ミューはドナドナになって

 しばらく前に、珍車であり愛車であるいすゞ・MU(ミュー)が買い替え時期、という話を書いたと思う。このMUというクルマは、カーフェリーで自動車と共に渡れるらしい樺太行きを真面目に考えていた時に買った。北海道と面積はほぼ同じながら人口は7分の1という、スカスカな樺太ならば、道では無くて、原野を走れるだろう、という目論見である。調子に乗って原野に分け入ると、お決まりのパターンでは、クリークや沼地にはまるもんだが、6年落ち50万円の自動車なら、サイアク諦めも付くかとも思っていた。
MU goes off the beaten track
[NIKON D700/ AiAF Nikkor 24-85mm F2.8-4D/ 40mm F4.0]

  • 樺太の代わりに、一応日本のOff the beaten trackを行ってみる。

 それで、結局買ってからの2年ちょっと、樺太には行かなかったが、雪道に林道にそれなりに活躍してくれた。いすゞは商用車が強いから、乗り心地は正直1tトラック同様だったが、雪道とかはスタッドレス無くとも抜群の安定性だった。あと、4駆のクロカンなのに、なぜか幌が付いてオープンになる、オープントップであることが特徴の一つだったが、この幌は、使い勝手が余りに悪すぎて、開けたのは一度きり、というのは残念である。この無念さは、噂のムラーノ・コンバーティブルをいつか手に入れて、晴らすこととであろう。

  • ムラーノ・コンバーチブルのスクープ写真。ピラーがリアルだ。

 オフロードに行くのが本職のSUV、クロカンなのだから、街乗り主体のクーペより、オープンにしたい様な場所に行く機会は多い筈である。なのに、これまではMUか、もっとスパルタンにJEEPやゲレンデワーゲンしか選択肢が無かったのは不思議だ。意外とムラーノのオープンも絵になっているので、不況下、売れるのは実用的なハイブリッドや軽ばっかりの中、すごく遊び満載なモデルになってしまうが、これは是非発売してもらいたいものだ。
MU and mountain cherry
[NIKON D700/ AiAF Nikkor 24-85mm F2.8-4D/ 42mm F4.5]

  • 寒さをついて咲く木の花。構図にカーブミラーが入ってしまったのに、現像時に気が付いてがっくり。油断すると、頭にシャンデリア刺さった絵になったりしますなぁ。

 多少話がずれたが、3月になって寒さも和らいだので、MUのラストドライブと言う事で、房総に行った。房総半島ってのは近いけれど、分け入ると意外に山深いものである。阿武隈に似た、稜線の穏やかな山が連なっている。植生は、東日本の山にしては暖地性で、四国の山を思わせる。また、大山千枚田という、ライステラスも鴨川まで行くとあったりして、「どうせ十枚田とか百枚田だろ」と思って寄ってみたが、結構本格的な風景で、なかなか面白かった。房総半島の先っちょは、旧国名安房と言うが、これは四国徳島の阿波の人々が黒潮に乗って熊野灘を渡り、房総に移り住んだから、2つの国の音が共通している、という説がある。また、地名は、通常京都に近い方が「上」と名付けられるが、房総は半島の先が上総で、陸路では京都に近い半島の付け根が下総である。これも、紀伊水道から房総半島までの海の道が有ったことを示しているとのことである。阿波も海には面しているが剣山を擁する山深い土地で、そこの民が海の技術を得て、500kmの余を漕ぎ渡って安房に上陸し、また山に登って、千枚田を開いたとすると、これはなかなか壮大な話である。
MU and rice terrace
[NIKON D700/ AiAF Nikkor 24-85mm F2.8-4D/ 60mm F8.0]

  • 確か北面した谷に千枚田が広がっていた。

 MUは、ゴルフに一緒に行くと独伊枢軸国製車の展示場と化すPE及び投資銀行業界の中で、平然と長く乗る積もりだったのだが、コンプレッサー交換やら車検やら、ミッション不調やらで50万円のクルマに30万、下手すると50万の維持費用という現実に買い替えを迫られたのだった。雪道行くので、4駆は必須だと思っていたけど、コンセプトの秀逸さとデザインの素晴らしさにルノーアヴァンタイムなら、4駆で無くてもいいか、と考えていたのは、前にもBlogに書いた通りである。しかし、アヴァンタイムは合計しても200台ちょっとしか売れなかった珍車だから、とにかくタマが無い。しかも、3年落ち・1万キロ台とか、程度が良いと、新車500万円に対して400万円台とか、全然値落ちしてなかったりする。一時期のフォルクスワーゲン・デリバリーバンみたいに、根強いマニアが居たのかもしれない。5年・5万キロ位走っていると予算内になってくるが、探したときは関東圏に該当は一台だけだった。しかも、このタマは、イソイソと見に行こうとして、電話した時には売れている始末である。同価格帯のアヴァンタイムは、他には名古屋とか広島とかにしか無い。5万キロのルノーを、現車確認無しでDoneするのは躊躇する。
 そんな訳で、アヴァンタイムは買おうにも、物理的にタマが無くて、車検的に時間切れとなった。前もスバル・アルシオーネSVXのいいタマが無くて、MUにした気がする。アルシオーネSVXやアヴァンタイムみたいな、キレキレのコンセプトのクルマには縁が無いのかもしれない。というか、こういう僕の様な粘着マニアが付いている珍車は、時間を掛けて探し、タマの出所を捉えて買わないといけないのだろう。さて、代わりに何を手に入れたのかは次回に書こうと思う。
Audi start

  • むっ。