”いのちの物語”『祝福(いのり)の海』と屋久島憲章


◎5日、前日に予約を入れて十三のシアターセブンに夫とともに出かけました。5階でエレベーターを降りるとすぐ受付。10,11番のチケットをもらって時間まで。10日まで「この世界の片隅で」をやっているようです。30人ほどが入って開演。映画の内容からすると、どうも「ガイアシンフォニー地球交響曲」を見たときにカンパしたのかな〜と。タイトル通り、いのちの物語、「母なる地球とすべての命との繋がりつながりをを取り戻すためにー3・11以降の生き方のヒントがここにある」という映画でした。
2時間近くのゆったりとした時を紡ぐ映画の後に監督さんのトーク。この映画を関東方面で上映するのに尽力したという女性が質問して監督さんが答えて進めました。夫はメッセージ性の強い映画なのかと思っていたら、そうではなくてよかったと。映画は、東条監督の語りで、東条さんが体験したことだけで出来ていました。タイトルは祝(いわい)島の「祝」と福島の「福」で『祝福』と書いて『いのり』と読ませています。
・東条さんは、祝島の前に、山口県の油谷島の百姓庵という、元商社で食品を扱っていて脱サラで農業、塩づくりをしている人のところで過ごしていました。東条さんの出身は映画館のある十三の近く、そして高校は十三の近くの北野高校。北海道大学を卒業後、世界の貧困を見るためにアジアから旅に出て、途中、アフガニスタンで病気になってペシャワール会のお世話になって帰国、その後またアフリカに行き直したそうですが、世界の貧困地帯を歩いて、貧しいと思った国の子供たちの瞳の輝きに驚いたり・・・

・映画の出だしは出産場面からです。91歳の現役のお産婆さん(今は93歳)が話します。「いのちの始まりは点でした。それが38億から43億年ほどかけて人間にまでたどり着いた。赤ちゃんはおなかの中で38週から40週かけて太古の歩みを繰り返してこの世に生まれ出てきます」。
・いのちの出発は羊水というおなかの海の中。塩づくりの彼は話します「食品の塩は100%、NaClそのものだと。ところが、昔ながらの製法で作る塩には80%のNaClとあと20%のミネラルを含んでいる。海の成分そのものが天然の塩であり、それが命である生命体を生んだ。人間はお母さんのおなかの海の中で生まれて育つ。」日本では昔ながらの塩の製法は1972年の第4次専売制で禁じられ、1997年に専売制度が廃止されたことで再び作ることができるようになったのだそうです。(塩の専売制度は1905年に始まり日露戦争の戦費調達に役立ったとか)(←帰りに百姓庵の塩を買いました)
地球交響曲で繰り返し語られる、生命の循環の話です。土と水と光で育つ植物、動物、それを食べて生きている人間。東条さんは、みんなが平和で暮らせる世界は…と考え続けて旅をつづけます。おなじ山口県の瀬戸内海の祝島では、10億8000万円を断って島の人たちが「海は売れない」と中国電力の上関原発建設計画に反対しています。ここでも守りたい暮らしの営みが続けられていました。そして2011年の3月11日、あの大震災と津波原発事故です。福島でも、そうやって自然とともに暮らしてきて、これからもそうやって生きたいという家族と、子供たちを福井県に避難させて福島のお寺へ単身で800キロの道を通う僧侶を取り上げます。

・監督の東条さんは33歳、結婚もして和歌山の暮らしよりもっと自然な場所を探して、屋久島へ行こうかと考えています。映画はこれが最後、もっと暮らしを通して思いを実現する方向へ進みたいという。屋久島が気に入ったのは『屋久島憲章』に書かれていることだそうです。一部を諳んじて、こんなことを謳い上げてるなんて、なんていいところなんだと嬉しそうでした。気になったのでネットで探してみました。屋久島は1993年我が国で最初の世界自然遺産登録されました。
◎息子たちよりもう一世代下の若者の生き方、暮らし方の自信に満ちた様子に何と言ったらいいのか、幸せというか安心というか、感心したというか…もう、今のシステムではない新しい、古くて新しい考え方で子供たちを育てている人たちがいると思うと、政治の遅れというか、トランプさんや北朝鮮や安倍さんのやっていることのバカバカしさが際立ってきます。だからと言って政治を馬鹿にしてはいけないですし、こういう生き方にもっとたくさんの人が触れることができればと思います。

・質問で、9条の会をやっているという人が、反原発の運動の中で、過激派が関わっているからと他の組織から言われた、そういうのをどう思いますかというような質問をされました。質問が、何のことなのか、よくわからなかったのですが、東条さんは、「沖縄でも、金をもらってやっているとか、外国から来ている人がやっているとか、言われますが、結局、そこへ行って自分の目で見たことを信じることが一番良いと思います」と答えていました。
それでは、屋久島憲章です:


   屋久島憲章



平成19年10月1日
決議第1号前文
 


地球と人類の宝物である屋久島。 

 
この島は、周囲132km、面積503㎢の日本で5番目に大きい島である。


屋久杉を象徴とする森厳な大自然に抱かれ、
神々に頭をたれ、
流れに身を浄め
大海の恵みに日々を委ねて人々が生きた島。

 

この島は、
はるかな昔から人々の魂を揺さぶりつづけ、
近世森林の保全と活用で
人々が苦しみ葛藤した島である。


そして今、物質文明の荒波を
ようように免れた屋久島は、
その存在そのものが
人間に対する啓示であり、
地球的テーマそのものである。

 
この島に住む私たちは、
この屋久島の価値と役割を正しくとらえ、
自らの信念と生きざまによって、
この島の自然と歴史に立脚した確かな歩を始める。


そのため、この島の自然と環境を
私たちの基本的資産として、
この資産の価値を高めながら、
うまく活用して
生活の総合的な活動の範囲を拡大し、
水準を引き上げていくことを原則としたい。

 
この原則は、
行政機関はもちろん、
屋久島に係わる全ての人々が
守るべき原則でありたい。
 

国の自然遺産への登録も、
鹿児島県の環境文化村構想も、
この原則を尊重し、理想へ向けて、
その水準を高く100年の計を誤らず推進されることを願うものであり、
これを契機として、次のことを目標とし、
ここに屋久島憲章を定めます。



  条 文 


1  
わたくしたちは、島づくりの指標として、
いつでもどこでもおいしい水が飲め、
人々が感動を得られるよう な、
水環境の保全と創造につとめ、
そのことによって屋久島の価値を問いつづけます。 



2  
わたくしたちは、自然とのかかわりかたを
身につけた子供たちが、
夢と希望を抱き世界の子供たちにとって
憧れであるような豊かな地域社会をつくります。 


3  
わたくしたちは、歴史と伝統を大切にし、
自然資源と環境の恵みを活かし、
その価値を損なうことのない、
永続できる島づくりを進めます。 


4  
わたくしたちは、自然と人間が共生する
豊かで個性的な情報を提供し、
全世界の人々と交流を深めます。  


以上、決議する。

手塚治虫の漫画の写真は、阪急十三駅の地下通路の壁画。手塚治虫さんは、小中学校は池田師範附属小学校(現在の大阪教育大学附属池田小学校)、大阪府立の北野中学(現在の府立北野高校)の出身ですので、通学には池田や十三へ阪急電車を利用していたのですね。