学生は「この教師はゲームが好きだ、自分と同類だ」という感覚を抱きます。
学生が教師に一体感を持てば、授業は一気にスムーズに展開します。

時間の無駄だと自己嫌悪に陥ったこともあるけれど、ゲームにハマっていたことが仕事に役立ちました。いや、日本語教師自体が仕事じゃなくて趣味のようなものだから、同じことです。


来日したフィンランド人によく質問されます。
「日本人は仕事が忙しすぎて過労死するというけれど、無駄な仕事が多いのでは? 単なる案内や呼び込みは機械に置き換えられるのに、どうして人間がやっているの? 日本の技術力があれば、不可能じゃないでしょ?」
フィンランド人は労働時間を短縮して長い休暇を取るため、徹底的な省力化を進めています。
たとえば、ネットで予約した番号を入力してチェックインし、自動的にクレジットカードで精算するホテル。フロントは無人です。

そうした省力化で得た長期休暇に何をするか?
フィンランド人なら、湖のほとりの別荘でのんびり過ごすのでしょうが、私には無理。何日も続くと退屈して、何かを始めたくなります。
それが仕事なのか趣味なのか、たぶん両方にまたがったことなんでしょう。

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フィンランドのサウナでは、ヴィヒタ(白樺の枝)で体をたたきます。

2017-02-05

高知運試し旅

JALの「どこかにマイル」で高知に行って来ました。
https://www.jal.co.jp/jmb/dokokani/index.html

「どこかにマイル」は、旅好きにはものすごくありがたいサービスです。
国内線の往復航空券が6000マイルで交換できるのですが、行き先の空港は、申し込み時に提示される4つの候補地からランダムで決まります。
わざわざ旅行で暗剣殺五黄殺には行きたくないのですが、候補地の組合せは選び直せるので、「ここは行きたくない」という目的地をはずした選択地で申し込むことができます。

何度かトライして、「ここなら行ってみたい」という候補地4つから決まったのが高知
高知といえば、人相の大家、天道春樹先生がいらっしゃいます。
これはそろそろ天道先生にお会いすべきタイミングなのでしょう。
去年から始めた日本語教師の仕事は迷いだらけだったのですが、天道先生によると、このまま進んでいいとのこと。

高知の海の幸を堪能し、ずっと行きたかった室戸岬にも足を伸ばすことに。
JR高知駅のホームに上がると、阪神タイガース電車が!

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一瞬、幻覚ではないかと思ったのですが、室戸岬の途上にある安芸タイガースキャンプ地です。2月1日から一軍は沖縄ですが二軍は安芸キャンプを続けています。
室戸岬からの帰り道の安芸に寄ってみました。わざわざ二軍のキャンプを見に来るのはディープなタイガースファンだけ。
かつて活躍した選手や入団したばかりの選手が一軍入りを目指して練習中。今年のペナントレースはどう転ぶかわかりませんが、試合を見るのがますます楽しみになりました。

「どこかにマイル」で運任せの旅。
アン・タイラーの小説『偶然の旅行者』を思い出しました。旅先は偶然決まるように見えて、そこに行くのは必然であるような気がします。

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