CGAP「インクルーシブファイナンスとシャドーバンキング」

CGAPの短いBriefをご紹介いたします。



Inclusive Finance and Shadow Banking: Worlds Apart or Worlds Converging?
(PDFファイル)


シャドーバンキングとは、「通常の銀行システムの外部で機能する幅広い実体や活動」(p. 1)であり、従来の銀行システムの影として、新しい形態の金融であるインクルーシブファイナンスが位置づけられる領域です。

規制を受けないノンバンクによる「銀行に類似した」信用仲介(credit intermediation)にどのようなリスクがあり、金融システム全体にどのような影響を及ぼすかが問題とされております。


FSB(Financial Stability Board)によれば、シャドーバンキングにおける信用仲介が金融セクター全体を不安定化する(destabilize)可能性があるのは以下の点です(pp.1-2)。

  • (短期負債の発行による長期資産の購入といった)マチュリティ転換
  • (現預金によるローンの購入といった)流動性転換
  • レバレッジの促進
  • 規制裁定(regulatory arbitrage)

これらの点を踏まえ、マイクロクレジットとデジタル金融サービスからなるインクルーシブファイナンスがもたらしうるシステムの不安定化が、概念的なレベルで論じられております。


インクルーシブファイナンスが有する潜在的なリスクを評価するとき、重要なのは次のふたつです(p. 3)。

  • 自らを取付けの対象とする性質を持つ集合的な投資ヴィークルとして機能する、BoP層に対する金融機関
  • 短期の資金調達に依存したBoP層に対する貸付機関

たとえば中国におけるP2Pオンライン貸付プラットフォームは、これらの特性を兼ね備え、すでに大きな規模に達しているといいます。


経済学に特段の知見があるわけでもなく、金融当局の役職員でもありませんが、従来の銀行システムと対比されるインクルーシブファイナンスの台頭と、それに対する適切な規制強化には非常に興味があります。